研究ノート
浮遊する柔らかい物質の振動解析
エネルギの視点から
2025.7.15
五十川晋一

目的

 機械工学の分野では振動現象は様々にシミュレーションが行われている。
そこで用いられるモデルには対象を精密に3Dモデル化したものや、目的と要求精度を勘案して簡略なモデルも使われる。
方法としては対象物質の一端に速度変動を与えて振動モードやその応答を見たり、どの要素が寄与しているかを周波数分析で探るといったものが良く知られている。
現代ではこうしたシミュレーションはルーティン化しているが、それは対象物質がある程度剛性を持って機械や建造物のように形状が明確に定義出来るからではないだろうか?
そうしないと、機械全般は意図した機能が実現、維持できないという事情がある。
言い換えればニュートン・フックの法則が適応出来る範囲内と言えるかもしれない。
一方、工学以外の分野では形状が不確定で剛性が不明だったり、計測できない対象がある。
例えば、医学やバイオ、ナノテクノロジのように、人体臓器や細胞、タンパク質のような高分子、量子力学のように原子や電子の振る舞いを力学的に観察するにはその剛性値が問題になる。
また、こうした対称物は機械のように固定されているとは限らず、浮遊しているケースも考えられる。
本報ではそうした剛性値が不明確な物質を物理機能モデル手法でモデル化し、その振る舞いをエネルギの視点で観察する。
なお、物理機能モデル手法の詳細は補足資料に示した。

もくじ

●柔らかい物質について
●柔らかい物質のモデル
●浮遊振動の模擬
 ・浮遊振動とは
 ・重力の扱い
 ・温度の扱い
 ・物質に蓄えられるエネルギ
 ・内包量外延量について
 ・熱エネルギと力エネルギ、位置エネルギの等価性
 ・パラメータ
 ・試験条件
 ・結果
●考察
 ・エネルギを観測する
 ・換算温度について
 ・エントロピの再確認
 ・電子レンジの原理の再確認
 ・温室効果ガスの再確認
 ・速度変動印加の応用
●まとめ
●参考文献

柔らかい物質について

 Fig.1参照
物質は点ではなく、長さ(空間)を持つ。
密度は均一ではなく、質点(重心)は物質内を移動する。
力fは質点に作用する=ニュートンの運動の法則
復元力fiは相対速度vrによって生じる=フックの変形の法則
物質は変形=伸縮しながら運動する。
これは物体全体が運動するか否かに関わらず、物体内部で質点が運動していると言う事である。
柔らかさ=柔性とは剛性の逆数であり、相対的なものである。
物質の質量に対して相対的な柔らかさという意味である。
こうした見方をする時、物質は粒子と波動の性質を併せ持つ。
[1]


Fig.1

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柔らかい物質のモデル

 Fig.2は補足資料に示した基本モデルを2連にしたもので、一次元方向に伸縮するバネと考えて差し支えない。
n連に繋げる事で任意の長さを持ったバネを表現出来る。
左端固定の場合は基本モデルで良いが、解放して浮遊、飛翔させる場合は2連以上が必要である。
基本モデルは線形系だが2連以上では非線形系となる。

Fig.2

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浮遊振動の模擬

●浮遊振動とは
 工学の分野では自由振動なる用語があり、一般的には対象物質の一端を固定して他端に速度変動を与えて振動している状態を意味する。
自由振動する系は通称バネ・マス系と呼ばれるが、バンジージャンプが判り易い例である。
落下に際し、自分の体重で地表に激突するか否かは柔軟性のあるロープをバネ、人間をマスと見なせば計算出来る。
一方、物質の両端が解放されて伸縮しながら浮遊していたり、空中を飛翔するケースも考えられる。
本報ではこれを浮遊振動と呼ぶ事にする。
例として空気中や真空の宇宙空間に漂う塵のような物質がある。
近年、宇宙ゴミと言われる人口衛星の残骸や隕石の破片などが現役の人工衛星や地球に危害を及ぼさないように処理する研究が行われている。
厳密に言えば地球も完全剛体では無く、伸縮しながら宇宙空間に浮遊して運動する物質である。
ミクロな視点では、分子をバネとマスに置き換えて振動特性から分子構造を把握しようとする研究が行われている。
分子振動の利用例として、電子レンジは2.4GHzなる振動数を持つ電磁波を食品中の水分子に印加している。
また、CO2の分子は赤外線(振動数3~3000THz)を吸収する事から、赤外線の倍数の振動数で振動していると考えられ、温室効果ガスと呼ばれる所以である。[2]
更に、生命体の中ではアミノ酸が鎖のように繋がった多種多様なタンパク質が日々合成されている。
こうしたH2O、CO2のような単分子やタンパク質のような高分子はその化学式に因って決まる質量を持っており、これらは両端は固定されておらず、浮遊していると考えられる。
タンパク質は細胞内のリボゾームで合成されるが、これを細胞外に運ぶ機能を担うものとして分子モーターなる概念とそのメカニズムが解明されつつある。
本報ではこうした浮遊物質の振る舞いについて考察する。

