研究ノート
重力発現モデル
2026.3.10 改訂
2025.7.3
五十川晋一
目的

 アインシュタインは1916年に一般相対性理論を発表した。
これは従来のニュートン力学は線形力学であり、二つの物質の質量差が相対的に巨大な場合、線形ではなく非線形を示し、微細な誤差を伴うという主旨である。
彼の方法論は物理学ではなく数学の力を借りたもので、当時の物理学者でも理解し難いものであった。
後に物理学者達はもう少しわかり易い表現にすべく、次のような説明を試みている。

・質量を持った物体が存在すれば周囲の空間が歪む。
・より小さい質量の物体が近傍にあれば、歪んだ空間に沿って重い方の物体めがけて転がってゆく。
・これが重力の姿である。

ニュートンの重力=万有引力の公式を以下に示す。

F = Gg・(m1・m2) / L2  F:万有引力 m1、m2:物体の質量 L:2物体の重心間距離 Gg:万有引力定数

 この式は力と質量、距離との関係を示しているが、力自体の発生メカニズムは不問にしている。
また、ニュートンが前提とする重心とは数学的に長さを持たない点であるのに対し、L:距離を分母に置いている点で矛盾が存在する。
この為、2物体間の距離がゼロでは重力は無限大になるという、数学的性質を抱えている。
しかしながら、現実世界では2つの物体が接触してもそこには無限大の力が働いている事は観測する事が出来ない。
アインシュタインの頭の中にはこうした疑問があったと思われるが、彼は時間と空間の座標を入れ替えるという数学の手法を借りて疑問の解消を目指した。
本報では、重力が発現するメカニズムを物理機能モデル手法によってモデル化する。
なお、物理機能モデル手法の詳細は補足資料に示した。

もくじ

●柔らかい物質について
●重力発現モデル
●自由振動について
 ・自由振動とは
 ・重力の扱い
 ・温度の扱い
 ・物質に蓄えられるエネルギ
●空間の考え方
 ・実体のある空間と無い空間
 ・実体の無い空間のモデル化
 ・熱エネルギを蓄えている空間
 ・実体の無い空間が物体に及ぼす力
 ・内包量外延量について
 ・エネルギを表に出す
●机上実験
 ・パラメータ
 ・試験条件
 ・結果
●考察
 ・微小な万有引力と桁落ち
 ・重力波の様相
 ・量子力学との関係
 ・ニュートンとフックの功績
●まとめ
●参考文献

柔らかい物質について

 Fig.1参照
物質は点ではなく、長さ(空間)を持つ。
密度は均一ではなく、質点(重心)は物質内を移動する。
力fは質点に作用する=ニュートンの運動の法則
復元力fiは相対速度vrによって生じる=フックの変形の法則
物質は変形=伸縮しながら運動する。
これは物体全体が運動するか否かに関わらず、物体内部で質点が運動していると言う事である。
柔らかさ=柔性とは剛性の逆数であり、相対的なものである。
物質の質量に対して相対的な柔らかさという意味である。
こうした見方をする時、物質は粒子と波動の性質を併せ持つ。
[1]


Fig.1

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重力発現モデル

 Fig.2は物理機能モデルの基本モデルを用いて2つの物体モデルの間に空間に相当するモデルを配置したものである。
空間モデルは両物体モデルと同一であり、見かけ上3連モデルの構成としてある。
但し、両物体モデルと空間モデルは相互に結線されておらず、空間モデルから出力された力のみ両物体モデルに印加する回路構成になっている。
この力が重力となる。
空間モデル内に両脇の物体の質量、柔性、長さ、隣接距離の情報を使って重力を発現する機構モデルを組み込む。(赤枠部)

Fig.2

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自由振動について

●自由振動とは
 工学の分野で使われる用語であるが、一般的には対象物質の片端を固定して他端に速度変動を与えて振動させた状態を意味する。
機械工学の分野では通称バネ・マス系と呼ばれる事があるが、バンジージャンプを思い浮かべると良い。
崖から飛び降りれば綱と人間は上下に振動する。
綱の質量が相対的に人間の質量より極めて小さい場合、綱をバネ、人間をマスに切り分けて扱うのが慣例となっている。
物理機能モデル手法では以下の様に扱う。

