自走式索道


現在世の中にある索道のほとんどは、交走式であろうと循環式であろうと 原動力は停留場の中にあります。 つまり搬器には動力源はなく、えい索や支えい索といった動索によって搬器を 移動させる構造になっています。
では客車自体が動力をもって移動する方式の索道はないのでしょうか?
実はアメリカと日本で過去に建設された実績があるのでした。



[Skiway - オレゴン州 Mt.Food -]
第2次世界大戦後のアメリカ、オレゴン州ポートランドの近くにあるフッド山に とっても奇妙な索道が出現しました。 それは街でみかけるごく普通のバスが4本のロープに吊るされたかっこうのいわゆる 自走式の索道でした。
Skiway フッド山にはティンバーライン記念ロッジという山荘があり、氷河スキーを楽しむ 人達等が訪れてたりしたのですが、ふもとのガバメントキャンプの町から そのロッジまでの道路は未舗装で除雪状態も悪く冬期間は通行止めになることがたびたびでした。
そこで索道をということになったのですが、どういうわけか客車は「バス」っていう 方向に話が進み、ついには1951年1月その「Skiway」とよばれるケーブル カーは運行を開始したのでした。
線路長約5km、支柱数38基、高低差660mの単線路には両端が固定された4本の支索と 2本のえい索(っていうのかな)が架設され、客車となる2台のバス(座席36、立ち席14) にはそれぞれ185馬力のエンジンを2台搭載、車輪の代わりに取付けられたの4つのシーブ を駆動し、シーブに巻き付けられたえい索を引き込みながら自らの力で推進したのでした。

しかしそのSkiwayの運行も5年で幕を閉じることになります。
度重なる改造、摩耗によるシーブライナーの交換等で維持費がかさむ一方、乗客のほとんどは 上り線のみの利用であり、輸送力も当初見込んでいた400人/時間を大幅に下回る 120人/時間程度しかなかったためそれに見合う収入を得ることが出来なかったのでした。



[五台山ロープモノレール - 高知県浦戸湾 -]
Skiwayの営業が終了してから13年後の1969年2月11日、高知県の東側 浦戸湾に面してそびえる五台山に近代的な乗り物が登場しました。
ロープモノレール 自走式ロープモノレールと呼ばれるその乗り物は、東京索道(株)が昭和38年から実験機 を製作し研究を進めてきたもので、五台山ロープモノレール株式会社から受注を請け負った 東洋綿花株式会社建設部によって1968年5月に着工、工費1億7500万円をかけて 建設されました。

傾斜長999m、高低差116mの線路には3基の支柱が建てられ70mmの支索がはられました。
人工衛星を思わせる球形の搬器は全部で4台あり、床下に130馬力のエンジンを搭載、 油圧ポンプモータの力で搬器上部の駆動輪を動かすことにより3.6m/sの速度で自走したそうです。
8輪の駆動輪とワイヤーロープとの摩擦力を利用して搬器は勾配を登っていくのですが 駆動輪、ワイヤーロープともに特殊な構造のものが用いられ、その他にも50件ぐらいの特許が申請されていたようです。
とにかくこの特許のかたまりのようなロープモノレールは五台山で初めて運行されたのですが、 その後架設されたという話は聞かれず、五台山モノレールも53年9月に運転を休止したようです。



はたして自走式索道は日米で開発され話題を呼んだにもかかわらず、数年でその幕を下ろすことになったわけですが、 自走式の発想がまずいのか、技術的な問題が多すぎるのか、コストが見合わないのか...
だれかこの問題を解決し再び自走式の開発される日はやってくるのでしょうか。
(参考:SKI AREA MANAGEMENT 1.1998/TOMEN 3.1969)
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