●重力の扱い
 地球上では重力が働くので、バネの上端を固定して吊るせばバネの全長は自身と地球の質量、およびお互いの重心間距離に因って決まる長さまで伸びる。
地球の巨大な半径に比べてバネの長さ、及び吊るす高さは無視できるとすれば重力は近似的にバネ自身の質量に因って決まる、すなわち一定と見なすことができる。
しかしながらバネが柔らかい=柔性が大きい場合は伸び量は大きく、地面に接触しない高さから吊るす必要がある。
吊るしているバネを微小な区間に分割して考えると上端付近は下端付近に比べ伸び量は大きく、これは密度が小さい事を意味する。Fig.3参照
従って、柔らかいバネは鉛直方向の座標に沿って密度が非線形になっていると言える。
この柔らかいバネが伸縮するならば、その密度は均一ではないのでバネ全体の重心は上下に移動する事になる。
冒頭のFig.1で述べた、質点(重心)は物質内を移動する、とはこの事である。
バネの柔性≒0=完全剛体と見なせるならば、吊るした場合の伸び量は無視出来るので密度は均一で、重心は移動しない。

 機械工学の分野では、例えば自動車のサスペンションのように伸縮するバネを用いる事があるが、それを支えるフレームは変形しないように高い剛性を持って頑丈に設計する。
また、夫々の部材の固定に用いられるボルト類も、締め付けた時の伸び量を考慮したバネと見なしている。
これは剛性を相対的に扱っていると言える。
一方、 H2O、CO2のような単分子やタンパク質のような高分子は質量を持っているが、その剛性や柔らかさについては明らかになっていない。
更に、人体というシステムを考えると、その中で日々生成されているタンパク質は物質としてどのような振る舞いを示すのかも明らかになっていない。
仮に同じ種類のタンパク質の単分子が2個、近接して存在するならば、お互いの挙動は両者の間に働く万有引力の影響を受ける筈である。
同様に2個の分子が電荷を持っているならば、両者間にはクーロン力が発生する事も考慮しなければならない。
単分子の質量はミクロだが、両者間の距離もミクロであるから万有引力、クーロン力の影響はゼロとは言い切れないという意味である。
電磁気学そして量子力学の成立以降、万有引力とクーロン力は総称して近接作用と呼ばれているが、本報の浮遊振動の模擬ではまず1個の物質を対象とし、近接作用は無し、すなわち無重力、無電荷条件とした。
なお、2個の物質に万有引力が働いた場合の振動解析は既研究ノート重力発現モデルを参照されたい。

Fig.3

●温度の扱い
 対象物質の振動現象が温度に因って殆ど変化しないと見なせれば良いが、高分子をミクロな視点で観察する場合、温度、すなわち熱エネルギの影響は無視出来ない。
更に、量子力学が扱うような原子、電子のような物質の最小単位となると、ド・ブロイの物質波も考慮する必要がある。

●物質に蓄えられるエネルギ
 物質全般は絶対零度以上の温度にあるとき、熱エネルギを蓄え、かつ伸縮している。
まず、伸縮している物質の力学的エネルギEは以下のように定義される。

Ev = 1/2 m・v2   Ev:速度(運動)エネルギ、m:質量、v:バネ端部速度               (1.1)
Ef = 1/2 H・f2   Ef:力(変形)エネルギ、H:柔性、f:バネ復元力                 (1.2)
E = Ev + Ef = const. (1.3)

上式は力学の双対性を現し、式(1.3)は対になったエネルギの和は常に一定となる事からエネルギ保存則と呼べる。
補足資料1参照

 次に、物質は絶対零度 0(k)=(-273.15℃)以上で熱エネルギEtは以下のように定義される。

Et = m・Cp・T  Et:熱エネルギ、m:質量、Cp:比熱、T:温度                      (1.4)

内包量外延量について
補足資料3参照
ここに示されている重要なルールをあらためて以下に示しておく。

・人間が操作出来るのは外延量のみであり、内包量については関与出来ない。

●熱エネルギと力エネルギ、位置エネルギの等価性
補足資料2参照

●力学エネルギと熱エネルギの関係
 補足資料2に示すように、Et = Ef = 1/2 H・f2 と置けば力fが求められる。
この力fを最初にバネに印加しておくことで、物質が熱エネルギEtを蓄えている事を力学的にバネの伸縮に置き換えて表現する事が出来る。 Fig.5_2~5_3参照
これは式(1.4)が示された時、質量mを持つ物質とは変形しない完全剛体をイメージするかもしれないが、柔性Hを併せ持って伸縮するという見方をすると言う事である。
又、この力fは地球上でバネの上端を固定して垂直に吊るして静止している時にバネ内部に生ずる復元力と等価であり、重心に作用する重力と釣り合っている、すなわち万有引力と等価と言える。 *1
バネを吊るした状態から解放すれば落下を始めるがその時、式(1.3)に従って力エネルギEf=位置エネルギは逐次速度(運動)エネルギEvに変換され、両者の和は常に一定を保つ。

 次に、絶対零度下ではバネの熱エネルギEt = 0、バネ内部の復元力f = 0になるので力エネルギEf = 0となる。
従って何もしなければバネは伸縮しないが、水ヨーヨーを振るように一端に速度を印加すれば伸縮し始める。
この時、物質が蓄える力学エネルギEは外延量内包量の和となる。
エネルギEとは本来、外延量 + 内包量の形であり、熱エネルギEtだけは内包量単独という位置づけと言える。
これらを整理したのが以下の表1である。