・綱の質量がどんなに小さくともマスを持ったバネとして扱う。
・人間も完全剛体の質点とは見なさず、マスを持ったバネとして扱う。

●重力の扱い
 Fig.3参照
地球上では重力が働くので、バネの上端を固定して吊るせばバネの全長は自身と地球の質量、およびお互いの重心間距離に因って決まる長さまで伸びる。
バネの剛性をどこまでも高めて行けば(柔性を減じる)伸び量は小さくなるが決してゼロにはならない。
もしバネの柔性が大きい場合は伸び量は大きく、地面に接触しない高さから吊るす必要がある。
また、バネの重心はバネ両端の中間では無く、図の様に若干下方にズレる事になる。
これは物質内を重心が移動すると言え、柔らかい物質では無視できない現象である。
この重心のズレはバネの長さ方向に密度が不均一になる事を意味する
従って柔らかいバネは物質が粒子の性質と同時に疎密波=波動の性質を持っている事が判りやすい例と言える。
なお、無重力空間でバネの両端を引っ張ってから解放すれば重心は常に両端の中間を維持する。
これは重力が無ければ長さを持つ物体の中心は数学的に定義出来るという事である。
そうした意味で、重力の有無は力学と数学を切り分ける境界条件と言える。

Fig.3

●温度の扱い
 対象物質の振動現象が温度に因って殆ど変化しないと見なせれば良いが、例えばタンパク質のような鎖状の高分子をミクロな視点で観察する場合、温度、すなわち熱エネルギの影響を考慮する必要がある。
これはタンパク質の種類によって液体から固定へ変性する温度が異なるからである。
更に、量子力学が扱うような原子、電子のような物質の最小単位となると、ド・ブロイの物質波も考慮する必要がある。

●物質に蓄えられるエネルギ
 物質全般は絶対零度以上の温度にあるとき、熱エネルギを蓄え、かつ伸縮している。 *1
まず、伸縮している物質の力学的エネルギEは以下のように定義される。

Ev = 1/2 m・v2   Ev:速度(運動)エネルギ、m:質量、v:バネ端部速度               (1.1)
Ef = 1/2 H・f2   Ef:力(変形)エネルギ、H:柔性、f:バネ復元力                 (1.2)
E = Ev + Ef = const. (1.3)

上式は力学の双対性を現し、式(1.3)は対になったエネルギの和は常に一定となる事から、伸縮する物質に限ったエネルギ保存則と呼べる。補足資料1参照

 次に、物質は絶対零度 0(k)=(-273.15℃)以上で熱エネルギEtは以下のように定義される。

Et = m・Cp・T  Et:熱エネルギ、m:質量、Cp:比熱、T:温度                      (1.4)

熱エネルギEtは同じ内包量*2である力エネルギEfに変換出来るので、式(1.2)を変形して等価な力が求められる。

F_E_obj = √(2・Et /(H1 + H2))    F_E_obj:等価力、H1、H2:両物体の各柔性、Et:熱エネルギ                     (1.5)

この力F_E_objを最初にバネに印加しておくことで、物質が熱エネルギを蓄えて振動している事を力学的にバネの伸縮に置き換えて表現する事が出来る。
なお、この力F_E_objは地球上でバネの上端を固定して垂直に吊るした時にバネ重心に作用する重力と等価である。
つまり、F_E_objとはバネの内部に生じる復元力であり、重力と釣り合っていると言う事である。 補足資料2参照

