『水澤寺之縁起』は群馬県渋川市伊香保町の五徳山水澤寺の由来を説くものです。
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基本的には『神道集』の「上野国勢多郡鎮守赤城大明神事」と「上野国第三宮伊香保大明神事」に基づいていますが、同寺の開山を高麗国から来朝した慧灌とするため、物語の年代は推古天皇の御宇に設定されています。
『神道集』からの大きな変更点は石童御前・有御前。この二人は『神道集』の「上野国第三宮伊香保大明神事」では伊香保姫の後見である伊香保太夫の娘ですが、『水澤寺之縁起』では高光中将と伊香保御前(伊香保姫)の間に姫御前・有御前・石童御前と三人の娘が生まれたことになっています。
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『神道集』の「上野国第三宮伊香保大明神事」には「北の方(伊香保姫)は伊香保大明神と顕れ」「伊香保大明神とは、男体・女体御在す。男体は伊香保の御湯を守護して、湯前にて御在時は本地は薬師如来なり。女体は里へ下らせ給ふとて、三宮渋河保に立たせ御在す。本地は十一面なり」と書かれています。
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一方、『水澤寺之縁起』には「高光中将并びに北の方(伊香保御前)は伊香保大明神男躰女躰の両神なり」「高光中将殿は男躰伊香保大明神、御本地は薬師如来、別当は医王寺、伊香保御前は女躰伊香保大明神、御本地は十一面観世音、別当は湯泉寺也」と書かれています。
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つまり、『神道集』の「上野国第三宮伊香保大明神事」では伊香保大明神を「男体」「女体」としつつも「男体」に該当する人物に関する言及が無いのですが、『水澤寺之縁起』では「男体」を高光中将に宛てているわけです。
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尾崎喜左雄『上野国の信仰と文化』によると、江戸時代(文化13年)の絵図面では現在の伊香保神社の場所に薬師堂(医王寺持)があり、その前に伊香保神社(湯泉寺持)が鎮座します。薬師堂は温泉自体を神格化した温泉明神で、伊香保神社は「湯の前」に温泉の守護神として勧請されたと解釈されます。
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また、北群馬郡吉岡町大久保の小字宮或は三宮と称する地に三宮神社が鎮座し、この神社には十一面観音像(秘仏)が御神体として安置されているそうです。尾崎喜左雄氏はこの地を『神道集』にある「三宮渋河保」と推定し、三宮神社が伊香保神社の本社(里宮)であると考えました。
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『水澤寺之縁起』が成立した頃には伊香保神社と三宮神社は全く別の神社になっていました。『神道集』の「女体は里へ下らせ給ふとて、三宮渋河保に立たせ御在す」も意味不明になっていて、伊香保明神の男体が薬師堂(医王寺持)、女体が伊香保神社(湯泉寺持)と解釈されたのだろうと思われます。
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