表1 絶対零度 絶対零度以上
力学エネルギE
速疎(運動)エネルギEv
力(位置)エネルギEf熱エネルギEt
外延量
内包量
>0
=0
>0
>0
電気エネルギE
静電エネルギEC
電磁エネルギEL
外延量
内包量
?
?
>0
>0

*1 :ニュートンが万有引力の法則を発表した時、フックは同じ概念は自分が先に考えたと反論しており、ニュートンが復元力という見方をしていない点を指摘したものと思われる。
これを機に両者は反目するようになった。
フックの死後、ニュートンは彼の文書や実験装置を焼却しており、フックの復元力の見方は約2世紀後にアインシュタインが一般相対性理論に於いて空間の歪みという表現を使うまで、顧みられる事は無かった。
なお、アインシュタインは力学的なアプローチではなく、数学の力を借りて空間の歪みを表現している。

●パラメータ・試験条件
 物質を浮遊状態に置き、一端に速度変動を与えてエネルギを観測する。Fig.4参照
振動数50(s-1) 、振幅200(ms−1)の速度変動を1周期分印加する。
印加する時刻は試験開始後、0.015secを基準として0.1msec刻みで50回ずらして行く。
下表のように印加方向を2ケースに分けて試験を行う。

case 速度変動印加方向
1
縮み方向
2
伸び方向

・質量m:0.1(Kg)
・柔性H:2.0e-4(Nm-1
・長さL:1.0(m) (無重力時)
・比熱Cp:449( JKg−1 k−1) (鉄の値を流用)
・重力加速度:0(ms−2) (無重力)
・環境温度:100(k)(-173.15℃)
・物質初期温度:100(k)(-173.15℃)
・固有振動数:318(s−1
・サンプリング時間:1e-5(s)

Fig.4

●試験操作、及び現象の解説
 試験は以下の1~5までのステップで行う。 Fig.5_1参照
1.物質の左端を固定し、物質初期温度よって決まる熱エネルギEtと等価となる力fを印加する。(左1段目)補足資料9参照
 これにより、物質は熱エネルギを蓄えて振動する状態(ド・ブロイ波)が模擬される。
2.印加完了後に物質は伸び始めるので、伸び切った状態で解放する。
 これは無重力下でバネを所定の復元力f ∝ 変位まで両手で伸ばしてから手を放す操作に相当する。
3.次のステップで左端に速度を印加する時刻までの間は物質は浮遊状態だが、伸縮しながら微小に移動する。
 これは左端と右端の速度は同一ではなく、その速度差=相対速度が生じている為である。
4.既定の時刻で左端に速度変動を印加する。
 これは浮遊しながら微小に移動しているバネの左端に一撃を加える操作と言える。
 この一撃が振動数50(s-1) 、振幅200(ms−1)の1周期分である。
5.速度印加の向き(縮み方向 or 伸び方向)に従って物質は更に移動する。(左3段目)
 これを機に長さの振幅は解放時より増加~減少する。(左4段目)

 以上のステップについて物質に蓄えられているエネルギを以下に分けて観測する。

E_SUM_INT
(右2段目)
・バネ外の宇宙空間の座標上で観測する場合。
・バネが移動中の運動エネルギが含まれている。
・移動速度に応じて変化する。
E_SUMr
(右3段目)
・バネ上の座標で観測する場合。(相対エネルギと言う意味合い)
・速度、力を印加しない限り式(1.3)に従って一定。
・移動に無関係に常に一定を保つ。

 次に、エネルギE_SUMrの変化に応じて物質の温度を換算したものが右4段目である。
この換算温度については別途考察する。


Fig.5_1 試験操作、及び現象の解説(case1=縮み方向で速度印加)
・X軸はすべて時間(s)に取った0~0.05秒間の時系列波形である。
・図中の番号は前述のステップNo.を示す。


Fig.5_2 物質に熱エネルギを印加する状況
・Fig.5_1の最初の0.0018秒間をズームした図である。
・左1段目:力f(白鎖線)をゼロから直線増加で印加する
・右2段目:エネルギE_SUMr(緑)が熱エネルギEt(白鎖線)に達したら力fの印加を終了する。


Fig.6_1 速度変動印加タイミングと印加前後のエネルギの関係(case1=縮み方向)
・X軸は全て印加時刻(s)に取ったものである。
・左1段目はY軸をエネルギE_SUMrに取り、印加時刻を試験開始後、0.015secを基準として0.1msec刻みで50回ずらして
 試験を行った結果をプロットしたものである。 時系列波形ではない事に注意。
・タイミング如何で印加前のエネルギ(赤プロット)から増加するケースと減少するケースに分かれる。
・白〇は印加後のエネルギが最大、および最小になるポイントを示す。
・この試験は物質の伸縮が観測出来れば、端部に印加する速度変動の振幅とタイミングによって物質が蓄えている
 エネルギを制御出来る事を意味する。
・これは無重力空間で水ヨーヨーを振る操作に相当する。
・目を閉じて振れば、印加する速度変動のタイミングとエネルギは出来成りとなる。
・右2段目の換算温度については考察で述べる。


