与止日女神社 佐賀県佐賀市大和町川上 式内社(肥前国佐嘉郡 与止日女神社)
肥前国一宮
旧・県社
現在の祭神 与止日女命(または豊玉姫命)
本地 十一面観音

「肥前古跡縁起」

河上大明神

河上与止日女大明神、本地十一面観世音菩薩、神功皇后の御妹也、 蒙古御退治の時、長門の沖にて龍宮に至り給ひ干珠満珠の二つの玉を借承給ひし姫宮也、 欽明天皇の勅願として二十五年甲申御鎮座改めさせ給ふ十二所大明神是也、 若宮八幡、香椎宮、竈門の宮、王子宮、乙の宮、阿蘇宮、童子山王の宮、乙王子の宮、高良大菩薩宮、世永の宮、百世の宮あり、
[中略]
御神殿の東に乙大明神有り本地文殊薩埵の山にして、御身神体は四方二丈計り也、 大石淀姫の乙の御妹にて坐しますとぞ申伝へ侍る
乙文殊宮は佐賀県佐賀市大和町梅野に現存

西田長男「高良大社縁起の基礎的研究(―)」[LINK]

 然らば、縁起に収められている、上の「高良玉垂宮本地垂迹」なる一條は、いつ頃の成立にかかるものなのであろう。 それについては、次の如き高良記、「カヰサウ(改造)ノ次第之事」の一齣が参考になろう。
一、左宮、宇佐八満(マヽ)大菩薩、
一、中宮、玉垂大菩薩、
一、右宮、住吉大明神、
[中略]
一、九州五社之次第、
 阿蘇十二宮、क{ka}本地十一面、
 宝満大菩薩、क{ka}本地十一面、
 天満大自在天神、क{ka}本地十一面、
 志賀大明神、मं{maṃ}本地文殊、
 河上大明神、क{ka}本地十一面
  九州七社ト申ハ、九州五社ニ大善大菩薩・千栗八満(マヽ)大菩薩ヲアイソヱ申、九州七社トハ申ナリ

「中世諸国一宮制の基礎的研究」

肥前国

Ⅰ-1 一宮

1 河上神社。 現在の正式名称は与止日女神社。 一宮の論社は千栗八幡宮。
4 『延喜式神名帳頭註』に引用される『肥前国風土記逸文』には、欽明天皇25年10月1日に与止姫神(豊姫・淀姫とも)が佐嘉郡に鎮座したとある。 『肥前国風土記』には佐嘉川川上に石神があり、世田姫というとしている。 ユタ・ヨタともにヨトの訛りであろう。 佐賀平野を潤す嘉瀬川(佐嘉川)の上流に位置し、農業神としての信仰を集めていたと思われる。
5 祭神は与止日女命。 本地仏は十一面観音。
6 別当寺は河上山神通寺。 多くの文書が伝来した実相院はその12子坊の1つ。