プロジェクト・エデン特別篇

     「帝国最大の作戦」

 

                                       第九章

 

  「タコラを愛に殉じさせてやるのだ!」

  帝国軍最高司令官フェンリル将軍の命令が、全軍の通信回線を稲妻

のように駆け巡った。

  と同時にあらゆる指揮チャンネルが解放され、作戦開始を伝える情報

が洪水となって、本部から前線、前線から本部へと流れる。

  たちまち、作戦指令本部は戦争のような喧燥を見せはじめた。

  航空レーダーの前に座るオペレーターたちは、ミレニアム帝都周辺に

ある各航空基地への連絡を担当している。

  「第22、第23、第24航空騎兵隊はただちに離陸せよ!」

  「こちら、ヨーツンハイム基地。全機、離陸します!」

  「本部了解。現場上空まで達したら、命令あるまで待機せよ」

  「こちら、ムスペルハイム基地。武装についての指示をどうぞ!」

  「多弾頭ロケットの使用を許可する。第111戦術航空騎兵隊は基地に

戻り、第1級戦術兵装に切り替えるように!」

  本部からは矢継ぎ早に指示が出された。

  また別のオペレーターは地上部隊との連絡を処理している。

  「第19機動警備隊は、第4重装甲親衛隊と合流せよ」

  「第4重装甲親衛隊より本部。幹線道路ルートYが破壊されており、合

流までに30分はかかってしまう」

  「了解。第3工務分隊を修理に向かわせる。・・・第3工務分隊、どうぞ!」

  オペレーターは同時にいくつもの連絡回線を受け持ち、それぞれを迅

速に処理していかなければならなかった。

  さらに別の席には最前線からの情報がリアルタイムで送られてきている。

  「第8強行偵察隊から、本部へ。タコラは以前、熟睡中!」

  「了解。絶対に起こさないようにしてください」

  「ど、どのようにするんでありますか?」

  「子守り歌でも歌っていてください!」

  「りょ、了解…。・・・・ぼうや〜、よいこだ。ねんねしな〜」

  スピーカーから第8強行偵察隊を指揮するギャラハー大尉の歌声が流

れる。ヤケクソにも聞こえるが、本部からの命令は絶対であった。

  「ねんねんころりよ」ではなく、「ぼうやよいこだ」という歌は30世紀世界

ではミレニアム帝国公式子守り歌とされている。その歌詞の出典は明ら

かではないが、誰もの脳裏に刻まれたメロディーであった。

  かくして、タコラを愛に殉じさせるための総攻撃の準備は着々と進めら

れていく。

  そんな指令センターの片隅で憮然としている二人がいた。

  スチャラカ科学者コンビのシンドゥリ博士とペイオス助教授である。

  二人にとってみれば、「タコラ」は彼らの研究が生み出した貴重な成果

であり、バイオテクノロジーの奇跡であった。

  より深い研究と改良の対象として、有意義に活用していきたい・・・!

