クレンペラーの写真だよ オットー・クレンペラー
ニューフィルハーモニア管弦楽団

東芝EMI EAC-81037

録音日 1970/2/7〜21

出だしから重々しい足取りで 音楽はもたもたと始まる。
「遅いテンポだな〜」と思いつつも聴き進むうちに、第1楽章 第3主題の提示部あたりからいつのまにか 広い懐を持つ悠然としたクレンペラーの世界へと誘い込まれてしまう。

よく聴いてみると、音の「強弱」や「テンポ」が非常に綿密に作られているようで緊張が途切れることがない。
全合奏はインパクトある音ではなく、モワ〜とした独特の響きが持続して遅いテンポと相俟って なんともいえない味があるが、これは好みが別れそう。
フルトヴェングラーなどと比べると まるで違う曲のように聞こえる場所がかなりある。

第2楽章で 小気味いいテンポが始まるが それでも普通の指揮者のスピード程度。

第3楽章でクレンペラーの本領発揮。
ゆったりとしたテンポの中に無限の時空を見ることができる。
155小節からの表現はかなり感情移入で魅力的だが、終結部が意外とあっさりと終わっていくのが不思議に聞こえた。


以前 懇意にしてもらっていたレコード屋のマスターは「何がなんでもクレンペラー!」という筋金いりのファンでいろいろと買わされましたが、一番良かったのは交響曲第5番です。

LPレコードの最終期にEMIのクレンペラー盤が次々と廉価版扱いになっていく中、このブル9だけは 最後まで¥2500のままでした。
「なんで?」と聞くと マスター曰く「決まってるじゃん! 名演だからだよ」と訳の分らない事を演説してましたけど 真偽のほどは 不明です。