Fig.6_2 速度変動印加タイミングと印加前後のエネルギの関係(case2=伸び方向)
・フォーマットはFig.6_1に同じである。


Fig.7_1 速度変動印加事例(case1で印加後にエネルギ最大となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01670秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右3段目:エネルギE-SUMrは解放時よりドリフトするが、この区間の増減が
・右4段目:換算温度に現れる。
・換算温度はこの区間で変動するが最終的に解放時より上昇し、印加終了後は環境温度に復帰して行く。


Fig.7_2 速度変動印加事例(case1で印加後にエネルギ最小となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01841秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右4段目:換算温度は最終的に解放時より上昇する。


Fig.7_3 速度変動印加事例(case2で印加後にエネルギ最大となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01690秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右4段目:換算温度はこの区間で変動するが最終的に解放時より低下する。


Fig.7_4 速度変動印加事例(case2で印加後にエネルギ最小となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01861秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右4段目:換算温度はこの区間で変動するが最終的に解放時より低下する。

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考察

●エネルギを観測する
 fig.7_1~7_4は印加する速度変動の向き(縮み方向/伸び方向)、およびタイミングに応じて物質が蓄えているエネルギE_SUMrを増加、または減少させる事が出来る事を示している。
これは経験的に水ヨーヨーを上手に振る為に無意識に注意を払っている事と同じである。

 物質の端部に速度を与える例として、相撲で相手を突き押すという所作を考える。
物質が蓄えているエネルギを物事の勢いに喩えれば、加勢したり、削いでしまう例が見られる。
相撲の取り組みでは両力士は何回かの仕切りを行った末に立ち合いとなるが、そのタイミングを計っているように見える。
最初はお互いに仕切り線まで近寄って行くが、その時観察出来るのは相手の呼吸のタイミングと思われる。
小さな浅い呼吸でも体は僅かに伸縮するからその挙動を捉える事が出来る。
綺麗な立ち合いとは、お互いの呼吸による伸縮のタイミングがピッタリ合った状態と言えるかもしれない。
こうした同期作業を経て攻防が始まるが、本試験のように最初の一撃で勢いが加勢されるか、削がれてしまうかで勝敗が左右されるように見える。
最初の一撃によって勢いが加勢されれば相手は腰が崩れるかもしれない。
逆に自分の勢いが削がれてしまえば自分がバランスを崩して土俵に手を付いてしまうかもしれない。

 もう一例として、野球でバッターがボールを打つ例を考える。
ボールは投手の手から離れた瞬間から速度を持って空中を飛翔するが、同時に僅かながら伸縮を伴っていると考えられる。
バッターは向かってくるボールの伸縮が見えれば、縮もうとするタイミングより伸びようとするタイミングでバットに当てれば勢いは加勢され、打球はより大きなエネルギを蓄えて打ち返される事になる。
これはカウンター・パンチの原理と言えるであろう。
このような事が可能な選手が居るとすれば、神業と呼べるかもしれない。

 昨今の野球試合では投手や打者の飛球の速度が計測されるが、これはボール外の座標から見た移動速度である。
この移動速度は投手や打者の能力の高さを示すには充分かもしれない。
この移動速度とボールの質量に因って決まるのは式(1.1)に示される速度(運動)エネルギEvである。
ここで移動速度はボール上の座標から見た伸縮に因る両端部の速度差=相対速度より遥かに大きい。
復元力は相対速度に因って生じるので式(1.2)に因って決まる力(変形)エネルギEfは相対的に小さくなる。
両エネルギの総和=式(1.3)は殆ど速度(運動)エネルギで占められる事になる。
一方、ボール上の座標から見た伸縮に因る相対速度、及びボール内部に生じる復元力は観測する術が無い。

 機械工学の分野ではフックの法則に倣って表面の歪=変位量から復元力を換算する方法がある。
変位量とは相対速度の時間積分量であるから、相対速度を測っている事にもなる。
物質表面の変位量を非接触で測る設備は存在するが、対象物は固定されて静止している事が条件である。
運動する物質の移動速度は観測出来るが、相対速度の動体計測は今のところニーズが無いと言える。
これは、物質外の宇宙空間座標から見たエネルギE_SUM_INTは観測出来ても、物質上の座標から見た相対エネルギE_SUMrは観測する術が無いと言える。
つまり、相対エネルギE_SUMrは本報の物理機能モデル手法を用いたシミュレーションで観測するしか無いと言う事である。

 打球の場合、復元力は作用、反作用の原理でバットを介して打者の腕にも生じる。
従って、目を見張る打撃を繰り返せばいずれ打者の筋肉と骨は確実に疲労が蓄積し、いずれ破壊に至る可能性がある。
このようにエネルギという量は物事の本質を表すと言える。
こうした見方をするならば、打者の立場で観測したいのはボール外の宇宙空間座標から見たエネルギE_SUM_INTよりもボール上の座標から見た相対エネルギE_SUMrではないだろうか?
つまり、偉大な記録のみならず選手の寿命まで評価するには、両エネルギの観測が望まれるのである。
なお、物質の疲労破壊の仕組みについては既研究ノート物質破壊(崩壊)のモデル化を参照されたい。