  その考えはやがて「タコラを殺させてはならない」という気持ちに発展し、

タコラの生みの親としての愛に変化しつつあった。

  ここにもまた「タコ」への愛に取り憑かれた人間の姿があった…。

  「博士…」

  ペイオスが心配そうな声でシンドゥリの顔を見る。

  「大丈夫だ。私たちのタコラは負けやしない!」

  シンドゥリが自信を持って言いきった。その表情には、心の底からそう

思っているのがありありと表れている。

  「そうですよね」

  ペイオスの顔がパッと明るくなる。

  「君らしくもない。あのタコラは私たちは精根込めたものじゃないか」

  シンドゥリが子供を諭すように笑う。

  「すみません。ちょっと、心配になってしまって…」

  ペイオスは照れたような表情で、自分の頭をコツンと叩いた。

  「科学は偉大だ。その科学の結晶として生み出されたタコラに、もしも

のことなど、あろうはずもない」

  「ええ。言われてみれば、その通りですね」

  「心配するな。私たちの作ったタコラを信じようじゃないか…」

  「博士…」

  二人はしっかりと手を握り合う。心なしか、その目はうるんでいた。

  自分たちの言葉に陶酔してしまっているのが分かる。

  だが、それが大いなる勘違いであり、すでに所期の目的を見失った

暴走モードに突入していることを本人たちは、まったく自覚していない。

  「シンドゥリ博士!」

  自分たちの世界に浸っている科学者コンビのところへ、主席副官の

ヘルモーズが走り寄ってきた。

  「・・・何か、用ですかな?」

  シンドゥリが振り向き、銀縁眼鏡をクイとかけ直す。一つ一つの動作の

中に「自分は偉いんだ」というナルシズムを見ることができる。

  「はい、実は」

  ヘルモーズはその傲慢な態度に少しムッとしながらも、用件に入る。

  「…博士から、あのタコラの弱点を教えていただきたいのです」

  「弱点だと・・・?」

  シンドゥリのこめかみにピクリと青筋が浮いた。

  「ええ。どこを攻撃すれば効果的なのか、何に弱いのかなどです」

  「・・・そんなものはない」

  「ないわけないでしょう。熱に弱いとか・・・」

  ぶっきらぼうな回答に、ヘルモーズはさらにムッとしつつ食い下がる。

  「あれだけの高熱火炎を吐きまくっているのに、熱に弱い訳がない」

  「じゃあ、塩水を浴びると溶けてしまうとか・・・」

  「ナメクジじゃあるまいし…。だいたいタコは本来、海の中で生きている

生物だぞ。それが塩水に溶けて、どうするんじゃい!」

  「では、太陽光線を浴びると灰になってしまうとか・・・」

  「だったら、とっくの昔に灰になっとるわい!」

  シンドウリが指令センターの大型ディスプレイを指差しながら怒鳴る。

  そこにはポカポカとした日差しの中で安眠しているタコラが映っていた。

  「じゃあ、タコラの弱点はっ?」

  「ない。それとも、『タコラ脳』や『タコラ袋』にスペシウム光線を打ち込め

とでも言ってほしいのか?」

  シンドゥリがマニアックなことを言いながら、フフンと鼻を鳴らす。

  1970年代に「ウルトラ怪獣解剖図鑑」を読んだ者にしかわからない内容

なのだが、2734年に発掘されたタイムカプセル(古いなぁ)から発見された

同文献は、30世紀の生物学者に「幻のバイブル」とされていた。

  「訳わからんことを言ってないで、タコラの弱点を!」

  ヘルモーズの脳血管はすでにプチプチ言っている。

  「ないと言ったら、ない。絶大なパワー、凄まじい生命力がタコラのウリな

のだよ。そんじょそこらの軍隊に負けるようなものではない!」

  「な、何考えてんだ、あんたは!」

  「ま、少なくとも、これまでロクに戦ったこともない帝国の軍隊には、絶対

に負けませんな!」

  ハッハッハ・・・と高笑いするシンドゥリ。

  それを見た瞬間、ヘルモーズは頭のどこかでプチッという音を聞いた。

  (こんなアホに聞こうと思った俺が間違っていた・・・)

