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エフゲニー・ムラヴィンスキー レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 ビクター VIC-9043/4 1980/1/30 フィルハーモニー大ホールでのライブ |
ブルックナーを聴くというより明らかにムラヴィンスキーを聴くといった演奏。
例によってムラヴィンスキーは全く冗談の入る余地がないように厳しく、冷静に音楽を進めていく。
温かく、素朴なブルックナーを好む聞き手には かなり疲れてシンドイと思われるが、私にとっては
この曲のベスト3に入る名盤です。
第1楽章 音楽はおずおずと始まる「原始霧」ではなく確信に満ちた音で、ひとつひとつの粒子ははっきりしている。それはブルックナーではなく単に楽譜に書かれている音のようだ。ムラヴィンスキーは最初から アダージョを目指して音楽を進めていってるかのように思えてならない。
第2楽章 鋭く研ぎ澄まされたような表現は 彼でなきゃ出来ない独壇場。
アクセントの強さと激しいクレシェンド。音楽は高揚していくけど、ムラは常に冷静で乱れを許さない。
第3楽章 オケの調子が出てきたのか 金管群はますます朗々と鳴り響く。
それまでの冷たさが一瞬 姿を変える。(155小節〜)コラールでムラヴィンスキーがちょっとだけ手を差し出した感じ。
やはり彼はここのために音楽を進めて来ていた。
弦だけによる音がこれほど心に響くとは・・
この透明で清潔な響きは 他の演奏を寄せ付けない素晴らしさだ!
でもすぐ元の表情に戻ってしまう。もっともっと安らぎに満ちているはずの コーダ付近では振り向いてくれないのである。
しかし それでいいのだ。彼は ムラヴィンスキーなのだから!!
「天使」と「悪魔」の表情を併せ持つ屈指の名演。
ずいぶん前ですが ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルが来日した時 東京文化会館へシベリウスとチャイコフスキーを聴きに行きました。
私は チャイコの5番の物凄いフィナーレを期待していたのですが、実際に心に残ったのは2楽章でした。
あまりに温かく、優しく ホルンが響いていたのです。ムラヴィンスキーというと よく 冷たいとか固いとか評論されがちですが、実際の生演奏では まるっきり反対のイメージを持ちました。
演奏が終わってオケが引き上げて何10分も過ぎているのに いっこうに帰ろうとしない聴衆。 それどころか皆ステージの前に集まりだして なおも続く拍手の嵐。(感動したな〜)
どれくらい時間が経ったのか わからないが ついに1人で笑顔でステージに現れた巨匠。
一段と高まる拍手と歓声。目の前で見る巨匠の髪はキラキラと金色に輝いていた。
忘れられない コンサートでした。