大杉神社 茨城県稲敷市阿波 旧・郷社
現在の祭神 倭大物主櫛甕玉命
[配祀] 大己貴命・少彦名命
本地 不動明王

「阿波大杉大明神略縁起」

抑大杉大明神の鎮坐、常陸国河内郡阿波の郷、龍華寺安穏寺は、桓武天皇御宇延暦丙子のとし、快賢阿闍梨創立の古跡なり。 阿闍梨は比叡山伝教大師の御弟子にて、瑜伽三密の秘法を修し給ひて霊に通し給ふ。 其比奥州の逆賊、屡蜂起して人民を悩し、征罰の諸大将を下し給ふ事数度にして、叡慮安からさる事を、阿闍梨窃に歎き給ひて、大師自ら彫刻なし給ふ、四魔降伏の不動明王の尊像を乞請給ひ、則笈に負て東奥に下り、一宇をひらき、験法の力を以て迂誡を諭しなは、聊国家の恩に奉じ奉るの道也とて、遥に常陸の国の旅舎に着き給ひける。 夜夢中に異形の神人顕れ告て曰、汝の志深しといへとも、微力の及ふへきにもあらす。汝か深く念願なせる所は、則素我志す処なり。我は汝か常に懇祷する所の降魔の神也。当国阿波の山中大杉の本に来れ。力を添んとて夢覚ぬ。 阿闍梨奇異の思ひを成して、速に笈を負、阿波の郷にいたりて尋給へは、千年ふる大杉の本に旧きに祠ありて、夢見給へる神人の尊像おはします。 扨社不動尊の化身にておはしけれと、不思儀の霊夢に感涙し、あらんとは思わさりき。 是則昔より降魔の霊神、今宮大杉大明神と崇め奉る神躰にて、神護景雲中、釈の勝道上人の御作也。 誠に神霊の著き事を共に感嘆して、則明神明王を同ことし鎮坐なし奉り、且天竺伝来毘須羯摩の作弥勒菩薩の尊像を安置し奉る。 則宝刹を草創し、公朝に申けれは、山林庄園等下り賜り、龍華山安穏寺と号す。 是国家安穏祝祷するの謂也。