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SONY CLASSICAL 1959/11/16&18 American Legion Holl Hollywood California |
LP時代からヨッフム盤などと共にいわゆるスタンダードのひとつに挙げられていた名演。
CDで復刻された録音を聴いてみた。
いかにもスタジオで録りましたという感じでマイクロフォンと楽器の距離がとても近く音が生々しい。
当時のCBS(?)の特徴的な音色でコンサート会場で聴く融けあった芳醇な音とは程遠く
オーケストラの人数もかなり少ないのではないかと思わせるくらいです。(実際の人数は知りませんが。。)
勿論これはワルターとコロンビアso.の責任ではないのだけど ブル9に適した音色と言い難い。(ハイドンやモーツァルトには良いのだが、、、)
その為 ワルター自身の解釈とも相俟って骨格の貧弱なブルックナーになってしまった。
部分的に管楽器の強奏に力強さを演出された場面も登場するが、曲全体のスケールの大きさは変わりようはない。
しかし ワルターの真骨頂はアダージョ45小節以後にある。
この45小節から「弦によるコラール」にかけて出現する歌謡動機群の数々がこれほど見事に歌い上げられている演奏はちょっと見当たらない。
フレーズが「歌う」とはいかにも感情を込めたかのようにテンポを揺らしたり、抑揚をつけたりする事ではない。
この演奏を聴くとその意味がよく理解出来るはずだ。
このあたりはスタンスは違うがシューリヒトとも通ずる巨匠の奥義であろう。
ワルターはほんとにごく簡潔な動きと表情、そして音楽への深い「愛情」を持って最上のフレージングで音符に命を与えている。
秀逸である。
このアダージョこそ ワルターの音楽の本質であると確信出来る。