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Tofu , only for vegitalians

 

To-fu(トウフー)、言わずもがなの豆腐のことである。

渡米前の部署が豆腐関連の仕事をしていたこともあり、

アメリカで豆腐が実にメジャーな食べ物で、

かつその製造技術も非常に進歩したものであることは耳にしていた。

実際渡米してみると、何処のスーパーマーケットでも

豆腐を見つけることができるし、値段はやや高いものの($1.5〜2.0/パック)

日本の平均的な豆腐より大豆の香りが高く美味しく感じる。

 

では実際にアメリカ人にとって豆腐とはどういう食べ物なのだろうか?

かのヒラリークリントンが豆腐だけはどうやってもおいしく食べられなかった、と

言ったらしいが、僕の知る限りのアメリカ人(もしくは非アジア人)の

感想も似たり寄ったりである。

この国の豆腐の需要の大半は異常に数の多いベジタリアン(菜食主義者)に

よるものだと断言できる。

 

卑近な例で申し訳無いが、2つばかり実例がある。

 

一つは Earth Food という名の大学のカフェテリアにある。

名前からも想像できるように、ここはベジタリアンの為のカフェテリアであるが、

生徒の自主運営による為か値段が非常に安く、非ベジタリアンの客も多い。

そして彼らの提供するメインディッシュの1/2は豆腐系メニューである。

豆腐ラザニア、豆腐ポットパイ、豆腐サワー&スイート、ラビオリ&豆腐 などなど

日本でもまずお目にかからない珍メニューのオンパレード。

僕のざっとした記憶ではメインディっシュになりうる豆腐料理は

マーボ豆腐くらいしか出て来ないが、挽肉が必要なこの料理は

Earth Food ではもちろん却下である。

我が同僚達も毎日のようにここを利用しているが、

ベジタリアンでもない彼らは食べるたびに、味が無いだの、

こんなことをわざわざしてプロテインを取る必要は無いだの

文句ばっかり垂れている。

そんなこと言われても、日本人で豆腐をたんぱく質源だと

強く意識している人間が多くいる訳も無く、答えようが無い。

 

もう一つの例は Bread&Circus という健康こだわり派の為の

スーパーマーケット。健康と言えば日本食と言うわけでもなかろうが

ここでは各種の日本料理食材が手に入る。

醤油の量り売りにはさすがビックリさせられた。

余談だがここで売られている味噌は、この近隣の街の

味噌工房で作られており、そこでは機械化以前の伝統的な手法で

未だに味噌を仕込んでいる為、信じられないくらいおいしい。

間違い無く日本でもトップランクの味噌として販売できると思う。

・・・・・

さて、このスーパーはどちらかと言えば全てが他の大型スーパーに比べれば

割高で(なんせ売りが無農薬などなので)、纏め買いをするとちょっと

出費がかさむのだが、唯一豆腐だけは大型スーパーの2/3の値段で

同じ銘柄のものが手に入る。客層が客層なだけに相対的に需要が高く、

値段を下げられるのだと想像している。

レジで前に並んだアメリカ人らしからぬ痩せたおばさんが、

山のような野菜と豆類、そしてビタミン剤などの栄養補強錠剤を

どっちゃり買い込んでいるのが当たり前の店ならではの

価格設定である。

 

というわけで、豆腐はベジタリアンの福音、というのが

ザンネンながら僕の生活する範囲での事実のようである。

 

最後に、同室のドイツ人が豆腐にささげた言葉、

湯豆腐を食べて曰く、

”豆腐が湯の中を泳いでいるのを、箸で捕まえ、かつ崩さないように食べる。

かつてこれほどまでに拷問として最適な食事はヨーロッパに存在したことが無い。”

 

 

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