Update 99/08/13

ぶらっと茨城


ぶらっと3  波崎町に出現した巨大な風車



 1999年が始まってから10日が過ぎ,正月気分も抜けてきた頃,新聞を見ていると,茨城欄に次の記事が載っていました。 「パワー日本一 風力発電始動」 「波崎町 景勝地の新名所に」

 記事を読むと,建設したのは,風力発電会社「エコ・パワー」などが出資して設立した「波崎風力発電研究所」で,この風力発電所は,昨年(1998年)暮れから営業運転を始めたらしく,塔の高さは46メートル,羽の長さは24メートルと,かなり大きい。

 以前から風力発電について,ちょっと興味を持っていた私は,「これは一度見ておかねば・・・」と早速,ぶらっと茨城探検隊を召集したのでした(・・・って何人もいるのか(笑))。

 さて、一口に波崎町と言いますが,茨城の最南端に位置するこの町はとにかく,遠いんです。私の中では波崎町のことを「舳先(へさき)町」と呼んでいる位,ずうっと利根川に沿って南東に伸びています。映画「タイタニック」でディカプリオが演じたタイタニック号の舳先での名シーンをここでも出来るくらい,波崎町の先端は舳先の形をしています。

 場所は波崎町の鹿島灘沿いとしか書かれていませんでしたが,46メートルもある建物なので,波崎のどこかの海岸から見渡せばすぐ見つかるだろうからその辺は心配いりません。

 それよりもどういうルートで波崎町の海岸まで行くかが問題です。以前にも波崎町に行ったことはありましたが,そのときは,以前住んでいた,ひたちなか市からR51〜R124を通るルートであり,今回は守谷からです。地図を広げ,とにかく利根川沿いを通って行こうと決めました。

 ナビの到着点を波崎町の海岸に設定し,出てきたルートを見てぎょっとしました。設定を「有料道路通行可」にしていたこともあると思いますが,谷和原インターから高速で千代田石岡ICまで行き,そこからまっすぐ波崎町まで南東に下っていくコースをはじき出しました。

 まさか、私が考えもしなかったコースをナビ君がひねり出したので一瞬焦りましたが,ナビのルートを無視し,利根川沿いのルートを強硬に延々と突っ走りました。

 途中休憩を含め,2時間半ぐらいたった頃,波崎町に入りました。とにかく海岸に行こうと思い,海岸沿いの道路を走りました。道路の脇を砂防林が続き,海岸は見えませんでしたが,とにかくその日は天気が良く,海のにおいが五感を刺激し気分壮快です。

 しばらく海岸線の道路を道なりに行くと,海岸への入り口を見つけたので,そこを左に曲がり車を止めました。久しぶりに青く光る海を見て感激しながら,南の方を向くと,思った通り,大きな風車が2基見えました。ちょっと離れていましたが,それでも、周りに何もない海岸からにょきっと2本伸びているので,ここからでも相当大きなものであることが分かります。

   
この写真からでは迫力が伝わりませんが                        後ろから見たところ

 再び車に乗り,しばらく車を走らせると,今度は突然前を走る道路上から風車が見えてきたので,おもわず、「おおっ!」と声が出てしまいました。風車は「シーサイドパーク」と呼ばれる海の見える駐車場のようなところにあり,そのシーサイドパークの両端に1基づつ立っています。駐車場に車を停め,外に出ると,海風が強く吹いており少し肌寒く感じました。

 とにかく高さ46メートルの風車は大きく迫力があります。しかも,強い風に負けじと三枚の羽が「ブォン・・ブォン」と音を出して廻っているのには驚きました。この場所では年間平均6.3メートルの風が吹くそうで,風車は風力や風速などを自動的に感知して向きを変えるとのことです。

 なんでもこの2基の風力発電で年間800世帯の電力がまかなえる計算になるとのことで,東京電力に売電する形で利益を得る仕組みになっているそうです(2/4売電開始)。

 シーサイドパークには,海を一望できるちょっとした高台があり、そこに登って,海の青さを堪能しました。久々にすがすがしい気分になりました。ここは本当に行ってみる価値ありです。(つづく)

   
遠くから見てもこの通り目立ちます                      高台から見た鹿島灘の青い海
  

風力発電機の正体は?



