人間風車
売れない童話作家が初めてつかんだチャンス。しかし、そこには卑劣な罠が待ち受けていた。どん底まで叩き落された作家の身に起こる戦慄の出来事とは?
おかしな爆笑童話作家の世界は、いつしか想像を絶する恐怖のファンタジーへと変わっていく・・・・(以上、チラシより)

作家平川の心の動きがそのまま、童話に反映されて物語は進む、出だしののどかな雰囲気が後半は一転。怖さを引き立てる。誰もが経験する、人を恨むとか妬むといったことが、この物語では現実に結びついていくところが怖さであり、その結果に、人間のもつ醜さを痛感させられる。
悪人のように描かれている国尾、小杉の二人も、普段は悪いヤツではなく、平川の世話を焼いたり、お金を貸したりしている。しかし、平川への嫉妬が平川をどん底に落とす行動をおこさせているのだと思う。平川自身も一見、被害者のようではあるが、彼が国生、小杉だけでなく、アキラや子供たちまで恨んだのは逆恨み以外のなにものでもない。物語の人物になりきってしまうサム。サムは、恐ろしい童話の為に殺人鬼-ビル-になってしまう。確かに、ビルは殺人鬼であるが、彼になりきってしまったサムは事故で子供のまま成長を止めた無垢な存在。そして、最後の物語、美しい童話でありながらこれはよくよく考えるとサム・・・・ビルを殺すための童話。この美しい物語の中には間違いなくサムを殺そうとする悪意が潜んでいる。何度も繰り返される悪と善の構図が、この物語を怖く、悲しく感じさせるのだと思う。
最後に、月日がたち平川が子供相手に童話を聞かせているのが救い。

初演時、評判を聞くも観に行かず。観た人の話によると今回の台本とは違って救われない内容だったのこと。客いじりもあったらしいので、行かなかったことが今更ながら悔やまれる。