*1:ド・ブロイの物質波と言え、物質全般はバネと見なす事が出来る。
*2:後述する

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空間の考え方

●実体のある空間と無い空間
 冒頭のFig.1で、 "物体は点ではなく、長さ(空間)を持つ" と述べたが、空間とは英語の "space" にしても一般的には何も無い状態というニュアンスがある。
本報では質点の点に対するものとして大きさを持ち、長さを測れるという意味合いで空間という表現を使う事にする。
従って何も無い状態だけでなく、実体を持った物体も含める事になる。Fig.4_1参照
一般相対性理論では、質量mを持つ物体の存在により空間が歪む、と表現されるが、この空間も2つの物体の間の何も無い状態と、バネのように伸縮する物体という両方の意味合いが考えられる。
後者と考えた場合、これは力と変位の関係を示したフックの変形の法則=質量mが大きなオモリをバネにぶら下げれば伸び=変位は大きいという事に他ならない。
そして力fと変位Lの比=f/Lは剛性k=バネ定数と呼ばれるが、その逆数=1/Kが柔らかさ=柔性Hである。
このように考えると、空間は柔性Hを持つと言える。
一方、前者と考えた場合、"何も無い空間が歪む" は実体を対象としてきた従来の物理や力学ではイメージ出来ない。
しかしながら、例えばスポンジを曲げれば内部の空隙も歪み、コイルバネが伸縮すればその空隙も伸縮する。
Fig.4_2参照
あるいは物体をズームして微視的に見た場合、実体のある物体であっても原子、分子間距離と言う空隙が内在している事が判る。
このように考えるなら、空間の意味合いは実体が有る、無いを問わないと言う見方が出来る。
電磁波は何も無い空間を隔てた食品中の水分子を加熱する事が出来るゆえに、実体が無い空間でもエネルギを蓄えて伝播出来る事を示している。
ここから、実体の有無にかかわらず空間はエネルギを蓄える機能を持っていると言える。
式(1.3)のように物質に蓄えられるエネルギは、質量に蓄えられる速度エネルギと柔性に蓄えられる力エネルギに分けられる。
ここで、物質を空間と言い換えた時、実体の無い空間は質量mを持つ事は出来ないが、柔性Hは持っていると考える。
なお、実体の有る空間は物質、物体、実体の無い空間は量子力学や電磁気学で使われる真空の意味と同じである。

Fig.4_1


Fig.4_2

●実体の無い空間のモデル化
 ここで、Fig.2に示した重力発現モデルを説明する。
量子力学の反物質をヒントに、物体が存在すればそれと相似な空間の存在を考える。
例えば、Fig.4_2の灰色の実体の無い部分=バネの空隙部分と考えれば良い。
また、電磁波は実体の無い空間の伸縮による疎密波であり、電磁エネルギの伝播を担うインダクタンスを持っている。
これに倣って、その空間とは実体は無いが、力エネルギの伝播を担う柔性を持っていると解釈する。
補足資料に掲載した力学と電磁気学の相似則の表を参照
つまり、Fig.2ではその空間を両脇の物体の柔性が投影されたバネと考える訳である。 Fig.4_1の左図参照
本報の空間が反物質の考え方と異なるのは、空間の柔性は両脇の物体との隣接距離に応じて決まる事である。
柔性値を持つ両脇の物体を基準にすると、仮にその物体がn個繋がれば柔性はn倍になる。*3
空間の長さ=両物体の隣接距離は物体自身の長さの何個分になるかを計算すれば空間が持つ柔性値が求められる。
両物体の隣接距離に比例して物体間の空間の柔性は大きくなる。
空間の柔性が大きくなるという事はその復元力は小さくなる。
これが万有引力の公式に於いて、分母に距離Lの2乗が来る事に相当する。
言い換えると、万有引力とは物体間に挟まれた空間に備わった柔性によって発現する復元力と言える。
一方、実体の無い空間は質量を持つ事は出来ないので、仮想的に両脇の物体の質量を与える事にする。
ここで考える柔性、質量を、両脇の物体の柔性、質量が投影された等価柔性、及び等価質量と呼ぶ事にする。
アインシュタインは質量の存在を重力場と呼んだが、等価柔性とはそれと対になるバネ場と呼べる。補足資料参照
これは電磁気学に於いて電場と磁場が同時に存在する事と相似の関係にある。
電場と磁場が切り分けられ無いように、重力場とバネ場は切り分ける事が出来ない。

*3:黒体輻射のプランクの公式に於いて光のエネルギが整数比になっている事と同じ意味合いである。

 以上のように量子力学と電磁気学を参考に、実体が無くとも等価柔性、等価質量を持つ、すなわち力エネルギを蓄える事で復元力=重力を発現する機能を持った空間モデルが表現される。
なお、空間モデル内には上記のメカニズムを以下の数式で記述した機構モデル(赤枠部)を設けてある。

ここで、以下の様に定義する。

L:隣接距離=空間モデルの長さ(m)(両物体の重心間距離としていない事に注意)
L1、L2:物体の長さ(m)
m1、m2:物体の質量(Kg)
H1、H2:物体の柔性(mN-1
H:空間モデルの仮想柔性(mN-1
H_ratio:空間モデルの柔性比(-)
His_m:空間モデルの等価質量(Kg)
His_H:空間モデルの等価柔性(mN-1
F_E_obj:熱エネルギ等価力(N)
F0_s:空間モデルの復元力(N)
G_Force:重力(N)