●換算温度について
 fig.7_1~7_4の右4段目の換算温度について説明する。
力学エネルギは式(1.3)に従い、速度エネルギ(外延量)と力エネルギ(内包量)の和で構成されている。
一方、熱エネルギは式(1.4)に従い、絶対零度0(k)を基準にしてそこからの温度差によって蓄える量が決まる。
これは前述のように、地球の重心からの距離=位置に応じて決まる位置エネルギと等価な物理量である。
すなわち、表1のように熱エネルギとは物質の内部で復元力が生じている時の力エネルギ=位置エネルギと同じ性質を持った内包量である。 ここで両エネルギの構成を式で表すと、

力学エネルギ = 外延量 + 内包量 = const.                                (1.6)
熱エネルギ = 内包量                                          (1.7)

 前述のように、物質が熱エネルギを蓄えている事を力学的にバネの伸縮に置き換えて表現した。
これは上記の式(1.7)を(1.6)に置き換えたと言える。
力学エネルギは振動エネルギと言えるから万物が持っているド・ブロイ波のエネルギとも言える。

 では、式(1.6)と(1.7)の両者は如何なる関係なのだろうか?
熱力学第二法則は、物質の温度変化はオーブンの中の食品のように外部から熱エネルギを供給して起こる事を示している。
ここでジュールが行った実験を振り返えると、

・断熱されている羽根車の入った水槽を用意する。
・羽根車にオモリのぶら下がった滑車を繋ぎ、オモリを所定の高さから落下させると羽根車が水を撹拌する。
・水槽の水温の変化を観測する。

 ここでは水槽に外部からエネルギを供給している事になるが、これは力学的にオモリが蓄えている位置エネルギである。
オモリの落下と供に位置エネルギは逐次速度(運動)エネルギに変換されるが、オモリが最初の位置から最後の位置まで移動する区間では両エネルギの和は常に一定である。
これはエネルギ保存則と呼ばれ、式(1.6)が示している事と同じである。
ジュールは、"オモリが蓄えていた位置エネルギは水槽の水の温度を上昇させるのに必要なエネルギに等しい" なる仮説を立て、その正しさを自覚したと思われる。
この時、彼はこのエネルギを力学エネルギと区別して熱エネルギと呼んだのだろうか?

 温度が変化したという現象から熱という文言が連想されるのは自然であり、我々は熱エネルギという概念を持ってはいるが、熱エネルギとは何か?を説明出来るだろうか?
熱力学なる学問が確立されているのでそれを紐解けば、さまざまな現象を説明し、課題を解決出来る。
熱力学は熱に関する理論だが、本来は必ずしも熱に関わるとは限らない式(1.3)に示されるエネルギ保存則から派生したという見方も出来る。

・熱力学第一法則はエネルギ保存則とも呼ばれるが、熱に限らずエネルギ全般に渡って成立している。
・熱力学第二法則は電気エネルギや化学エネルギについても成立している。

 しかしながら、法則に熱を冠することで却って本質を見え難くしていないだろうか?
この熱なる概念は、温度という計測可能な物理量があった事で生まれたように思われる。
温度を変化させる原因としてそこにエネルギの出入りがある事は様々な実験から示されるが、ジュールが行った実験は、決して熱エネルギなる別の種類のエネルギの存在を示したものでは無い。
式(1.4)が示されたのも、実験を通して温度Tと質量mと比熱Cpに比例するという事実を示しているだけで、エネルギがそこに生じるメカニズムは不問としている。
そのような見方をすると、先述のようにエネルギとは本来、表1に示す、外延量 + 内包量の形であり、内包量単独の熱エネルギとは、課題解決の為の便宜的、あるいは実用的な見方と言える。
そして、力学エネルギを扱うには質量m柔性Hなる対になった特性値が必要であり、これが力学の双対性と呼ばれる。

外延量速度(運動)エネルギEv = 1/2 m・v2 質量mに蓄積される                  (1.1)
内包量位置エネルギ=力エネルギEf = 1/2 H・f2 柔性Hに蓄積される             (1.2)

 ここから、換算温度とは、物質が蓄えている力学エネルギ(J)から求める温度(k)と言える。
これを計算するには、時間に対する温度変化=温度勾配(ks-1)は、同じく時間に対するエネルギ変化=パワ(Js-1)に比例する事から求められる。 但し、以下に示す注意が必要である。
ケース1を例に、区間を以下の3つに分けて考える。

・1.物質を解放してから速度変動を印加するまでの区間は式(1.3)に従ってエネルギE_SUMrは一定値を示す。
・2.次に速度変動を印加している区間では値がドリフトしている。
・3.印加終了後は再び一定値を示す。

 このように捉えると、区間1、3に付いては外部からエネルギの供給が無いが、区間2は速度変動印加によるエネルギが供給されている事で区別される。
従って物質は速度変動印加によるエネルギの供給が行われている区間に限ってエネルギ(J)から温度(k)を求める事に意味がある。
これは一般的に熱力学第二法則と呼んでいるものである。
ここで供給されるエネルギとは、速度変動印加に因って起こる単位時間当たりエネルギ変化量=パワP_OPE(Js-1)であり、以下の式で表される。