  ヘルモーズはハァと大きくため息をついて、近くにいた警備隊員を呼ぶ。

  屈強な警備隊員がタッと駆け寄ってきて、ヘルモーズに敬礼する。

  「主席副官、何か?」

  「シンドゥリ博士はお疲れのようだ。別室に下がってもらえ」

  警備隊員に、ヘルモーズはあごでシンドゥリを指し示す。  

  「な、何を言う。私は別に疲れてなんかおらん!」

  シンドゥリがビックリして、怒鳴り返す。

  二人の様子に、警備隊員は訳もわからずにキョトンとするばかりだ。

  「あ、あの…、ヘルモーズ主席副官?」

  「黙って、このジジイを何処かに連れて行ってくれ!」

  八つ当たりのようにヘルモーズが怒鳴った。

  その一言を聞いたシンドゥリが顔を真っ赤にして、怒る。

  「な、何だと。この私はここでタコラの活躍を見守る義務が…!」

  「いいから、さっさと連れて行け!」

  ヘルモーズの指示に、警備隊員がガッキとシンドゥリを羽交い締めに

して、外へと連れ出そうとする。

  「な、何をする???」

  わめくシンドゥリを引きずるように、警備隊員は外へと向かった。

  「は、博士に何をするんです?」

  慌ててペイオスがシンドゥリを助けようと駆け寄った。

  「その女もここから、追い出してしまえ!」

  ヘルモーズの言葉に別の警備隊員が駆け寄り、同じようにペイオスを

指令センターの外へと連れ出していくのだった。

  「!!!!!!」

  遠ざかるわめき声を聞きながら、ヘルモーズはもう一度大きなため息

をつくのだった…。

 

  同じ頃、タコラに肉迫する距離にある第8強行偵察隊・・・。

  「お、おい…。悪いが、交代してくれ・・・」

  息を切らしながら、隊長を務めるギャラハー大尉は副官のハイム少尉

に言った。声が完全にしわがれている。

  「え? わ、私がですか?」

  声をかけられたハイム少尉は露骨に厭な顔をした。

  「頼む…」

  ギャラハーは青ざめた顔で、両手を合わせた。

  「そ、そんな私は音痴なんです。隊長がやってくださいよ…」

  「うるさい! 命令だ!!」

  「わ、わかりました」

  仕方ないという顔で立ち上がったハイムは、両手を合わせて腹に当てた。

  そして・・・。

  「ぼうや〜、よいこだ〜、ねんねしな〜」

  と恥ずかしそうに顔を赤らめながら、子守り歌を歌い出した。

  第8強行偵察隊はタコラに対する最前線に位置し、攻撃準備が完了する

まで、タコラを眠らせておくという重要任務に就いているのである。

  その対応策とは「子守り歌を歌い続けること」であった…。

  「ほほぉ、なかなかうまいじゃないか…」

  息を整えながら、ギャラハーが笑う。当のギャラハーはすでに1時間以上

歌いっぱなしだったために、完全に喉をやられてしまっていた。

  「隊長ぉぉ、私はこんなのイヤですよぉ…」

  「余計なことを言わんで、歌ってろ!」

  「・・・・ぼうや〜、よいこだ〜!」

  ハイムはやけくそとばかりに声をはりあげる。

  その歌声を聞きながら、ギャラハーは電子双眼鏡でタコラを観察する。

  タコラはうららかな日差しの中で、すっかり安眠モードであった。

  安心したギャラハーは周囲の状況に目を移した。すでに陸上戦力である

機動警備隊の装甲車両や戦闘モービルなどが展開を済ませつつある。

  上空にもすでに幾つかの航空騎兵隊が到達し、消音飛行を続けていた。

  総攻撃まで、もうあと少しである…。

  それまでにタコラが目覚めなければ、こちらの勝利は確実だ・・・。

  「ハイム、心を込めて歌うんだぞ!」

  ギャラハーは最後の正念場とばかりに、ハイムを励ました。

  その時・・・!

  どこからともなく、子守り歌とは違うメロディーが聞こえてきた。

  「な、なんだ?」

  ギャラハーは幻聴かと思って、耳を叩いた。

  ・・・・だが、聞こえる。聞こえてくる。

  それはどんどん大きくなり、はっきりと聞こえるようになってきた。

  「タコラ〜やっ! タコラ〜やっ!タコラ〜!」

  不気味な呪文のような歌詞であり、メロディーであった。

  お経のようにも聞こえるが、30世紀世界に仏教などは存在しない。

  「な、な、何なんだっ???」

  驚き慌てるギャラハーの目に、タコラの周りに大勢の人影が見えた。

  それは異様な白装束に身をつつんだ人の集団であった。

  「タコラ〜やっ! タコラ〜やっ! タコラ〜やっ!」

  白装束の一団は不気味な歌を歌いながら、タコラの周りで踊っている。

  ドンツク・・・ドンツク・・・ドンツク・・・ドンツク・・・・!