 空間モデルの柔性は長さに比例するので、両脇の物体柔性の何倍か?という比率H_ratioを、L、L1、L2を用いて求める。Fig.5参照

H_ratio = L / (L1 + L2)  ここでL1、L2は伸縮するのでH_ratioは変動する。

 空間モデルの等価柔性His_H、及び等価質量His_mは以下の様に求められる。

His_H = H_ratio・H  等価柔性は仮想柔性の柔性比倍で表される。
His_m = (m1 + m2)  等価質量は物体の質量が反映される。

 His_H、His_mに値が入る事で空間モデルは伸縮が可能となる。
次に、熱エネルギ等価力F_E_objを印加すると復元力F0_sが生じる。
これが空間モデルから両脇の物体モデルへ印加する重力の原資となる。
重力G_Forceは以下の式で算出する。

G_Force = F0_s・H_ratio  H_ratioの変動を受けてG_Forceは変動する。                          (1.6)

 ここでフックの法則に従い、G_Forceが隣接距離Lの二乗に反比例する事を確認する。

σ:空間モデルの歪(m)
K:空間モデルの剛性(Nm-1
L_Ini:隣接距離=空間モデルの長さの基準値(m)

σ = L_Ini / L
His_H = H_ratio = L / (L1 + L2)  仮想柔性H = 1としておく。
F0_s ∝ σ・K = σ / His_H = (L_Ini / L) / (L / (L1 + L2)) = L_Ini・(L1 + L2) / L2 フックの法則
G_Force ∝ F0_s・H_ratio = (L_Ini・(L1 + L2) / L2)・(L_Ini / (L1 + L2)) = L_Ini2 / L2  L_Ini = 1 と置けば
G_Force ∝ 1 / L2

フックの法則に於ける柔性Hは定数だが、空間モデルの等価柔性His_Hは距離Lの関数となって変動する事を示している。

・両脇の物体の隣接距離Lが大→空間モデルの等価柔性His_Hは大きくなる=剛性小→復元力=重力は小さくなる。
・両脇の物体の質量m1、m2が大→空間モデルの等価質量His_mも大→復元力=重力は大きくなる。
・これにより万有引力の公式が表現される。
・万有引力の公式のLは重心間距離だが、式(1.6)に含まれるLは隣接距離という違いがある。
・これが隣接距離L=0=接触しても重心間距離dc > 0ゆえに、重力が無限大にはならない仕組みである。Fig.5参照

Fig.5

●熱エネルギを蓄えている空間
 重力発現モデルに重力となる復元力を発生させる為には最初にエネルギの印加が必要である。
前述の様に、地球上で垂直にバネを吊るして静止させると無重力空間に置かれた状態に対して全長は伸びる。
これはバネ内部の復元力と重力が釣り合った状態であり、力エネルギを最大に蓄えた状態にある。
一方、速度エネルギは静止しているからゼロである。
この状態を空間モデルに与える為に、空間から両脇の物体に印加する重力を仮想的にゼロから所定の値まで増加させる仕組みを組み込んだ。 Fig.2の空間モデルの下辺に入力されるF_E_objである。(赤鎖線枠部)
これは無重力空間でバネを所定の長さまで引っ張る操作に相当する。
所定の値とは式(1.4)に示す物体の温度によって決まる熱エネルギEtである。
熱エネルギEtと等価な力が式(1.5)で示したF_E_objである。
この力をゼロから暫増させ、空間モデルが持つエネルギがEtに達した時点で印加を中止=ゼロに戻す。
上記の操作は回路上、空間モデルから出力された力が力端子を通して両物体モデルにも印加される事になる。
このように熱エネルギを印加して初めて物体とそれに挟まれた空間が伸縮を始める。
熱エネルギを由来とする物体の伸縮はド・ブロイの物質波に相当する。
従って、重力=万有引力は熱エネルギが無い=絶対零度に於いては生じない事になる。
なお、絶対零度とは物理的にエネルギ=ゼロと考えた仮想状態であり、実在している宇宙の温度は絶対零度ではない。*4

