高越山高越寺 徳島県吉野川市山川町木綿麻山 真言宗大覚寺派寺院
現在の本尊 高越大権現(蔵王権現)
本地 千手観音

「阿波国摩尼珠山高越寺私記」

夫れ仏菩薩は、万嶽に迹を垂て国家を鎮押し、千里に光を和げて黎元を利済す。 其の浮図索多、意楽異に性欲別なるに依て、或は明神と化り或は権現と顕る。 本迹二躬の化業の、大悲の水の浸す所なるは、蓋し此の由を以て也。 茲に阿波の国麻植郡の内摩尼珠山高越寺は、天智天皇の御宇、役ノ行者の開基なり。 山に能く住む霊神は大和の国の吉野蔵王権現と一体分身にして、本地の別体は千手千眼大悲観世音菩薩なり。
[中略]
役ノ行者は行力に勇猛の達人、神通自在の権化なり。 故に権現の奇瑞を感じ、此の峯に攀ぢ上て、地を択び壇を造り柴燈す。 阿祗儞行者、衆生済度の志有りて廻国し、国毎に阿祗儞の峰を開く。 其の数六十六箇所なり。 之を名て一国一峯と謂ひ、摩尼珠山は其の一に配ると云々。
[中略]
一 山上の伽藍、権現宮一宇并拝殿、是れは本社也。 若一王子ノ宮一宇、并三十八社ノ宮一宇、伊勢太神宮一宇、愛宕大権現宮一宇、是は末社也。 本堂一宇、本尊千手観音なり。 弘法大師の御影堂一宇、并鐘楼堂一宇、右は山上の伽藍なり。 山上より七町下に屣石堂一宇、本尊不動明王なり。 山上より十八町下に地蔵権現宮一宇、并拝殿一宇、此処は中ノ江と曰ふ(殺生禁断、并下馬所)。 山上より五十町麓に虚空蔵権現ノ宮一宇、此処は一ノ江と号す。 鳥居二箇所、一ノ鳥居は一ノ江にこれ有り。 二ノ鳥居は山上より一町下に有り。 山上山下の神社仏閣此の如し。