別雷神社 静岡県静岡市葵区七間町 式内論社(駿河国安倍郡 大歳御祖神社)
旧・郷社
現在の祭神 別雷神・玉依比売命
[配祀] 保食命・大山咋命・火之迦具突智命・大己貴命・少彦名命・猿田彦命
[合祀] 彰徳神
本地 文殊菩薩

「駿河国新風土記」巻之六

正一位稲荷大明神・加茂大明神二座[LINK]

又雷神 両社大明神と称す。
別当 当山修験 龍相山雷電寺。
社は七間町と下石町の境にあり。 此辺の町々の氏神なり。 社中に府内の文庫あり。 すべて府中町々に事ある時は、此所に集会して之を議す。
本地堂 本尊文殊菩薩。
観音堂 本尊楊柳観音。当府三十三社の内十六番の札所なり。
[中略]
【延喜式神名帳】 安倍郡(並小) 大歳御祖神社。
【風土記】横移野の次 大歳御祖神社或雷神、誉田天皇四歳癸巳始祭之。
【三代実録】元慶三年四月十四日授駿河国正六位上岐都宇神火雷神並従五位下。
[中略]
道雄考ふるに、此社【延喜式】【風土記】にも載る所大歳御祖社なりといひ、世には雷神とのみ称し、又稲荷は後に合せ祭りしともいひ、大歳御祖とは雷神をいふ也と。 社の記また【風土記】にも見えて祭れる神の名、いとまぎらはしよりつらつら案ふるに、稲荷大明神と称ふるもの是れ大歳御祖の神なる事明白なり。
[中略]
大歳の御祖といふは其神の母神を申せるなり。 【古事記】に須佐之男大神娶大山津見之神之女名大市比売、生子大年神、次宇迦之御魂神とある神にて、大市比売を申せるなり。 然るを今稲荷大明神といふものは【古事記】の伝に或書を引いて稲荷神社三社は大市比売・宇賀之魂・須佐男命をも合せ祭りて、同じ神に坐すからに且は稲荷大明神と称せしなるべし。 すべて当国の社の【神名帳】に載せたるは何れも地名を以て社号に記されたるに、此の大歳御祖社のみ神名を社号に記したるも由ある事ならむか。 其故は今の社の辺、すべて氏子といふ町々安倍市と称する所にて是れ駿河の府なり。 此市初めて立ちたる時、大市比売神をば祭りしならむ。 【風土記】に誉田天皇四歳癸巳といふは、此市の立ちし初なるべし。
[中略]
又加茂大明神は往古有渡郡加茂村にありき。 今も其旧地に小祠を存して之を祀り、村人は府の雷の社を氏神と称して年毎に詣づといふ。 村の名にさへ負へるを見れば当に然るべし。 【三代実録】にいふ火雷神は郡名を載せざるを以て何所とも知り難けれども、此の国の内にて雷神の名を存せるもの他に見る所なければ、此社をいへるなるべし。