*4:0(k) = -273(℃)ではなく、3(k) = -270(℃)とされている。

●実体の無い空間が物体に及ぼす力
 これらの準備を経ると両物体モデルとそれに挟まれた空間モデルは伸縮を始める。
その時の各物理量を観察した例を後段の結果にてFig7_1~4.に示すが、両物体は伸縮しているのでお互いの隣接距離、及び重心間距離が周期的に変動する。
その為、万有引力の公式で言えば分母のLが変動する事になり、重力も変動する事になる。
地球上に於ける物体の落下運動を計算する際は、慣例的に物体に印加する重力は質量(Kg)に重力加速度9.8(m/s2)を掛けた固定値として実害は無い。
本報では二つの物体に挟まれた空間モデルを配することで物体自身の伸縮に因って変動を伴う重力が発現する。
この変動する重力はアインシュタインが考えていた重力波に相当すると考えられる。
物体の柔性が低い=剛性が高い場合は伸縮量は微弱であり、重力波として観測するのは困難と考えられる。
重力波は2016年に米カリフォルニア工科大、マサチューセッツ工科大等の研究チームによって初めて観測、実証された。
これはブラックホールの候補であった連星の衝突に由来すると分析された。
ブラックホールは天体自身の重力で陥没~退縮を繰り返し、密度が巨大となった物体と想定されている。
従って、直径は徐々に縮小し、連星の場合はお互いの隣接距離が縮小、重力が増大し、最後は接触する。
接触と言ってもお互いの半径はゼロではないから重心間距離はゼロではなく、従って重力は無限大にはならない。
観測された重力波とは本報の両脇の物体に挟まれた実体の無い空間モデルの伸縮=波動に相当すると考えられる。
なお、量子力学、電磁気学の分野ではこれを、実体の無い真空でもゆらぎを持つと表現する場合がある。

内包量外延量について
補足資料3参照
ここに示されている重要なルールをあらためて以下に示しておく。

・人間が操作出来るのは外延量のみであり、内包量については関与出来ない。

次に、補足資料に示した基本モデルの中の両端にある端子について説明しておく。
左側の速度端子:実体の有無を問わずモデルに外延量を与える。
右側の 力端子:実体の有無を問わずモデルに内包量を与える。(モデル=仮想ゆえに関与出来る)
なお、後述する机上実験では、左端の速度=0=固定とし、力は熱エネルギと等価な力F_E_obj を印加している。

●エネルギを表に出す
 補足資料に於いて、"エネルギの視点で物事を評価する" と述べたが、この点に触れておく。
長松は著書 "機械の力学" に於いて、"エネルギが隠れている"、"エネルギを表に出す" と述べている。
機械=メカニクスは実体が有り、力fや速度v、温度Tはそれ単独で機械の能力を代弁する事が出来る。
例えば機関車の能力を表す場合、最大牽引力(N)や最高速度(Kmh-1)が用いられる。
パワ(Kw)=瞬時エネルギ(Js-1)で示す事もあり、能力の高さ*5は判るが、実際に使った結果がイメージ出来ない。
しかし最高速度や最大牽引力が大きければ、相応の燃料=エネルギ(J)を消費するという現実が残るのである。
逆に隠れているのは、燃料が持つ熱エネルギが機械エネルギにどれだけ変換されたのか?という疑問である。
これをエネルギ変換効率と呼ぶが、企業に於いては機密事項となって隠れているのが実情である。*6
そして変換しきれなかったエネルギは何処へ行ってしまったのか?
一方、エレクトロニクスは実体が無く、電流Iも電位Eもそれ単独では能力を代弁出来ない。
電流(A) ×電圧(V) =パワ(Kw)=(Js-1)の形にして初めて能力から消費電力まで代弁出来ると言える。
なお、先に式(1.3)はエネルギ保存則と呼べると述べたが、このエネルギとは物質や実体の無い空間=真空が蓄えるエネルギである。
一方、熱力学第二法則によりエネルギ変換効率は必ず100%未満であり、エネルギ保存則は成り立たない言われるエネルギとは別物である。

*5:能力の高さ=仕事率=仕事の速さである。
*6:ドイツでは機械のエネルギ変換効率データの開示は購買契約が条件となっており、戦略的に扱われている。

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机上実験

●パラメータ:
・質量m:表1参照 2水準
・柔性H:表1参照 2水準
・長さ:1.0(m) (無重力時)
・外径Φ:1.0(m)
・2物体の隣接距離L:表1参照
表1 質量m(Kg) 柔性H(mN-1) 隣接距離L(m)
case 物体1物体2 物体1物体2 -
1
1.0 1.0 1e-4 1e-4 4.0
2
1.0 100.0 1e-4 1e-4 4.0
3
1.0 1.0 1e-4 1e-5 2.0
4
1.0 0.8 1e-4 1e-4 2.0

