高千穂神社 宮崎県西臼杵郡高千穂町三田井 国史現在社(高智保皇神)
旧・村社
現在の祭神 高千穂皇神(天津彦火瓊々杵尊・木花開耶姫命・彦火火出見尊・豊玉姫命・彦波瀲武鸕鷀草葺不合尊・玉依姫命)
十社大明神(三毛入野命・鵜目姫命・太郎命・二郎命・三郎命・畝見命・照野命・大戸命・霊社命・浅良部命)
本地 釈迦如来

「高千穂十社御縁起」

三月廿一日に、日月しゃうしゆく(星宿)ともにあめのゆわと(天の岩戸)よりいて(出で)給いて、ひうか(日向)の国にあることにミやこ(都)をたて、はしめて人王のよ(世)にあらためたり。 かの王の御な(名)をは神む天王(神武天皇)と申ける。 六十八かねん(ヵ年)たもて、ついにもとのりうくう(龍宮)ゑ返給ふ。 これも王子四たり、ひめミや(姫宮)四人ましましけるか、そのころいまた日本ハおもうほとに世もなかりけれハ、八人の人ハ天ちく(天竺)ゑわた(渡)り給いぬ。 日本にハ神む天王(神武天皇)にハ、五人にあたれる王子しゆかし。 天王と申ししかハ、日本をはもり持ち給へり。 そのこ(子)にかいくん天王、その御こ(子)にかいしん天王、この時神めい(明)あらためてたてまつる。 いまのいせ(伊勢)天照大神これ也。 この時、日本をわ(割)られけり。 大河のなかれ三千六百七十三、小河のなかれハ六万三千八百七十四、国のかす(数)ハ三十三国にそわ(割)られける。 事(殊)ニかの国は神めい(明)をもて(以て)むね(旨)とし。 いせ(伊勢)天せう(天照)大神のあらためられ給いてある事ともを、神む天王(神武天皇)の王子たち、これをさとり給ひていさやわれら(我等)もとの国へかへらんとて、四らう(郎)の王子ハミろせん(弥盧山)にそかゑり(帰り)給ふ。 上かいの天人にちぎりをむすび、一人の王子をまうけ給ふ。 うちつゝき王子三人ましましけり。 かの王子をあいそくして、ミろせん(弥盧山)よりてろいせん(鉄圍山)ゑくたり(降り)給ふ。 これにて十八かねん(ヵ年)かあひたましましけるか、しゆミせん(須弥山)にくたて十六年、同しき十七年に神む天王(神武天皇)の御こ(子)三人の王子をは、てろいせん(鉄圍山)の四方てんの王になしたてまつる。 いまの十しや(社)大明神これなり。 本たい(本体)釈迦如来にてまします。
[中略]
いまのしやか(釈迦)は十しや(社)の明神これなり。 これもろもろ(諸々)の衆生りやく(利益)のためなり。 われ明神にあらわれて、三千大世界の衆生のわかあらんところをミんという御願なり。 この願にいわく、南無大慈大悲の釈迦如来我明神とあらわれ給ふ。 諸衆生りやく(利益)八そうしゃうたう(八相成道)をとけ給ふ。 われ十二所あらわるゝ事、まつたい(末代)あくせ(悪世)の衆生を十方浄土にミちひき(導き)給はんかためなり。