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fontec FOCD3290 録音日 1993/9/10 東京文化会館でのライブ |
もし人に「ブルックナーの交響曲第9番を聴きたいんだけどどのレコードが良いの?」と
尋ねられたら即座にこのCDを薦めます。
朝比奈の演奏はブルックナーの意志と言いたかったこと全てを見事に蘇らせているかのようです。
第一楽章 「荘厳に 神秘的に(Feierlich Misuterioso)」とはいえ なんと堂々とした演奏だろう。
エネルギッシュで瑞々しく素晴らしい足取りで 音楽は進んでいく。
第二主題でぐっとテンポを落とす。基本的に私は遅い演奏は嫌いなのですが 朝比奈は凄い。
テンポを落として 悠長になるどころか増々音楽は豊かに輝きだすのです。
第三楽章 この曲の核心部分にあたるこの楽章はブルックナーの神髄を見せつけてくれる。「生への告別」、155小節付近、第8交響曲の主題回想、
いずれも胸を打ってくる。
このライブを聴けた人はさぞや興奮しただろうな〜 と考えるとちょっと悔しい。
好き嫌いは抜きにして ブル9を語る上で 欠かしてはならない一枚です。
オケがもし ウィーン・フィルだったら・・・・ なんて 考えたりはしては絶対いけません。
わたしが中学3年の頃ですからたぶん1977〜8年頃、朝比奈隆は大フィルを連れて毎年一回東京でブルックナーの演奏会をしていました。
その年は4番「ロマンティック」で 朝比奈大ファンの美術の先生と友人と3人で 東京文化会館へ出かけました。
ところが当時レコードで聞きなれていたカラヤンやベームの演奏に比べて、無骨でそっけない「ロマンティック」は正直いってあまり 良いとは思えませんでした。
演奏終了後に熱狂的に歓喜していた他の聴衆の中で、なぜか納得できないまま家路についたことを記憶しています。
4番という曲想のせいか それとも自分の理解不足が原因か解りませんでしたが、それ以来朝比奈隆を敬遠していた向きがあります。
しかし この9番のCDは素晴らしく 今までの私の偏見を見事に粉砕してくれました。