●試験条件:
・片端固定で自由振動させる
・サンプリング時間:1e-4(s)
注:質量m、柔性Hが大きい場合、隣接距離Lを大きく取らないと両物体は接触する=バンジージャンプで地面に激突。

Fig.6

●結果:
・各種物理量波形


Fig.7_1 CASE1 同一諸元
・凡例:赤:物体1 黄:物体2
・右中図:お互いの固有振動数は等しく、重力波形は正弦波である。


Fig.7_2 CASE2 質量比100倍
・凡例:凡例:赤:物体1 黄:物体2
・右中図:お互いの固有振動数は異なり、重力波形は重ねあわせになる。


Fig.7_3 CASE3 柔性比10倍
・凡例:赤:物体1 黄:物体2
・右中図:お互いの固有振動数は異なり、重力波形は重ねあわせになる。


Fig.7_4 CASE4 質量比0.8倍 共鳴
・凡例:赤:物体1 黄:物体2
・右中図:お互いの固有振動数が近接していると、重力波形はうなり
(振幅の周期的な変動)を生じる。 

・リサージュ波形
 ・x軸:端部速度、y軸:復元力に取ったリサージュ波形の事例を示す。
 ・工学ではx・y軸上に2つの物理量をプロットして現れる様相を観察する事がある。
 ・電磁気学の分野では電圧と電流をプロットしてその波形から回路の特性を確認する事が行われる。
 ・ルールとしては前述の内包量外延量にあたる物理量をプロットすれば良い。


Fig.8_1 CASE1 同一諸元
・凡例:赤:物体1 黄:物体2
・波形は同一で対称の位置関係にある。
・楕円の面積は物体に蓄えられているエネルギに比例し、物体1=物体2である。


Fig.8_2 CASE2 質量比100倍
・凡例:赤:物体1 黄:物体2
・波形は非対象となり、物体2の重力場・バネ場の歪みを受けて物体1の波形は歪む。
(フレ幅が大きい)
・楕円の面積は物体に蓄えられているエネルギに比例し、物体1>物体2である。


Fig.8_3 CASE3 柔性比10倍
・凡例:赤:物体1 黄:物体2
・波形は非対象となり、物体1の重力場・バネ場の歪みを受けて物体2の波形は歪む。
(フレ幅が大きい)
・楕円の面積は物体に蓄えられているエネルギに比例し、物体1>物体2である。


Fig.8_4 CASE4 質量比0.8倍 共鳴
・凡例:赤:物体1 黄:物体2
・波形は僅かに非対象となり、お互いの重力場・バネ場の歪みがうなりを生じる。
(フレの周期は微妙に異なる)
・楕円の面積は物体に蓄えられているエネルギに比例し、物体1>物体2である。

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考察

●微小な万有引力と桁落ち
 万有引力定数Ggは6.672e-11(m3 kg−1 s−2)という微小な値ゆえ、万有引力の計算では桁落ちが発生する場合がある。
地球の質量は5.9724e24(Kg)と巨大であるが、直径も12742000(m)と巨大であるゆえ、地球上の物体との重心間距離≒地球の半径と見なせば、質量1(Kg)の物体に生ずる重力は近似的に9.8(N)という値になる。
この程度のオーダーであれば計算可能だが、無重力空間で質量1(Kg)同士の二つの物体間に働く重力を計算しようとすると一般的なパソコンでは桁落ちする場合がある。
本報の重力発現モデルでは万有引力定数を用いないので、重力の絶対値は求められないが、物体の質量と柔性を適宜決めて相対的な比較をした結果がFig.7_1~4である。
従って重力変動の振幅、周波数は絶対値ではなく、ズームされた相対値として見て頂きたい。

●重力波の様相
 二つの物体の質量、柔性がお互いに異なる場合、重力波はお互いが持っている固有振動数の重ね合わせとなる。
一方の振幅が微小な場合、一見、単一の振動に見える場合でも、周波数分析すれば両者を分離する事が出来る。
仮に宇宙空間で重力波が観測できた場合、周波数分析から天体の様相が推定できるかもしれない。
Fig.7_4の様にお互いの固有振動数が近接して共鳴を起こせば振幅の大きな重力波が観測出来るかもしれない。
これが2016年に観測された重力波が連星のブラックホール由来と分析された理由と考えられる。

