カルロ・マリア・ジュリーニ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ジュリーニ グラモフォン POCG-7107

録音日 1988/6, ウィーン


人気の高いジュリーニのブル9は噂に違わず 重量感溢れる名演。

極限まで肥大化したこの演奏は同じウィーンpo.とのシューリヒト盤とは 全くの対極にある。

オーケストラの持つ全ての音を使い切ったかのような濃厚さは 油のコッテリと した肉をグツグツと何時間も煮込んだようなそんな感じで、ウィーンの音色でなければ 全曲通して聴くには食傷気味になるのではと思わせる。

スケールの大きさと雄大さは特筆もので ジュリーニの一貫した解釈が感じられる。
決して鈍重なスローテンポではない。
第1楽章の第2,3主題群の弦楽器の溺れそうになるほどの豊潤な響き。
スケルツォ基本リズムの強靭なアクセント。
アダージョ 湿潤とした 歌謡的動機群。等など
好きな人にはたまらない場面が次々に登場する。

この方向で極めてくれたジュリーニの才能と個性に脱帽します。

しかし 残念ながら 私にとっては いささか重過ぎて(大袈裟過ぎて)全曲聴くと疲れてしまう。
果たして これほどの濃厚さを ブルックナーが望んでいたのだろうか?
この演奏には アイヒホルン盤で痛いほど感じる「清楚さ」「無垢さ」は 皆無に近いのです。