 この、日本一の発電容量を誇る風力発電機ですが,近くにそれらしい説明書きや名称等を書いた看板などは見あたらないようです。現地に行けば何か情報が得られるかなと思っていましたが,近くに柵で囲まれた小さな制御施設が有るだけです。

 いわゆるベンチャー企業による風力発電施設ですから,利益を出すことが目的であり、遊びでやっているものではないことは分かります。風力発電といえば,昔から環境に優しいクリーンな電力供給の一手段として有望視されてきつつも,現実問題として,発電コストの問題が大きく壁となって今だ実験中で,事業化は夢のまた夢,というような,イメージを私は抱いてきました。

 また、電力会社への売電に関して,電力会社側が,風頼みの不安定な電源環境では電力系統の周波数に変動をきたし,マイコンチップ内蔵の電化製品に悪影響を及ぼすのではないかという懸念から,買電に難色を示してきた経緯もあったと聞きます。

 ですが,おそらく風力発電と聞いて,悪いイメージを持つ人はあまりいないのではないでしょうか。しかも、こうして風力発電で利益を出そうとがんばっている企業が夢ではなく現実に出てきているのです。そういう意味でも,看板なり付随施設の充実を図るなりして,国が新エネルギーの導入をする企業に助成金を払っていることや,現在の我が国の風力発電事情を知ってもらうことは,国にとっても企業にとってもメリットが大きいと思うのですが。

 と、ちょっと偉そうなことを書いてきましたが,まだ出来たばっかりで,しかも,最近(2/4),売電開始ということですので,もちろん,全てはこれからなんでしょうけど。

 さて、すでに述べたとおり,現地は発電施設に対する説明表示等一切なしの状態ですが,手がかりがないわけではありません。写真には写っていませんが,回転している羽の軸のところに「N・E・G MICON」とアルファベットで書かれているのが見えました。最初は何のことか分かりませんでしたが,新聞に風力発電機はデンマーク製と書かれていたことを思い出し,きっと会社名か,製品名で有ろうと思われます。

 後で知ったことですが,デンマークにMICON(ミーコン)社という風力発電機会社があり,そこから購入した発電機であるとのことです。

 なんでも、国策として,原子力発電を行っていないデンマークでは,国の電力消費量の一割を風力発電でまかなっており,今や世界的な風力発電先進国であることを知り,大変驚きました。MICON社は風力発電機の輸出国として世界のトップシェアを誇るデンマークにあって,3大メーカーの一つとして活躍しているそうです。



風力発電ふたたび

 5月のとある日,新聞を見ていると次の記事が目に飛び込んできました。「風力発電に追い風」「電力会社,長期契約で買い取り」。記事の内容は,電力会社が地球温暖化防止につながる風力発電の普及を後押しするため,1998年4月から風力発電で起こした電力を10年以上の長期契約で優遇して買い取る制度を新設したことがきっかけで,風力発電売電ビジネスに本格参入する企業が増えている事を伝えており,写真には波崎町の風力発電所が写っています。

 今年の初め頃,風車を見に行ってから,4ヶ月が経ちました。そういえば,予告で次回は波崎ロラン局について書くと言っていながら,4ヶ月も経ってしまいました(すみません)。と,言うわけで,またまた遠い旅路の出発となりました。ホントに好きですねぇ,遠いのに(笑)。

 今回もナビ君は,前回と同様,高速を使い,千代田石岡ICから降りてひたすら永遠に突っ走れとの指示を私にくれました。そのルートは遠回りでないかい?と思いましたが,前回とは違うルートで行きたいと思ったので,従うことにしました。

 今回は2回目という事もあり,また2時間以上掛かることもあらかじめ覚悟してマイペースで行ったので,それほど疲れもせずに波崎町に入りました。そして,前回とは違ったアングルで風車を撮ろうと思い,シーサイドパークまで車を走らせました。

 10数台停められる駐車場は満杯で,道路側まで車があふれています。そのうち半分はサーフィンをする人の駐車場になっている様です。

 今回は風車を下から見上げる形で何枚か撮りましたが,晴れているものの,薄く雲がかかっており,ちょっと残念です。

 さて、そろそろ移動しようと,車に戻ろうとしたところ,高台に上がる階段の手前になんと、以前にはなかった(はず)の看板が一枚立っているではないですか。




念願の看板が設置されていました


風力発電について

  この施設は,四季を通して強い風が吹く,波崎砂丘の気象条件を活かした 
 風力発電施設です。タワー2基の風力発電機は,年間約270万キロワット 
 時の電力を発電します。この量は一般家庭の消費電力の約800余世帯分に 
 相当します。                             
  また,クリーンエネルギーとして風力発電は,地球温暖化の原因となって 
 いる二酸化炭素の排出がありません。(風力発電で作られた1キロワット時 
 の電気は,二酸化炭素の発生量を1キログラム分防いだことになり,地球温 
 暖化の防止に役立ちます。)                      
  このタワーには赤い模様がありますが,航空法に基づき昼間時の航空機の 
 危険防止のため,赤色と白色の縞模様に染める様に決められています。その 
 ため、特別にデザインされたものです。(この風力発電は,デンマークのN 
 EG MICON社製アップウインド型1基600キロワットの能力で19 
 98年12月より稼働しています。)                  
  悩まされ続けてきた風にも、時代の風は電力として,立派に社会に貢献し 
 ます。今日も,季節の風に合わせて波崎の風車は,より大きな力となって回 
 り続けます。         
                    