 天体~宇宙空間で起こる現象がある一方、うなりや共鳴は人間同士でも起きている事は経験されていると思う。
人間個々が持っている固有振動数=バイオリズムは十人十色であり、気の合う同士は引き合い、感化され易かったり、気の合わない同士は距離を置いたり、ヘイトという現象も理解できる。
こうした見方をすると、気とは重力波と似ているように思える。
驚くべきは、人間はそうした気を感じることが出来、オーラと呼んだり "空気が読めない" と表現したりする。
リサージュ波形のFig.8_2の例では、自分の質量の100倍の相手が居ると自分の揺れ方がフレる=歪むのが判る。
だからと言って相手の蓄えているエネルギが大きいかと言うと必ずしもそうではない。
質量が大きい=蓄え得る速度エネルギは大きいかもしれないが、揺れる周期が長い=速度が小さければ実際に蓄えている量は小さいと言える。
物事には因果関係があるが、必ずしも大きなエネルギが支配的になるとは限らないと言える。
重要なのは、速度エネルギ、力エネルギのどちらが支配的か?、言い換えると運動量と変形量の比率と言える。

 例えば相撲では、激しく突き押せば運動量は大きいが、相手がのけ反る=変形量が大きければ自分の速度エネルギが相手の力エネルギを蓄えさせてしまう。
次の瞬間、のけ反った反動を利用して相手は自分に向かってくる。
将棋は二人が向き合って座っているので運動量は僅かだが、脳内ではシナプスが大きく変形~伸縮しているのではないだろうか?
Fig.8_3の例は柔性が大きい物体は泰然としているが、柔性が小さい=剛な物体の方は小刻みにフレている事が判る。
これは "柔よく剛を制する" 例と言えないだろうか?
こうした例を見て行くと、物事は常に相手があっての事と言える。
双対性とは電磁気学や力学だけでなく、万物に当てはまる理=ことわりなのかもしれない。

●量子力学との関係
 先述の空間のモデル化の中で、反物質をヒントにしたと述べたが、量子力学では質量が同じだが電荷の正負が逆の電子を反電子=陽電子と呼んでいる。
陽電子は1932年に発見され、電子と陽電子が共存すると電荷が打ち消し合って両者は消滅すると説明されている。
現代では陽電子を生成、捕獲する事が出来、医療にも応用されている。
繰り返しになるが、本報の空間モデルは物体が存在すればそれと相似な空間の存在を考えている。
その空間は実体は無いが、柔性Hを持つ=力エネルギを蓄える機能を持っている。
その空間は両脇の物体の柔性、及び質量の情報が投影されたバネと考えてよい。
このように考えると陽電子とは、1個の電子が存在すればその質量と柔性、および電荷の情報が投影された空間と解釈する事も出来る。
本報で考えた空間のモデルと陽電子を対比させると、前者は実体が無い、後者は実体がある空間と言える。
実体が無い空間は、喩えれば影のような存在かもしれない。
"光ある所に影がある" なる文言があるが、物質とその影が接触しても消滅は起きない。

●ニュートンとフックの功績
 補足資料において、”運動と変形は切り分けられ無い” と述べた。
一方、18世紀の時代の二人は運動と変形を切り分けたと言える。

・運動の法則:質点の時間に対する移動を扱っているが、物体の長さ=空間の存在を不問にしている。
・変形の法則:物体の変形量=空間を扱っているが、時間の経過を不問にしている=静止状態に限定している。

しかしながら、二人は思考の過程で、

・ニュートン:林檎の落下を観察すると同時に長さが定まらない柔らかいバネの落下も承知していた筈である。
・フック:実験の際にバネが伸びる位置までオモリを移動するには時間を要する事を承知していた筈である。

こうした事実は盲点と呼ぶようなものではなく、あえて見ないようにする=感性のなす業と言えないだろうか?
フックは吊り下げたバネが伸びるのを見て万有引力の概念は自分も考えていたと反論している。
ニュートンも柔らかいバネの落下を説明するにはフックの法則が必要な事は承知していたと思われる。Fig.9参照
こうした事から、二人の理論はお互いを脅かすと感じていたように思える。
無益な論争を続けなかったのは理性のなす業であろうか?
しかしながら、ニュートンはフックの死後に、実験設備や書物、肖像画まで焼却している。
これは感性のなす業であろうか?
お互いに反目していた事は歴史の事実として伝わっているが、ホーキングも著書でニュートンについて ”やな奴” と感想を述べている。


