フルトヴェングラー ウィルヘルム・フルトヴェングラー
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

グラモフォン MG 8868/72
1944年10月7日
ベルリンでのライブ録音

この演奏の評価を一言で言えば「フルトヴェングラーが好きか 嫌いか?」
ということに 行き着くと思われます。
いわゆる「ブルックナーファン」にとっては こんなにドラマティックでグラマラスな演奏はブルックナーではないとの 話も耳にします。
時にはブルとは 一番遠い存在にも思える「官能」や「エロティシズム」さえ見え隠れする、空前絶後の演奏です。

第1楽章 いったいこれから何が始まるのだろうという ゾクゾクするような第1主題の第1動機。
神々しいほどの ホルンの咆哮の後、40小節からのアッチェラランドで早くもフルヴェンの世界へと誘い込まれてしまう。
第2主題部での 豊潤な響きは他ではなかなか聞けない。(唯一 朝比奈くらいか?)
第3主題部の開始、フルヴェン特有のグッとテンポを落としの業で、ため息。
325小節からの猛烈なスピード後の全合奏の迫力。
もうこの辺からは ブルックナーであろうとなかろうと 音が悪かろうと関係なくなるフルヴェン中毒の迷宮に完全に入り込んでしまう。
ここで特筆すべきは いっけん即興のように聴こえる音量やテンポが全て綿密な計算と準備 そして音楽の本質的な解釈によって作り出されていることだ。

荒れ狂う嵐の後、息詰まるようなコーダに突入。
そこで ついに551小節目の陶酔に出会ってしまうのである。(この響きは凄い!)

第2楽章 非常に早めのテンポだが、フルヴェンには必然のようだ。
彼はオーケストラをどんどん 追い上げる。
そして常に存在する恐ろしいほどの緊迫感。

第3楽章 スケルツオのスピードとの見事な対比でアダージョは始まる。
ゆるやかな流れの中に漲る フルトヴェングラーとブルックナーの融合。。。。
kuniも次第に 音楽の中に完全に溶け込んでいくようだ。。。
これはブルックナーなのか?フルヴェンなのか?それとも私自身なのか?。。。

最終結部、弦による分散和音が響き始める頃には もう天国へ連れていかれたようです。。。。


この演奏会の場にもし私が居たとしたら、第1楽章終了後に一回気絶して、全曲終了後には 安楽死(笑い)してると思います。
このレコードは私に無限の形無き財産を与え続けてくれています。
しかし この演奏は聴き終えるには体力いりますね。。。


唯一の欠点は録音状態で、音楽鑑賞の対象としては ギリギリの音質です。
これが 1944年でなくて せめて1950年前後だったらな〜
残念なことに フルヴェンの「ブル9」はこれ一つなんだよな〜



POCG-30073
1944年10月7日
ベルリン
ベートーヴェンザールでのライブ録音
(旧DDR放送局のオリジナルテープに基づく
バイエルン放送協会のテープによる)


最近、フルトヴェングラー・エディションとして最発売された CDを買ってみました。

解説によると複数残された同一ソースの録音の中から 選ばれた音源だそうですけど、私がいつも聴いているLP盤に比べて「サ〜〜」というヒスノイズが目立つのと 全体的に音が薄い気がします。
LP盤のほうが 図太い音で私は好きですけどやはりCDのほうが気楽に聴けていいですね。


お勧めサイト・・・shin-pさんの「フルトヴェングラー資料室」


フルトヴェングラーのブルックナー