松尾神社 石川県羽咋郡志賀町町居 旧・村社
現在の祭神 大山咋命・玉依比売命
本地 薬師如来

川勝政太郎「続・能登文化財紀行(5)―富来町・七尾市―」[LINK]

富来町の東端、町居の松尾寺に着いた。
農村風景の中にある真言宗高野末の落着いた寺で、若い安田信弘住職に迎えられ、書院に通されて休憩の後、本堂でいろいろ拝見する。 本尊の阿弥陀立像は高さ三尺三寸三分、寄木造、藤原末の温雅な像である。 懸仏三面あり、いずれも普通の形式の円形木板の表面に銅板を張るものである。 径七尺の完全に近いものは天蓋下に台座、光背を備える薬師坐像を安置し、左右に蓮花を挿す芯瓶を据える。 裏面には、薬師の種子「バイ」を現わし、「松尾大明神本地薬師如来、村松法印権大僧都快尊、永禄二年己未八月廿九日敬白」と墨書する。 径一尺二寸四分のは欠失部分もあるが、薬師像も花瓶も環付けの獅喰もこれよりは優秀で、室町中期のもの。 径六寸二分五厘のはすべて萎縮した粗作で桃山時代に降るであろう。 これらは寺に隣る松尾神社の旧御正躰で、神仏混交時の遺物である。