住吉神社 兵庫県加西市北条町北条 式内論社(播磨国賀茂郡 坂合神社)
播磨国三宮
旧・県社
現在の祭神 底筒之男神・中筒之男神・表筒之男神・神功皇后・酒見神
[合祀] 大歳神・八幡神
本地
住吉大明神高貴徳王菩薩
酒見大明神十一面観音

「峯相記」[LINK]

 次に酒見大明神は養老六年壬戌住吉大明神並びに五所の王子、当国に入り坐す。 先は上鴨、西條、鎌倉が峰に顕れ坐す。 従神佐保明神私の意有りて、此の峰宣からざるの由申して、三重、北條に誘引し奉りて鴨坂の北谷、石上に御優息の時、佐保明神御裏を盗みて賀東川の東へ逃れ去り畢んぬ。 追付給はざる王子勘気して遠所に崇め奉る。 爰に山酒人門と田六町を殖る日、俄に槻一本門の内に出生する処に、白髪の老翁並びに貴女若君三人相共にて御宿を借り給う。 是は摂州住吉の辺りよりとの給へり。 事の体只人に非ず仰せに随いて宿を借し奉る。 殖る所の苗一夜を経て槻の木と成る。 林中に御宝殿を造りて、両大明神を崇め奉る。 社の躰本社の風儀をまなべり。 酒人子孫神主たるべしと云々。
 住吉は本地高貴徳王菩薩、酒見は十一面観音云々。

「当国三宮酒見大明神御影向縁起」

右当社大明神者古老の人申し伝へて云く、 昔し養老年中之頃、住吉大明神親子七人当国に入御し給へり、 一人は老翁の形、五人の王子、一人の皇女也、 当国に影向の初め、先づ上鴨西條鎌倉ガ峯に久しく住み給ふ云々、
[中略]
寔今神居本主山の酒人と云へる人之に在り、 折節門田六町殖る日、俄に門田槻木一本出生せり、 何事ならんと不思儀に存ずる処、 白髪の老翁、王子五人、皇女一人、以上七人来り給ひて御宿借り給ふ、 見奉るに是但人に非ず、様有る御事思ひ、 易き御事にて候と申し、宿借り奉る、 亭主問ひ奉りて申す、是何れより御入候ふぞと、 老翁、是摂州住吉辺よりと云々、 扨て酒人の申す様、 一の不思儀現し給へと、即に此の地に勧請し奉ベしと云々、 さて其一夜中に門田六町の苗、皆悉く槻の木の林と成れり、 是驚キ林の中に宮殿を造り老翁と皇女と両神を一殿に勧請し奉ると云々、 仍て神託して云く、 酒人の子孫を神主と為す可し云々、即今に相続する也、
[中略]
凡そ一殿の中に二社親子御座あれども酒見大明神と申すは皇女の御事也、 老翁と申すは御父住吉大明神の御事也、本地は高貴徳王菩薩、 酒見の本地十一面観自在菩薩と云々、
[中略]
今三社の神殿、 西は当国伊和大明神、本地釈迦如来なり、 東は当国荒田大明神、本地阿弥陀如来なり、 中は当三宮酒見大明神、本地十一面観自在尊なりと、云々

「中世諸国一宮制の基礎的研究」

播磨国

Ⅲ 三宮

1 酒見神社(現、住吉神社)。 酒見大明神。 『播磨国神名帳』では「酒見太神」とあり、本所八所明神の1つに数えられる。
5 酒見大明神。 本地仏は十一面観音(峯相記)。
6 酒見寺。 寺名が明記されたものとしては、貞治3年(1364)12月2日の銘をもつ梵鐘に「播州酒見寺」とあるのが初見であるが、『峯相記』に「元久二年(1205)神宮寺供養」とあるのは、神宮寺に関わるものであろう。