豊田白山神社 石川県金沢市三社町 旧・村社
現在の祭神 菊理媛命・応神天皇・武甕槌命
本地 十一面観音

柴野美啓「亀の尾の記」

天台宗 常光寺[LINK]

凡金沢中最第一の旧跡なり。 抑此社は養老二年泰澄大師の開基にして、白山惣社の一なり。 所謂三社は白山妙理大権現十一面観音、向右八幡宮、左春日大明神、共に泰澄の作仏なり。

「加賀諸神社縁起」上

金沢三社白山略縁起

夫当社白山三所権現は、人皇四十四代元正天皇の御世養老二年に、越の大徳神融禅師泰澄和尚、越前国の越智山より白山の高峰を眺望して、彼雪嶺には必す霊神の鎮坐あるへしとて白山の麓に至り、専念持誦して神託を夢に感し、遂に嶺上に登りて白山妙理権現の神体を拝し、左澗の孤峰に登りて別山小白山行事の神体を拝し、右方の大己貴嶽に登りて大己貴神の神体を拝して各神託を蒙りたり、是を白山三所権現と呼へり、 右三所権現を勧請して白山三社の宮と称し、此地の産土神とす、故に此地名をも遂に三社村と呼ひたり、 の地此地悉く金沢の市中と成、人家連担して町名をは三社と唱へ三社町との呼へり、 道俗の貴賤神異の著明に感し、信仰の念を下すの輩拝伏せすといふ事なし、 抑泰澄大師の白山登嶺の神感を委しく尋るに、大師始め越前国越智の峰に住居られしか、遥に白山の嶺上を望み、かの雪嶺には必す神威いちしるき霊神のいますならん、我彼嶺上に攀登りて応顕を祈らんと誓ひけるに、一日夢中に天女瓔珞身をかさり紫雲の内より示現して宣く、汝早く吾霊山に至るへしと、
[中略]
大師即ち白山の絶頂に攀登り、翠りの池の傍に安座して持念時をうつさす、忽九頭の龍神池の水面に出現せり、 大師請求して曰、是必す方便の神容なるへく、願はくは正身の尊容を拝み奉らんと余念なく念しけるに、暫しの間に、十一面観世音光明赫奕として妙相端厳なりき、 大師之を稽首礼拝して申さく、偏へに像末の衆生を利益し給へと、 于時観世音菩薩青蓮のまなしりを廻らし唯許諾し給へり、 然とも白山の嶺上は嶮崖やゝ高く聳へて荊蕀の道路いとさへきり、苦行の行者になくては辄く至りかたし、 況や慎弱虚劣の輩行歩にたへさるもの菩薩の利生を信すといへとも、彼霊峰に攀登りかたし、 故に末代下根の衆生を救済せん為めにと、彼白山嶺上鎮座し給ふ三所権現三社の霊神をは此加賀国石川郡北隅の地に勧請して地名まて三社と称し、諸人の願ひをみたしめ給ふとかや