P_OPE(Js-1)= 速度V_OPE復元力F  Fig.8参照

 ここで留意すべきは、速度V_OPE外延量復元力Fは物質(バネ)内部に生ずる内包量である。
繰り返しになるが、

・パワ(Js-1)は単位時間当たりのエネルギ(J)であり、速度外延量内包量の積である。
・物質に外部から任意に印加出来るのは速度のような外延量に限られる。
復元力Fのような内包量は人間が関与する事が出来ない。

 従って人間が物質に印加したのは速度V_OPE(外延量)だが、それを受けて物質内部には柔性Hによって復元力F(内包量)が生じる事で初めて物質にパワが印加された事になるのである。
これはパワとは自分、そして相手に質量m柔性Hが有って初めて印加出来るという意味でもある。
教科書ではについて作用~反作用の原理と呼んでいる。
しかし、自分と相手、そして速度(外延量)力(内包量)が対で揃って初めて作用~反作用の原理が成り立つと言える。

 次に、換算温度は以下の手順で求められる。

・サンプリング時間:Δt(s)、初期温度:T_Ini(k)と置くと、
・ヒートマスHm(Jk-1) = m・Cp
・温度勾配dT(ks-1) = P_OPE / Hm
・換算温度T(k) = T_Ini + dT・Δt  

 また、エネルギ E_SUMrを用いて以下の手順でも求められる。

・パワdE(Js-1) = (E_SUMr(n) − E_SUMr(n−1)) / Δt   nは計算ステップを示す。
・温度勾配dT(ks-1) = dE / Hm

注:前述のように、有効なのは区間2のみであり、仮に区間1~3まで連続してdEを求めてしまうと、1、 2そして2、3の区間が切り替わる境で巨大な値になってしまい、正しい温度勾配dtが得られない。

 Fig.8に物理機能モデル上のパワと蓄えられるエネルギを示す。
左上に速度V_OPEを印加すると(バネを縮めたり延ばすと)物質の柔性H復元力Fを返す。
P_OPE(Js-1)= 速度V_OPE復元力F
このパワによって物質に蓄えられるエネルギE_SUMr = 速度エネルギEv力エネルギEf ≠ const. となって変化する。
速度(運動)エネルギEv = 1/2 m・v2 (1.1) = 外延量
力エネルギ"力エネルギEf = 1/2 H・f2 (1.2) = 内包量
エネルギE_SUMr = 速度エネルギEv力エネルギEf ≠ const. (1.3) = 外延量+内包量

Fig.8

●エントロピの再確認
 クラウジウスが示した温度T(k)と熱エネルギQ(J)に関する以下の式は、もし効率=100%の熱機関が存在すれば、Q1、Q2、T1、T2の大小に関わらず、以下の式が成り立つとし、この一定量をエントロピと呼んだ。

Q1 / T1 = Q2 / T2                                      (1.7)

次に、現実界では効率<100%の熱機関しか存在しないから、Q1>Q2、T1>T2ならば、以下の式となる。

Q1 / T1 < Q2 / T2                                      (1.8)

 これは熱機関とは点では無く長さを持っており、その区間をエネルギが出入りする過程で環境温度の方が低くければそちらへも流れてゆく、すなわち漏れてゆく事を意味している。
外部から機関のQ1側にエネルギを印加し(熱して)、Q1>Q2とした場合、温度T1は上昇するが、式(1.8)は温度T1側からT2側に流れたエネルギは印加したエネルギの全量ではなく目減りすると言う意味である。
効率は決して100%にはならないと判っていても、目標を95%にするか90%にするかは恣意的=感性の問題である。
工学者=エンジニアの習性とは同じコストで効率を0.1%でも改善に向けて工夫するところだろうか。
式(1.8)を示して "エントロピは増大するものだ" と口にする人は理知的かもしれなが、そこには感性は働いていない。
これがエントロピを誰でも判るように説明する事が難しい理由ではないだろうか? 
そして、ここでもエネルギが出入りするメカニズムは不問となっている。

 一方、本試験に於いてエネルギE_SUMrがドリフトした原因は外部から熱エネルギを供給したのではなく、前述のように物質に初期熱エネルギと等価な力を印加したり、解放後に速度変動を印加した事にある。
本報では、物質を伸縮するバネとしてモデル化する事でエネルギを蓄える事が出来、速度変動を印加する事でそれを増加させたり減少させる事が出来る事を示した。
先述のように、こうした操作は水ヨーヨーを上手に、すなわち効率よく振る事に喩えられる。
つまり、物質が力学的にエネルギを蓄えるメカニズムとは、質量m柔性Hを対で備える事で可能となり、温度を伴って伸縮しながら運動する仕組みと言える。
Fig.2に示したモデル図がこれを可能としており、これが表題の "浮遊する柔らかい物質" を扱うと言う事である。
エントロピはその時の物質が蓄えているエネルギ(J)と温度(k)の比率を見ている。 これを次のように書き換えると、

エントロピ = エネルギ / 温度 = (外延量 + 内包量) / 内包量 = (a + b) / b                 (1.9)
エネルギ保存則 = a + b = const.                                     

