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日本コロンビア COCO-78331 1990年2月6,7,10,11日 アムステルダム・コンセルトヘボウ(ライブ録音) |
とても深い深い霧の中から、ホルンの遠吠えが聞える。
雰囲気抜群で曲は始まる。
重厚で重々しい威厳に満ちた演奏だ。
ティンパニの強打も適度な節度を守っている。
残念なのは総休止の前後で音楽に変化が無い事です。
ブルックナーはゲネラルパウゼについて「私は何か新しい事を始めるとき、まず
一息ついてから始めるのだ」と語ったそうだが、その意図がこの第1楽章には感じられない。
ヨッフムやヴァント盤などではそのそれがハッキリ聞えるのだが、それに比べると能面のような音楽に聞える。
1990年のライブ録音。
4日間の演奏を繋ぎあわせたものと思われるが、ヴァイオリンの線が細く聞えたり、一部の金管楽器だけやけに強調される場面もあり
録音バランスが良いとは思えないし、音色自体にあまり魅力を感じない。
たぶん 実演ではこんな響きが聞えるわけないと思う。
この辺りが「再生音楽」の問題のひとつかもしれない。
ヘンヒェンという指揮者、実は私はよく知らないのですが、1943年生まれというから今年まだ56歳という若さです。
なのに 第1楽章でおもむろに始まり、徐々に熱をおびてゆき、アダージョを曲の頂点へと導いて行く音楽の作り方はマタチッチのような老練ささえ感じます。
個々の部分ではなく 全体を最初から見通して 曲が終わって初めてその素晴らしさに驚く演奏。
こういうのは生で聴くと 良いんだよね〜!
能面に聞こえていた音楽がアダージョでは 生き生きと輝き出すのです。
徐々にテンポもあがり アダージョが一番速く締めくくられる。
この逆パターンが多い中、このスタイル、私は好きです。
今後、ウィーンpo.のこくのある音でこの演奏をぜひ聴きたい。
期待したい指揮者です。