重山神社 和歌山県東牟婁郡串本町伊串 旧・村社
現在の祭神 多岐津姫命・多岐理姫命・市杵島姫命
本地 阿弥陀如来・薬師如来・観世音菩薩

「紀伊続風土記」巻之七十七(牟婁郡第九)

三前郷 古田村

○重山権現社
 一社三扉 配神滝姫神社・熊野三所権現
 本国神名帳牟婁郡地祇従四位上瀧姫神
村の西にあり 麓より登り二十町許に社あり 古田古座西向ノ川伊串の五箇村の産土神にして此辺の大社なり 古き棟札に弘仁元年鹿生鎮守重畳飛瀧大権現密宗空海記之と書せり 此棟札古き偽物と見ゆ 土人は熊野三所権現を祀るといふ 按するに此神は神名帳に載する従四位上滝瀧ノ神なるへし 今重山の西南に姫川あり 姫川村及姫村あり 皆瀧姫の名を取りて名附るならむ 是瀧姫神の証となすへし 牟婁郡中に飛瀧神あり瀧姫神あり 棟札を偽造するもの瀧の名の同きにより遂に瀧姫神を飛瀧神とし(或は飛瀧神と瀧姫とが一神なるも知るへからす)飛瀧神は那智瀧を祀るの名とするを以て飛瀧を那智とし本宮新宮を加へて熊野三所権現とするとおもはる 今本地仏弥陀薬師観音三躰を安置し山上に道心者の住する小庵あり 神王寺といふ かく浮屠氏真を乱るを以て古の事詳ならされとも、瀧姫神を本社として熊野三所権現を合殿に祀るとする 其理を得るとすへし(詳に神社考定部に出たり)