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グラモフォン POCG-7107 録音日 1988/6, ウィーン |
人気の高いジュリーニのブル9は噂に違わず 重量感溢れる名演。
極限まで肥大化したこの演奏は同じウィーンpo.とのシューリヒト盤とは
全くの対極にある。
オーケストラの持つ全ての音を使い切ったかのような濃厚さは 油のコッテリと
した肉をグツグツと何時間も煮込んだようなそんな感じで、ウィーンの音色でなければ 全曲通して聴くには食傷気味になるのではと思わせる。
スケールの大きさと雄大さは特筆もので ジュリーニの一貫した解釈が感じられる。
決して鈍重なスローテンポではない。
第1楽章の第2,3主題群の弦楽器の溺れそうになるほどの豊潤な響き。
スケルツォ基本リズムの強靭なアクセント。
アダージョ 湿潤とした 歌謡的動機群。等など
好きな人にはたまらない場面が次々に登場する。
この方向で極めてくれたジュリーニの才能と個性に脱帽します。
しかし 残念ながら 私にとっては いささか重過ぎて(大袈裟過ぎて)全曲聴くと疲れてしまう。
果たして これほどの濃厚さを ブルックナーが望んでいたのだろうか?
この演奏には アイヒホルン盤で痛いほど感じる「清楚さ」「無垢さ」は
皆無に近いのです。