 ここからエントロピはエネルギの出入りが無い場合、すなわち a + b = const.が成り立っている時、エネルギ全体に対する内包量bの寄与率を表していると見る事ができる。
例えば、外部からエネルギの供給をせず、物質が地球の重心に向かって自由落下している状態を考えると、エントロピは内包量b = 位置エネルギの占める割合を示す事になる。
これは、落下中の現在位置を示す量と言える。
エントロピが小さければ式(1.9)の分母の内包量b = 位置の値が大きい=高い=落下は始まったばかりであると言える。
エントロピは落下位置が地球に近づくほど値は増大する。
式(1.9)の分子の外延量a = 速度(運動)エネルギは内包量b = 位置エネルギの減少分だけ増大し、速度は大きくなる。
最後に地面に接触した時には外延量a = 速度(運動)エネルギは最大となっている。

 このような見方をすると、落下中の物質のエントロピが逆に減少に転じているならば、それは落下した物質を元の位置に戻そうとするにはエネルギが必要であり、誰かがそれを供給したと見る事は出来よう。
"覆水を盆に返す" にはエネルギが必要と言う事である。
参考として先述の換算温度を用いてエントロピを計算した結果をFig.9_1~9_4に示す。
速度変動を印加する事でバネにエネルギを供給した訳だが、エントロピを観察する事でもそれが有効に作用したのか無駄であったのかが判別できる。

・ケース1:エントロピは解放時より増加しており、エネルギ(勢い)は加勢されたと言える。
・ケース2:エントロピは解放時より減少しており、エネルギ(勢い)は去勢されたと言える。

 相撲の攻防中に勢いを加勢すべきか、去勢すべきかは相手と自分の状況によって様々だが、いずれにしても速度変動を印加する向きとタイミング次第と言える。


Fig.9_1 速度印加事例(ケース1で印加後にエネルギ最大となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01670秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右1段目:エントロピは解放時より増加している。
・左4段目:長さの振幅は解放時より大きくなっており、水ヨーヨーは勢い良く振れたと言える。


Fig.9_2 速度印加事例(ケース1で印加後にエネルギ最小となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01841秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右1段目:エントロピは解放時より減少している。
・左4段目:長さの振幅は解放時より小さくなっており、水ヨーヨーの勢いを削いでしまったと言える。


Fig.9_3 速度印加事例(ケース2で印加後にエネルギ最大となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01690秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右1段目:エントロピは解放時より増加している。
・左4段目:長さの振幅は解放時より大きくなっており、水ヨーヨーは勢い良く振れたと言える。


Fig.9_4 速度印加事例(ケース2で印加後にエネルギ最小となるタイミング)
・左2段目:時刻0.01861秒で印加したケースである。(白鎖線)
・右1段目:エントロピは解放時より減少している。
・左4段目:長さの振幅は解放時より小さくなっており、水ヨーヨーの勢いを削いでしまったと言える。

●電子レンジの原理の再確認
 本報の試験は電子レンジの発する電磁波が空間の伸縮を介して食品に含まれる水分子を加振している状況に喩えられる。
ここで水分子が蓄えているエネルギが増大すれば換算温度を用いて結果として水分子の温度が上昇する事が説明出来る。
これはオーブンが食品に外部から熱エネルギを供給して温度が上昇するのとはメカニズムが異なる。
ところで、ケース1、2で示したように速度変動印加タイミングに因って物質の蓄えるエネルギ、換算温度が異なる。
本試験では振動数50(s−1)の速度変動を印加しているが、物質の固有振動数はそれより高い318(s−1)である。
実際の電子レンジの電磁波周波数が2.4×109 (s−1)=2.4GHzであるのに対し、水分子の振動数はこれより3~4桁ほど高いと言われている。
また、水分子は水素原子2個(+)と酸素原子1個(-)からなる電荷の偏りを持っており(電気双極子と呼ばれる)、その向きは全ての分子が揃っている訳ではない。
水分子群と電磁波による電界の変動のタイミングが完全に揃うとは考えられない。
こうした見方をすると、印加タイミングの違いは埋もれてしまうと考えられる。
そのような意味で、前述の換算温度とは現実には不確定なもので、実測して観測される温度とは別物と言える。
なお、詳細は研究ノート 電子レンジの物理モデル化を参照されたい。

●温室効果ガスの再確認
 気体のスペクトル分光(分析)を行うとCO2は振動数3×1012 (s−1)付近にある赤外線を吸収する事が知られている。
太陽が発する電磁波中の赤外線成分が地球を取り巻くCO2分子を加振させる事でエネルギを与えている事になる。
これによりCO2ガスは分子自身が蓄えられる以上のエネルギを蓄えてしまう事から、温室効果ガスと呼ばれている。
前述の様に、太陽光の中の赤外線成分がCO2分子個々に速度変動を印加するタイミングはランダムと考えれば、個々の分子の温度が上がるケースと下がるケースがあり、温室効果とはその総体として現れると考えられる。
仮に人為的に太陽由来の電磁波に偏光処理を行って温度が下がるケースの割合を増やす事で温室効果を緩和するアイデア=理想論は考えられる。(地球がサングラスを掛けるのと同じである)

