吉野駅
山麓停留場
搬器
線路
支索受
原動機械室
運転室
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奈良の南、近鉄吉野山線の終着吉野駅。そこからいくらも歩かないところにロープウェイの
停留場があります。
昭和4年3月12日開通、現存する日本最古の索道「吉野山ロープウェイ」の山麓停留場は、
ほぼ昔のままの姿で私たちの目の前に現れます。
当時、吉野山のすそ野の吉野駅とその山上に広がる吉野町とは100mほどの高低差があり、
往来は九十九折りの急な坂道一本のみの大変厳しいものでした。
そこでこの山道をショートカットするため、安全索道商会の手により旅客索道としては日本で
7番目のロープウェイが吉野山に架設されたのです。
吉野山ロープウェイは今も町民の足となり(定期券もあるそうです)現役運行中ですが、機械
装置などほとんどのものが架設当初のままの仕様であり、今となってはなかなか珍しい形態の
索道となっています。
まず方式は2支索2えい索の4線交走式ですが、平衡索は戦時中に1本なくなっており現在1本
のまま稼動しています。
山頂原動、山麓緊張で、緊張側は支索、平衡索とも引留めとなっており静的荷重がかけられて
います。支索が2重引留めになっているのは後に事業法にあわせて改造したものだそうです。
もともとこの索道は索道事業規則の趣意に基づき架設された東北産業博覧会のものを改良したもの
で、最初の認可は奈良県知事によるものでした。そのため後から事業法にあわせて改造した個所が
ところどころ見受けられます。
搬器は当初20人乗りのものでしたが、昭和39年頃現在の28人乗りものに交換しています。
(黄色と青の鮮やかなカラーリングはやはり近鉄か?と思われがちですが、なんの関係も無いそうです。)
サスペンダーらしいものが見受けられず、4×2枚の走行輪からなる走行機から直に接続装置、
搬器となる構造は、明らかに今の交走式とは違う印象を与えます。
また、客車は勾配のある停留場にあわせたひし形のものを採用しており、線路勾配により支柱及び
停留場の設備が過大となるのを防いでいます。
搬器に乗り込むと5基の門型支柱が私たちを迎えてくれます。
通常支柱アームの両端に支索サドルが取付けられ、支索及びえい索を保持するのですが、
吉野山ロープウェイは2本の支索の間に走行装置を置き中心に搬器を懸垂しているので、
支柱は支索サドルを抱え込むような構造となっており支索サドル自体はバランス式の割と
小ぶりなものが設置されています。
サドルにはえい索受車はなく、いくつかの支柱の基礎あたりにキャッチャーが備わっていて、
えい索及び平衡索を支えています。
山頂の機械室も、ほぼ架設当時の状態を保っていて歴史の古さを感じさせます。
運転及び制動も手動式で、現在のロープウェイと比べると非常にシンプルな運転室、機械室
になっています。
吉野山ロープウェイは運輸開始以来70年弱ものあいだ大きな事故もなく運行されており、
原設計諸元を保って運転している点では世界的にも古い貴重な索道であるといえるでしょう。
線路長 | 349m |
高低差 | 103m |
最大径間長 | 105m |
支柱数 | 5基 |
最大乗車人員 | 28人 |
運転速度 | 2m/s |
動力 | AC35kW |
支索 | 38mm×2(ロックドコイル) |
えい索 | 21m×2 |
料金 | 片道300円往復500円 |
取材協力 吉野大峯ケーブル自動車(株)索道担当の皆様
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