Fig.9

 二人の時代から約2世紀後に生まれたアインシュタインは柔らかいバネの落下を想像すると、二人が運動と変形、時間と空間を切り分けている事に疑問を感じていたように思える。
補足資料で述べたように、物体を課題に応じて運動と変形、マスとバネに切り分けて扱うと結果は非常に明確である。
そのようなやり方で得て来た恩恵は計りし得ない。
但し、その恩恵はエネルギではなく、速度圧力流量といった内包量外延量を単独で求める時の恩恵と言える。
ただ、二人の時代は運動量、変形量という概念を用いて理論を組み立てたが、まだエネルギ=仕事量という概念が確立されていなかったのである。
エネルギの概念が確立されたのは19世紀後半であり、工学の立場からワットが仕事の速さという概念を×速度=パワで表した事が切っ掛けである。
ただ、パワなる値が提示されてもその時の速度はどちらかを規定しないと定まらないという性質がある。
これは数学的に双曲線上には無数の x y の組み合わせが存在するという事に他ならない。
速度が明確になるのと比べると、パワは値が大きい程良い事は判るが、が大きい方が良いのか?速度が大きい方が良いのか?どっちつかずという歯切れの悪さを伴う。
筆者は夏目漱石が草枕の冒頭に記した、"に働けば角が立つ、に棹させば流される" を思い浮かべてしまう。
草枕が発表されたのは1906年であり、アインシュタインが特殊相対性理論を発表した翌年なのである。
むしろ産業革命が興るはるか以前、補足資料3で述べたように14世紀の哲学者ニコル・オレームは真理を突いていたように見える。
現代の差し迫った課題は地球温暖化であり、熱エネルギを機械エネルギに変換しきれなかった分を表に出す事が求められている。

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まとめ

柔らかい物質の解釈を示した。
自由振動について再確認し、重力、温度の扱い方を示した。
物質に蓄えられるエネルギを確認し、熱エネルギの印加方法について示した。
空間について実体の有るもの、及び無いものを区別した。
物理機能モデル手法で二つの物体、及びそれに挟まれる実体の無い空間をモデル化した。
実体の無い空間モデルに復元力=重力が発現するメカニズムを組み込んだ。
両物体は点ではなく、長さを持つ空間としているので接触しても重心間距離はゼロにならず、重力は無限大にならない。
両物体は伸縮する事で重心間距離、隣接距離が変動し、重力も変動する。
変動する重力は重力波と表現出来る。
伸縮する物体の端部速度復元力を使ってリサージュ波形を観察する方法を示した。
質量が相対的に大きいと周囲の空間が歪む様相をリサージュ波形を用いて表現した。
絶対零度に於いては重力は生じない。

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脚注・参考文献

脚注:
[1]:機械学会交通物流部門 連続講習会No.24-53 資料
 "物質の柔性が粒子と波動性に及ぼす影響"  五十川晋一 著 2024年 P15

参考文献:
・角田鎮男 ほか:製品開発のためのモデル化手法(展開と統合) 日本機械学会 [No.98 8]
 機械力学・計測制御講演論文集 98.8.17 20 ・札幌 )
・機械の力学 長松昭男 著 朝倉書店刊 2007年
・複合領域シミュレーションのための電気・機械系の力学 長松昌男、長松昭男 共著 コロナ社刊 2013年
・次世代のものづくりのための電気・機械一体化モデル 長松昌男 著 共立出版刊 2015年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.12-5 資料
 "機械ー電気の統合モデルによるモデルベース開発" 角田鎮男 著 2021年
 "機械工学から見た相対性理論" 五十川晋一 著 2021年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.22-80 資料
 "機械工学から見たブラックホール" 五十川晋一 著 2022年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.24-53 資料
 "物質の柔性が粒子と波動性に及ぼす影響"  五十川晋一 著 2024年
・ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで  林一訳 ハヤカワ文庫NF  1995年
・タンパク質の音楽 深川洋一 著 ちくまプリマーブックス  1999年
・地殻破壊の前兆現象としての電磁放射の特性に関する研究 藤縄幸雄 著 1995年
・赤外吸収スペクトルと分子構造研究一バネと玉の振動から形を推測する 岡本裕巳 著 化学と教育 47巻1 号 1999 年
・京都大学 市民講座「物理と宇宙」第6回「素粒子論の未解決問題「重力の量子化」とは何か」福間 将文 著 2018年
研究ノート 力学の双対性から見たプランク定数 五十川晋一 著 2025年
研究ノート 力学の双対性から見たプランクの公式の導出 五十川晋一 著 2025年

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