太平山神社	栃木県栃木市平井町	式内論社（下野国都賀郡 大神社） 旧・県社

現在の祭神	瓊瓊伎命・天照皇大神・豊受姫大神

本地	太平大権現 虚空蔵菩薩 熊野大権現 大日如来 日光大権現 千手観音

「太平山伝記」

抑当社権現者人王五十三代淳和天皇御宇天長丁未年九月二十二日、 慈覚大師天台沙門釈円仁始テ此山麓ニ来リ、 遥ニ見テ念テ云ク、此山必ス霊場ナラン、 已ニ山腹ニ攀チ上リ見レハ、傍ラニ長松ノ異木有リ、 仁樹下ニ到リ、暫ク禅那ニ入ル、 忽爾トシテ松風耳ヲ驚シ、音楽心ニ徹シ、 紫雲樹上ニ覆ヒ、字句空中ニ現ス、 所謂霊山一会、儼愁未散、天安囉々、地平哩々、 北斗七星、如石、 影響ムレハ頃刻ニシテ而異人ヲ見ル、衣冠壮麗、容儀端厳也、 之ニ告テ曰、吾レハ是治国利民降臨ノ神也、 往古以来、王城辺ニ迹ヲ垂レ帝都ヲ守護シ、国ヲ安シ民ヲ利ス、 所以有ル、故ニ今ニ顕レ此山ニ坐ス、 師新タニ神廟ヲ営セハ、吾レ六十余ノ随神数万ノ眷属有リ、 宜ク方五里ヲ以テ結界スベシ、言イ已テ隠ル、 其時ニ仁念シテ曰、冀クハ我本地之真身ヲ瞻礼セン、 時ニ山中、忽金色ノ光ヲ放テ、 虚空蔵菩薩妙相荘厳光彩赫々トシテ、松樹ノ上ニ現シ玉フ、
［中略］

御本地虚空蔵（当時安置御像由来之事）

慈覚大師社壇御草創之砌、当社御本地之真身、 虚空蔵大士ノ御像ヲ彫刻セント思召タマヒシ、 其ノ夜松樹影向之、虚空蔵菩薩夢中ニ来現シ告ケ玉ハク、 吾ガ本身今ニ山洲山崎ニアリ、汝迎ヒテ此ノ山ニ移スベシ、 大師夢サメ大ニ感悦シ疾ク山洲山崎ニイタリ、其ノ由来ヲ尋ネ玉フ、 一人老翁語テ曰ク、 昔シ聖徳太子百済国ノ仏工ヲ指南トシ、自ラ虚空蔵観音両尊像ヲ彫刻シ、 朝暮敬礼ナリシ、其ノ後此ノ寺ノ本尊トナル、 我レハ是伽藍神ナリト云テ不見、 依テ大師又タ此ノ由ヲ淳和帝ヘ奏、勅ヲ請ケ疾ク当山ニ移シ玉フ、 爾レ自リ又タ霊応益盛ンナリ、
［中略］

古法太平三所

御本地虚空蔵
　太平大権現御神躰　天孫太神 明星
　　御相殿二神
御本地大日
　熊野大権現御神躰　伊弉冊尊 日輪
　　御相殿二神
御本地千手
　日光大権現御神躰　大己貴尊 月輪
　　御相殿二神
　右天正十四年（丙戌）ヨリ御同殿也、
　奥院富士権現御神躰　木花開耶命也