  手にした太鼓を打ち叩き、人々は不気味な舞いを披露し続けている。

  それと共に、「タコラ〜やっ!」という例の歌も大きくなっていく。

  「た、隊長! 何なんです、あいつらは?」

  「わ、わからん!」

  ハイムの脅えたような声も理解できるが、ギャラハーとて混乱の極みに

達しているのだ。そうとしか答えられない。

  「タコラ〜やっ! タコラ〜やっ!」

  どんどん大きくなる歌声。まるで年末恒例の第九大合唱のようだ。

  「こ、このままではいかん。やつらに負けるなっ!」

  ギャラハーが叫ぶ。

  このままの大合唱が続けば、タコラの安眠妨害になるのは明白だった。

  「ま、負けるなって言ったって、そんなの無理ですよ!」

  「大丈夫だ」

  「な、何がどう大丈夫なんですか?」

  「まかせろ、俺も歌う!」

  俺も歌うとかいう問題ではないと思うのだが、とりあえずギャラハーの頭

に浮かんだのは、それだけだったらしい。

  「ぼうや〜、よいこだ〜、ねんねしな〜!」

  ギャラハーとハイムの二人が必死に歌う。だが、

  「タコラ〜やっ! タコラ〜やっ!」

  白装束集団も盛り上がってきたらしく、なおも元気に歌っている。

  どう考えても、音量に天と地ほどの差があるのは明らかであった。

  「うおおおお、全然勝てないじゃないかっっ!」

  ギャラハーは悔しさに拳を握り締めながら、叫んだ。

  とは言え・・・、そんなことは最初から分かっていたことである。

  何しろ、相手の白装束集団は数百人の規模なのだから・・・。

  「くそぉ・・・、あいつら、何者だぁ?」

  悔し涙を流しながら見つめる目に、白装束集団が掲げる旗が目に入る。

  「タ、タコラ教団だとぉぉぉぉ!」

  そう。翻る旗には可愛いタコラの似顔絵が描かれ、それを取り巻くように

でっかく「タコラ教団」の文字が躍っていたのである。

  「タ、タコラ教団なんて、ありましたか?」

  横にいるハイムがびっくりしたようにギャラハーを見る。

  ギャラハーは黙って首を振った。そんな教団の存在など聞いたこともない。

  「ど、どういうことなんでしょう?」

  「知るかっ!」

  ギャラハーは吐き捨てるように言った。

 

  神聖なる皇帝こそが神であり、唯一信仰の対象となっているミレニアム

帝国に宗教など存在してはならない。

  宗教が多様化し、複雑化すればするほど、争いの火種を生み出す。

  絶対かつ恒久平和を提唱するミレニアム帝国において、真っ先に追放

されたのが宗教であった。そして事実、争いは極端に減少した。

  ただし、一部の貴族が治める地方自治区において、地下潜行型の宗教

は確かに存在している。そこまで頑強に取り締まってしまうと、今度は別の

形での宗教戦争を招く結果になるからだ。

  小規模ならともかく、大規模かつ広範囲に及んだ場合、宗教はその存在

だけで害を招くというのが、ミレニアム帝国の方針であった。

  しかし、統制上の理由で小規模の宗教についても帝国軍では完全に把

握しているはずである。だが、「タコラ教」などは存在していなかった。

  だいたい、タコラが出現したのは、つい先日のことである。

  「タコラ教」なるものが存在すること自体、絶対におかしいのだ!

