Fig.9で示した過程は以下の仮説を基にしている。
・復元力Fiが物体のFv(原子同士を引き付けている力=材料力学の降伏点に相当)を超えると物質から電子が遊離する。
・物体の柔性Hがエネルギに変換される→塑性域に入る。
・電子が遊離する際に塑性抵抗が生じ、物体は塑性変形する。
・そのエネルギ分だけ柔性Hは増加、逆に剛性Kは低下し、降伏点Fvを超えないようにするリミッタ役となる。
・これは "物体自身の剛性Kがエネルギに変換されて少しづつ柔らかくなる" とも表現出来る。
・剛性K低下と同時に質量も減少する。
・復元力Fiが物体のFvを超える度に塑性抵抗によって消費されたエネルギが積算されてゆく。
・それが物体の柔性Hと降伏点Fvによって決まる寿命エネルギE = H・Fv2に達すると寿命を迎える。
この仮説は機械の繰り返し負荷による疲労寿命計算におけるマイナー則*3に倣ったものである。
塑性抵抗で消費されたエネルギは熱エネルギとなって物体の温度を上昇させる。
これは自動車が下り坂で制限速度を維持する為にブレーキを掛けると、
・自動車が持っている位置エネルギが熱エネルギに変換される。
・ブレーキは熱を持って赤い光を放つ。
・ブレーキの摩擦材の質量が減少し、摩耗紛となって大気中に飛散する。
事に相当する。
重要な事はこの時、自動車と地球を含めた総エネルギは変化していない=式(1.3)が常に成り立っている事である。
筆者はこの仮説に至る過程で特殊相対性理論を以下のように解釈した。
・速度には光速c(ms-1) なる限界値がある。
・力には降伏点Fv(N) なる限界値がある。
E = m・c2:速度が光速を超えようとする限界条件では質量mはエネルギに変換される |
(1.5) |
・補足資料に示した力学の双対性から式(1.5)と対になる以下の式がある筈である。
E = H・Fv2:力が降伏点を超えようとする限界条件では柔性Hはエネルギに変換される |
(1.6) |
・物質は限界力や限界速度を超えようとするとリミッタが働き、熱、光のようなエネルギに変換される。
・一般相対性理論における “空間が曲る” とは “変形” と同義であり、限界を超えれば塑性変形に至る。
この仮説、及び解釈は既研究ノート 物質破壊(崩壊)のモデル化で詳細に述べているので参照されたい。
また、光速については既研究ノート 光速に関する考察を参照されたい。
なお、このメカニズムはFig.2に示したモデル図の赤枠で示した機構モデルにプログラミングされている。
*3:マイナー則を以下に要約する。
任意の機械システムについて繰り返し荷重F(N)で予備疲労試験を実施する。
L:変位(m)、S:応力(Nmm-2)、N:破損までの繰り返し数、Eb:破損までの累積エネルギ(J)とすると、
Eb = ∫F・L・N (J) Eb=寿命エネルギと言う見方が出来る。
ここで荷重Fをp水準に振って疲労試験を実施すると破損までの繰り返し数Nがp個取得できる。
x軸:繰り返し数N、y軸:応力Sに取り、横軸を対数スケールにしてp個のプロットから現れる傾きをλとする。
実際に機械が稼働している時の実働荷重Fr、及び変位Lrは時々刻々変動するので、
Fr(t):実働荷重(N)、Lr(t):変位(m)、Er:累積エネルギ゙(J)とすると、以下の関係がある。
Er = ∫(Fr(t) / F)λ・Lr(t) dt Er=予備疲労試験時の荷重Fを基準にした累積疲労エネルギという意味合いである。
ここで、累積疲労エネルギErが寿命エネルギ゙Ebに到達した時刻tを寿命とする。
本報では寿命エネルギE = H・Fv2と置いており、これは、
E = (F / L)・Fv2 と書き換えられるが、F、L、及びFvは上記の予備疲労試験時に判明する。
これは、フックの変形の法則が成り立つ=塑性変形域に入る限界力を知るという意味である。