 なるほど、この風車は煙突などに見られる赤と白の模様と同様,法律に基づいた色を基にデザインされたものであったわけですね。風車の最後に「この風力発電機は,通産省の「平成9年度新エネルギー事業者支援事業の認定を受けて建設されたものです。」と、但し書きが入っています。なんでも、国から発電所の建設費の三分の一が補助されるそうです。やはり,看板が出来たおかげで,風力発電の意義が理解でき,ぐっと訴えかけるものがあります。

 波崎町の風力電力がいくらで東京電力に買い取られているかは分かりませんが,他の風力発電が平均して1キロワット時当たり11円台で買い取られているとのことです。これは、各電力会社が保有する火力発電の9−10円台に比べて割高になっています。ですが現在,全国に波崎町の風車を越える発電容量の風車が続々と建設予定になっており,発電コストはこれからもどんどん安くなっていくことでしょう。

 ところで,これから夏にかけて雷の季節。雷が風車に落ちるなんて事にならなければよいのですが・・・。


     
曇っていて残念です                         支柱には人が入れるドアが見えます



波崎ロラン局って何?

 ところで、風力発電を見に行った帰りのこと,もう一つの目的である,波崎ロラン局に向かいました。そもそも,波崎ロラン局とは何なのか。ミニFMか,はたまた,こ洒落たアミューズメントパークか(そんなもん,波崎にあるんかいな,あっそういえば昔,ランズボローメイズ波崎って言う立体迷路施設ものがあったなぁ(笑))。地図で見つけたときは,意味が分からず,ちょっと、期待をしていきました。ナビはそろそろ、到着を告げています。ところがそれらしいものは見あたりません。

 とりあえず,砂浜へ向かう路地に車を停めて,近くを歩きました。すると,民家に紛れて,個人の駐車場ほどの広さの路地がちらりと見えたので,恐らくここだろうと思い,その路地に入りました。その路地は,路地と言うよりはあまりにも短く,直ぐ突き当たりになり,ぼろぼろにさびた引き戸式の門がありました。そして,その門の向こうには小さな建物が見え,今まで何故気がつかなかったのかと思うような長い鉄塔が建っています。よく見ると怪獣ブースカのような愛嬌のある形をしています。土日に行ったので休みなのか,人気もなくひっそりとしています。それにしても妙に長い間,使われていないような気がします。

 ロランとは,実は,( LOng RAnge Navigation )の略で,船舶や飛行機が今どこを移動しているかを確認するための長距離航行用援助施設であるそうです。ロラン局は200km〜400km毎に世界中に設置されており,2カ所のロラン局からパルス電波を飛行機側で受信し,その到達時間差を計算して,現在位置が分かるそうです。余り難しいことは分かりませんが,とにかくそういうことだそうです。つまり現在の衛星を使うGPSシステムの前進のようなものと言えばいいでしょうか(私はこれを頼りに波崎まで来ました)。現在では,オメガ航法 ( OMEGA navigation ) と呼ばれる,更に高性能のシステムを使い,約1万kmに1局を作ればよいそうで,地球上にわずか8局の送信局を設置するだけでよく(日本では対馬にだけある),どうやら,ロラン局の役目は終わったようです。

 と、言うわけで,この波崎ロラン局も,5年以上前に廃局になっていたのでした。実はこの鉄塔の他に大きなアンテナがかつて稼働していたそうです。うーん,見てみたかった。ちょっと残念ではありましたが,潮風に晒されながら寂しくたたずむロラン局を後にしました。

 さて,今回は波崎でロラン局に出会いましたが,これと良く似たシステムが私が住んでいる守谷にあったのに気づいたのは,つい最近のことでした。

 この後は,守谷編に続きますが,更新は果たしていつの事やら・・・。

   
ひょっとするとこれ以外にも建物があったのかも・・・                  ちなみに手前の建物は民家です