 

  そうこうしている内に、集団の中に巨大なスピーカーを搭載した大型ワゴ

ンが出現した。それを取り巻くように白装束の集団がひれ伏した。

  そして、ワゴン車の上にグングンと昇降型のステージが現れた。

  パアッとライトがコンサートのように点り、その中央にゆっくりと一人の男が

登場する。長く垂れた髪、やせ細った体、形の良いあご鬚、まるで西暦を

生み出した旧世界最大の宗教の神祖のようである。

  たしか名を「イエス」と言っただろうか・・・。

  白いローブのような服をまとったその男は、ゆっくりと手を広げて言った。

  「人々よ、悔い改める時が来た。今、最後の審判が下ろうとしている!」

  「おおおおおおおお」

  周りにいる人々が一斉に歓声を上げた。

  「天はおごれる人間を罰するために、聖なる御使いを向けられた」

  「おおおおおおおお」

  「このタコラこそ、世界を浄化するために遣わされた天使なのだ!」

  「おおおおおおおおお」

  人々が感極まったように雄叫びを上げる。

  どうやら「タコラ教」とは、怪獣タコラを聖なる使徒とし、世界浄化の時

が来たと勘違いしている集団のようであった。

  「さあ、人々よ。歌うのだ! われらが神の使徒、タコラを崇める歌を!」

  教祖と思われる男が高らかに叫び、自分から歌い始める。

  「タコラ〜やっ! タコラ〜やっ!」

  それに合わせるように、再び信者集団の大合唱が始まった。

  「タコラ〜やっ! タコラ〜やっ! タコラ〜やっ!」

  声は割れんばかりに大きくなり、さらにスピーカーからも増幅された歌声

が大音量で鳴り響いた。

  ドンツク・・・ドンツク・・・ドンツク・・・ドンツク・・・!

  不気味な呪文のような合唱に合わせて、太鼓も打ち鳴らされる!

  騒音公害、近所迷惑、傍若無人、安眠妨害!

  まさにタコラ総攻撃を前にして、とんでもない事態となってしまった。

 

  ミレニアム帝国統帥府地下、緊急対策本部。

  まさに総攻撃の準備が完了を迎えようとしていた時に、その異変は急報

という形で最前線から飛び込んできた。

  「第8強行偵察隊より、緊急連絡!」

  オペレーターが叫び、その電文がヘルモーズ主席副官を通して、フェン

リル将軍の元へ届けられた。

  それを一読した途端、フェンリルが激怒する。

  「な、なんだ! この『タコラ教』というのはっっ?」

  「不明です。おそらく、何かに血迷った宗教団体ではないかと…」

  「まったく、何を考えておるのだ!」

  「いずれにせよ。集団はタコラの周りで歌い、踊り狂っています。このまま

では総攻撃をかけることができません」

  「ばか者どもめ!早急に解散させてしまうのだ!」

  「そうしたいのですが、下手をするとタコラが起きてしまうのではないかと」

  「何を言っておる。どうせ、今のようなバカ騒ぎを続けていれば、さすが

のタコラも安眠妨害で起きてしまうわい!」

  「た、たしかに・・・!」

  ヘルモーズが額に冷や汗を浮かべた。

  タコラが起きてしまえば、総攻撃をかけるチャンスを失ってしまう。

  そして、熟睡してたところを起こされたタコラは・・・・。

  「しょ、将軍。タコラは低血圧なのでしょうか?」

  ヘルモーズがマジメな顔で尋ねる。とても大事なことであった。

  「うむ、わからんが・・・、その可能性はある。もし、とてつもなく寝起きの

悪い奴だったとしたら・・・・、とんでもないことになるぞ!」

  フェンリルの顔も心なしか青ざめた。

  「た、ただちに強制排除いたします!」

  ヘルモーズが敬礼し、あわてたように指揮デスクへと走っていく。

  「まったく、何ということだ・・・」

  フェンリルはブツブツと愚痴った。

  ようやく総攻撃をかけようという時になって、また大問題の発生である。

  (やっぱり、俺は不幸なんだ・・・・)

  ぼんやりとそう思わずにはいられないフェンリルであった。

 

                                                                           つづく