●速度変動印加の応用
 物質の固有振動数と同じ振動数の速度変動を与えると共振してエネルギ E_SUMrと換算温度は急上昇(暴走)する。
従って対象とする物質の固有振動数が判っていれば、共振を避けながらその1/nなる次数を持つ速度変動を印加することで、物質の挙動や温度を制御出来る事になる。
一つの例としてレイザーを用いた医療が実現されている。
レイザーも単一の振動数を持つ人工光であるから、電磁波による速度変動印加と言える。
癌細胞を対象にしたレイザーの使用は細胞を局所的に破壊するものであるが、肉眼で確認できるオーダーと言える。
一方、血液の白血球の細胞のようなミクロのオーダーではレイザーをピンポイントで当てる訳にはいかない。
細胞内ではDNAに基づいてアミノ酸分子を繋げて必要なタンパク質を合成しているが、細胞の癌化のメカニズムにはアクセル役のタンパク質とブレーキ役のタンパク質のバランスが関与しているという仮説がある。
こうしたミクロな物質を対象にしても、電磁波で速度変動を印加出来ればその性質や振る舞いを制御出来る可能性がある。
紫外線でメラニン色素が生成されるのは共振まで行かなくとも、効率よく生成して皮膚細胞を防護する仕組みと考えられる。

 こうした例を見れば、細胞が癌化してから治療を行う以前に、体内で生成される様々なタンパク質を正しく合成して癌化を未然に防止する取り組みも考えられる。
農作物や発酵食品に音楽の暴露、すなわち音波の印加により品質(味)や収穫量を改善する取り組みが行われている。*2
これは働きを期待したいタンパク質に固有の振動特性を解析し、それに共鳴するような音波を印加する例である。
音波の印加には空気の介在が必要だが、電磁波の場合は真空中でも空間(電界)の伸縮を介して物質に速度変動を印加する事が可能である。
このように、速度変動印加は対象物質の固有振動数を特定することで、様々な応用が考えられよう。
こうした応用の実用性を検証するにはエネルギが加勢されたのか去勢されたのか、すなわちエネルギが期待通りに変換されたか?=エネルギ変換効率を指標とすれば良い。
そして、それを観測する技術革新が必要である。

*2 :収穫量の改善は害虫や環境変化に耐性を持たせる為に遺伝子組み換えを行う例があるが、そのリスクが無い。[3]

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まとめ

物理機能モデル手法により柔らかい物質を表現する方法を示した。
浮遊振動について再確認し、温度の扱いがキー・ポイントになる事を示した。
物質に蓄えられるエネルギを確認し、熱エネルギの印加について説明した。
浮遊する物質の一端に速度変動を印加する事で物質の温度が変化する事を示した。
このメカニズムで電子レンジの電磁波が空間の伸縮を介して水分子を加振させて温度が上昇する理由が説明出来た。
同様にCO2ガスが太陽光に含まれる赤外線に加振されて温度が上昇する理由が説明出来た。
物質に速度変動を印加する事により物質が蓄えているエネルギを増減させる事が可能であり、その応用について述べた。

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脚注・参考文献

脚注:
[1]:機械学会交通物流部門 連続講習会No.24-53 資料
  "物質の柔性が粒子と波動性に及ぼす影響"  五十川晋一 著 2024年 P15
[2]:赤外吸収スペクトルと分子構造研究一バネと玉の振動から形を推測する 岡本裕巳 著
  化学と教育 47巻1 号 1999 年 P45
[3]:タンパク質の音楽 深川洋一 著 ちくまプリマーブックス  1999年 P117

参考文献:
・角田鎮男 ほか:製品開発のためのモデル化手法(展開と統合) 日本機械学会 [No.98 8]
 機械力学・計測制御講演論文集 98.8.17 20 ・札幌 )
・機械の力学 長松昭男 著 朝倉書店刊 2007年
・複合領域シミュレーションのための電気・機械系の力学 長松昌男、長松昭男 共著 コロナ社刊 2013年
・次世代のものづくりのための電気・機械一体化モデル 長松昌男 著 共立出版刊 2015年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.12-5 資料
 "機械ー電気の統合モデルによるモデルベース開発" 角田鎮男 著 2021年
 "機械工学から見た相対性理論" 五十川晋一 著 2021年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.22-80 資料
 "機械工学から見たブラックホール" 五十川晋一 著 2022年
・機械学会交通物流部門 連続講習会No.24-53 資料
 "物質の柔性が粒子と波動性に及ぼす影響"  五十川晋一 著 2024年
・ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで  林一訳 ハヤカワ文庫NF  1995年
・タンパク質の音楽 深川洋一 著 ちくまプリマーブックス  1999年
・地殻破壊の前兆現象としての電磁放射の特性に関する研究 藤縄幸雄 著 1995年
・赤外吸収スペクトルと分子構造研究一バネと玉の振動から形を推測する 岡本裕巳 著 化学と教育 47巻1 号 1999 年
研究ノート 重力発現モデル 五十川晋一 著 2025年
研究ノート 物質破壊(崩壊)のモデル化 五十川晋一 著 2025年
研究ノート 力学の双対性から見たプランク定数 五十川晋一 著 2025年
・力学の双対性から見たエネルギ輻射 五十川晋一 著 2024.1.18(未公開)

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