ニューイングランドの四季にまつわる話
その1 紅葉(foliage)
当ページの写真ギャラリーや、折々の管理人のコメントを見ていただければ分かると思うが
ニューイングランド地方(アメリカ北東部)の紅葉は、まさに素晴らしいの一言に尽きる。
かつて駐日大使であったライシャワー氏が、”世界一の紅葉”と称した話を目にしたことがあるが
実際に紅葉の時期になると全米からだけでなく、ヨーロッパからの観光客も多く、
ホテルやイン、B&Bなどはあっという間に一杯になってしまう。
こういう場所で二度も秋を過ごせたのも何かの縁ということで、
何故、ニューイングランドの紅葉がそれほど鮮やかなのかを知る助けになればと
少し紅葉について調べてみた。
まず、紅葉を見るには、紅葉をする木が無ければ始まらない。
その点、この地は世界最大のメイプルシロップの生産地であり、楓の木に事欠かない。
実際にこの地にヨーロッパからの移民がやってきた時に、家を建てたり、暖房用に
木を刈り尽くしてしまった。元々楓が多かったらしいが、この楓、シロップは取れるは
建材としても一級品、しかも成長が比較的早いと言うことで、どんどん植林された。
結果的に巨大な楓の森があちこちに出来上がり、鮮やかな秋の風景を見せるようになった。
紅葉を見てまわっていると、場所によって色が違うのに気付かされるが、これは
それぞれ植林の時期が違う、つまり木の年齢が違うと言うのが主たる理由らしい。
次に、この地方の気候が紅葉に最適と言うのが挙げられる。
紅葉のメカニズムは、極々単純に言うと、春から夏にかけて光合成の為に葉に供給されている
クロロフィル(葉を緑に見せる)が、秋になり太陽光線の減少に伴い、どんどん量が減り
結果的に、葉が脱色していくことによる。つまり色が変わると言うよりは、色がなくなっていく。
劇的に木々を紅葉させるには、比較的暖かい昼間の気温、と寒い夜間の気温が理想的となる。
ただし夜間の気温が氷点下になってしまうと、紅葉の赤色に貢献する主物質アントシアニンの
生成が抑えられるので、マイナスになってしまう。
いずれにせよ、この温度パターンにより、全ての木々が同時に冬が近いことを知ることになり
一斉に色を変え始めるので、”まるで山が燃えるような”紅葉を見ることが出きる。
ニューイングランドの秋は一般的に、気温が昼10-15℃、夜5℃程度と非常に理想的であり、
また一年を通じて比較的風が強い地域にもかかわらず、紅葉のシーズンに葉を落とすような
強い風が吹かないという利点もある。加えて、冬に降る雪の雪解け水が、春に広葉樹たちに
最適な湿度を土壌にもたらすと言う効果も見逃せない。
余談であるが、日本も特に北の方は非常に紅葉に適していることが分かる。
ただし、植林されているのが杉ばかり、ということを除けばであるが。
ということで、以下にマトメ代わりに紅葉にダメージを与える気候パターンを並べてみる。
紅葉の時期(直前を含む)が暖かすぎる場合:緑の抜けが遅く色の変化が甘いまま散ってしまう。
紅葉の時期の夜間の気温が氷点下を割る場合:霜によりアントシアニンの生成が抑えられ赤みが弱くなる。
春の訪れが遅い(雪解けが遅い):紅葉が遅れる。
春から夏にかけての水不足、猛暑:紅葉せずに葉を落とす木が増える。
紅葉の時期の強風:紅葉し始めた葉=木から見捨てられた葉、なので簡単に散ってしまう。
<注>管理人は、気象学も林学も全くの素人なんで、細かい間違いなどあれば是非指摘してください。