搬器


旅客が乗車する部分の総称を搬器といいます。
厳密にいえば、単線においては客車または椅子から懸垂部まで、複線においては 客車から走行装置を含む懸垂部までのことをいい、搬器を索条に固定する部分 (握索装置又は接続装置)は除かれますが、一般的には握索部や接続装置部分も含 めての総称と考えた方がいいでしょう。

搬器の形状はロープウェイやゴンドラなんかの閉鎖式とスキー用リフトなどの椅 子式の2種類に大別されますが、ここでは閉鎖式搬器(複線)、閉鎖式搬器(単線)、 椅子式搬器、及び滑走式搬器の4つに分けて説明していきます。
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ロープウェイ搬器 複線交走式や複線自動循環式の搬器には、固定索である支索上を走行するために 走行装置と呼ばれる装置が取付けられています。
搬器は走行装置、走行装置から客車を懸垂するための懸垂機、旅客が乗車するた めの客車で構成され、走行装置にはえい索及び平衡索を固定するための接続装置 が取付けられています。
ただし、複線自動循環式の場合には走行輪からなる走行部とえい索を固定する握 索部を総称して握索装置と呼んでいるようです。

走行装置はいくつかの走行輪とピン及びビームで構成され、支索上をスムーズに 移動できるようになっており懸垂機とはピン構造で接続されています。 つまり懸垂機から客車までは線路中の勾配に影響されず常に水平が保たれるよう な構造になっているわけです。
そのため懸垂機は勾配によって客車が索条と接触しないように適正な離隔距離を 保つ長さで設計され、走行時に発生する揺れに対しては緩衝装置などを取付ける ことによって乗客に不快感を与えないよう工夫されています。
複線式の客車は単線式のものよりも大型の搬器を懸垂することが可能です。
特に交走式の搬器は年々大型化の傾向にあり、現在(1997)、日本では湯沢 ロープウェイ及び竜王ロープウェイの166人乗り、世界ではサムナウンの 180人乗りが最大です。
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ゴンドラ搬器 単線式の普通索道の搬器は握索装置懸垂機客車で構成されています。
握索装置は自動式(停留場において握放索をおこなうもの)又は固定式(掴みっ ぱなし)のものが取付けられ、懸垂機とはピンで接続されているので、懸垂機か ら下の部分は線路の勾配に影響されないのは複線式と同様です。

客車は複線式と比べると小型(4〜8人くらい)で、座席のみの仕様であったの ですが、近年省令の改正にともない立ち席も適用となり今後10人乗り以上の搬 器も出てくると思われます。(既に野沢、園原で立ち席12人乗りが架設されて いますが、これらは特別に認可を受けたものです。)
また単線式に限らず、普通索道の扉は乗客が不用意に開閉できない構造に なっていて、乗客の搬器外への転落を防止しています。
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チェアリフト搬器 椅子式の搬器は平たく言えば単線式の普通索道の客車部分を椅子に変えたものです。 現在日本では1〜6人乗り(海外では8人乗りもあるようです)のものが稼動し ています。

椅子式の搬器は外部に開放されているため、特にスキー場などに架設する場合、 防風、防寒のために様々な工夫がなされてきました。
座席部分にウォームシートを採用したのもそうですが、フード付搬器の登場はス キー場における乗車時の快適性をかなり向上させたのではないでしょうか。
フードの開閉機構は自動式、半自動式、手動式と3種類ありますが、いずれの方式に しろ乗客が容易に開閉できる構造になっています。
その他、座席には乗客が体を支えるための手摺が設けられており、3人掛け 以上の場合には中央の人の体を支えるためのセフティーバーと呼ばれるものが取 付けられています。
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滑走式搬器 最後に滑走式の搬器ですが固定循環式のものと自動循環式のものとでは若干構造 が違ってきます。
固定循環式のものは握索装置ハンガーアーム巻取装置ビューゲルで構成され、巻取装置にはビューゲルをつないでおく トレーリングロープが巻き込まれています。
スキーヤーがビューゲルで体を支えると、トレーリングロープがいっぱいに引き 出されスキーヤを牽引するのですが、ロープが引き出されるまでの間が緩衝とな り乗車の際のショックを和らげています。
降車時にはビューゲルは自動的に巻取装置に引き上げられます。
ビューゲルには1人用の円形プラッター、2人用のT型バーがあります。
自動循環式の搬器は握索装置牽引ロッドで構成され、ロッドの端が体を支える ようになっています。
テレスキー 乗り場には搬器がたくさん終結していて、スキーヤーがロッドを誘導すると握索 装置が支えい索にかかり、索条との摩擦抵抗を利用して乗客を牽引するしくみに なっています。
自動循環式ではその構造上索条との耐滑動力が小さいので、搬器は1人用となって います。
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