仕事あるいは会社への忠誠心
先日、会社を通じて某健康調査会社から、こころの健康診断、なるものが送られてきた。
内容は入社試験などで近年有名なSPIなどと同様に、大量の質問に答えさせることにより、
仕事に対する姿勢や精神的疲労の蓄積度などを測ろうというものであった。
仕事に関する質問に答えると言っても、今の僕の環境(海外の大学で客員研究員)というものを
反映させても仕方が無いので、薄れゆく記憶を手繰りながら
会社で働いていた時の思いを参考に質問に答えていった。
海外までわざわざ送ってくれるなんて凄いな、と思いつつ、エアメールで返送して数週間後、
診断結果が送られてきた。
診断結果は多岐に渡っているのでもちろん詳細は割愛するが、
僕の職場領域での診断結果の中に、自分でオッと思わされた結果がいくつかあった。
帰属意識と仕事意欲の他に比べての異常な低さと、負担感の無さの高さである。
負担感に関してはやはりリアルタイムでなければ上手く反映できず、
今の一研究員としての立場が色濃く反映されているのかな、と思うが
帰属意識と仕事意欲のセットでの低さには我ながら少し寒く思うところがある。
なぜ、この2点が気になるのか?には理由がある。
アメリカに来てから、いろいろな場面でさまざまな人たちからアメリカで職を探さないの?と
問われたことがある。これらの質問はいつも、自分が日本の会社から派遣されている
客員研究員であることを説明した後に現れる。
質問の背景にはもちろん、アメリカで働く(生活する)方が日本で働く(生活する)よりも良いに決まっている、
という、アメリカ人特有の自意識が垣間見えたりもするのだが、
会社のお金で留学”させてもらっている”僕の立場を理解した上での
この質問はちょっと日本人の保守的な発想からは理解できない。
アメリカでは日本とは比べ物にならないほど転職が多いのは有名な話しだが、
件の質問の件を含めて、就職間際の友人に訳を尋ねてみたことがある。
彼の答えは、「アメリカでは企業は従業員を全く尊重しない、
その見かえりとして従業員も会社に対する忠誠心などこれっぽっちも持ち合わせていない。
最近になって会社は従業員にもっと愛社精神を持って一緒に頑張ろうと従業員に
呼びかけているが、実情が伴っていないのだから効くわけが無い。」
というものであった。
最近になって会社は従業員にもっと愛社精神を持って一緒に頑張ろうと従業員に
呼びかけているが、実情が伴っていないのだから効くわけが無い。
そりゃ、こういうことが常識なっているなら、マシな生活を手に入れるために
さっさと日本の会社に見切りをつけてアメリカでの職探しをしなさい、
というアドバイスも出てくるよな、と納得させてもらった。
事実僕の中には、日本を離れる前も一年経った今も、会社を辞めてアメリカで”夢を探そう!?”なんて
思いはこれっぽちもない。
今の研究が会社に直接的な利益をもたらす望みは低いが、
留学の成果を評価できるものさしがあるとすれば、それを僕を送り出した会社の中にしか
無いわけで、それを確かめずに別の道を選ぶなどナンセンス極まりないとも思う。
もっともこの意見とて、動機付けは会社への忠誠心から出ているものではなく
きわめて利己的な部分から出ているのが難点ではある。
恐らくこの診断結果に現れた僕の会社や仕事への思いは僕の未来を暗示している可能性はあるし、
アメリカ人からの無責任が問いかけがいつか現実味を帯びる日が来るかもしれない。
一つだけハッキリしているのは、たとえ決断の日がやってきたとしても
今まで同様あまり悩むことなくスパッと割り切れるだけの理由や能力を
自分の中で培っておかなければならないということか・・・