シャーマン系列のバリエーション


 ここではシャーマン(あるいはM3)系の車体、コンポーネンツを使って製造された各種自走砲、特殊用途車両についてとりあげます。ここでもコンプリートキット、各種改造キットについて、インジェクション/レジンを問わず、網羅的にを解説してあります。
 

  1. M7 プリースト 105mm自走榴弾砲
  2. M10/M36 戦車駆逐車系列
  3. M12 155mm 自走砲
  4. M32 戦車回収車
  5. M31 戦車回収車(M3中戦車ベース)
  6. シャーマンDD
  7. シャーマン・クラブ
  8. シャーマン・ARV
  9. シャーマン・BARV
  10. ファイヤフライ
  11. セクストン 自走25ポンド榴弾砲(ラム巡航戦車ベース)
  12. ラム巡航戦車
  13. カリオペ・ロケットランチャー
  14. T1E3・地雷処理装置
  15. シャーマン・ドーザー
  16. グラントCDL

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1.M7プリースト 105mm 自走榴弾砲

 大戦中のアメリカ軍の主力野戦自走砲。M3、M4車体をベースとしており、同じ目的のドイツのヴェスペがII号戦車ベースだったのに比べて大型であり、全体に余裕があることに留意されたい。この車両の問題点としては仰角が充分に取れず、射程距離が牽引式の105mmより短くなっていることで、それを改善するためにのちにM7B2が製作されることとなった。

 キットはイタレリから発売されており、すでに20年近く経っているがいまだに唯一のキットであるが、最近は入手難である。キット自体はM7の後期型をモデライズしており、出来も大変よく、いまだに決定版と言ってもよい。ストレートに作ってやってなんらの問題もないが、改造するとなるとM3ベースのM7初期〜前期型とM4A3ベースのM7B1の2つが考えられる。

 初期〜前期型については、以前だとタミヤのM3をベースにせざるをえず寸法的・精度的な問題が残ったが最近は各種改造パーツも充実しており、一層簡単に見目の良いものが組めるようになったのは喜ばしい。いまだに手をつけてないのであくまで頭で考えただけだが、以下のような組み合わせで作るのがいいのではないだろうか?

車体下部
ドラゴンのM4A1を基本とし(寸法的にはイタレリのと同じなので手間いらず)、リベットを打つことによってM3へと先祖帰りさせてやるのがいい。3ピースディファレンシャルハウジングに関してはどこのパーツを流用してもいいが、個人的にはチェサピークのがお薦めだろう。M3タイプのボギーについてはクロムウエルの改造キットを使うようにすればOKである。
車体上部
ほぼ無改造で問題ないが、初期のタイプにおいてはMGマウント下部の張り出しおよび戦闘室上部可動式装甲板の除去が必要となる。このタイプはチュニジア〜イタリア戦線でよく見られるので、そのような設定の場合はぜひやってやろう。ノルマンディー上陸当時の第2機甲師団所属車両の場合は無改造でOKであるが、車体側面にM3ハーフトラックからの流用とおぼしきラックが付属しているので、再現してやるのがいいと思う。

 後期型については、イタレリのキットをストレートで作ってやれば問題ないが、転輪はドラゴンの穴無しスポークタイプにしてやる方が一般的なタイプを再現出来る。

 M7B1はM4A3ベースとなっており、作るとなると結構手間がかかる。HJに改造記事が掲載されたので、それを参考にしてやるのがいいだろう。基本的には次のようなやり方がいいのではないかと考えている。

車体下部
基本的にはイタレリベースでリアパネルのみM4A3のパーツを流用すればよい。出来れば転輪もドラゴンの穴無しスポークタイプにしたいところだ。スプロケットやアイドラーなども後期の使用でまとめてやり、キャタピラもタミヤのT48を使う方が一般的な仕様になると思う。
車体上部
これが結構手間である。HJの改造記事では車体上部はほぼスクラッチとなっていたが、「そこまではちょっと・・・」と思う人には次のような方法がある。エンジンデッキから後をイタレリのM4A3から切断して戦闘室と合体させるという「2個1」すればよい。基本的な寸法(幅)は一致するはずなので、これで問題ないと思うが実際にはまだ仮合わせもしてないので、もしかすると改造が必要になるかもしれない・・・。エンジンデッキのグリルもM7B1ではメッシュになっているようなので、その辺もエッチングパーツなどを使用して改造してやらねばならない。内部が見えるようになるので、エンジンを仕込んでやるのも面白いように思うが、手間を増やすだけという気もしなくも無い(苦笑)


 サスペンションに関してはM7後期型、M7B1ともに後期のタイプが使用されているので、イタレリのパーツそのままでなんらの問題もない。HJの記事ではわざわざ前期のタイプに改造していたが、あれは模型誌的展開のためであろう。


2.M10/M36 戦車駆逐車系列

 アカデミーから発売予定のアナウンスがあったので、それを待つというのが正しい選択肢ではあるが、出来がどうなるか不安だし「待ちきれない!」という人間も多いだろうから、とりあえず取り上げてはみたが・・・。

 M10/M36系列に関しては、これは金で解決するのがベストの選択である。つまりはアキュリットかクロムウエルのレジンキットを買え!というのが結論である(苦笑)
(それじゃ意味がないという意見もあろうが、やっぱ楽したいじゃないですか)

 アキュリットアーマーとクロムウエルからレジンのコンプリートキットが各種出ているので、好みで選択して作ってみて下さいとしか言い様が無い・・・。僕はどれも持ってないので詳しいことが書けません、申しわけないです。ただ、アキュリットの方がインテリアなどの再現性はいいように思う。
(STEEL MASTERSの創刊号の作例記事を見る限りにおいては、だが)

 M36に関しては、そのものズバリのキットが出ていないので、これはもう改造して作るしか無いワケだ。レジンキットから改造という手もあるが、基本的にレジンの車体にそのままM36の砲塔を乗せてもダメなのがつらい。というのも、M36はM10A1をベースにしており、これはキットが出ていない。つまりはレジンキットの車体を切り刻んで改造してやらねばならない。とはいえエンジンデッキのグリルの改造のみなので、モーターツール片手にちょちょいのちょい、と言えるかもしれない。具体的にはグリル回りを切り取り、タミヤあるいはイタレリのグリルと交換してやるだけである。イタレリのグリルは素通しになっているので、エンジンを入れてやるという楽しみ(苦しみ?)もある。

 車体に関しては、もう一つの選択肢としてかつてMBモデルが発売していたM10A1/M36上部車体改造キットを使うと言うのもある。純粋にM36を作ろうとすれば、こいつとタミヤの車体下部を合わせるというのが金と手間の面で優位ではあろう。

 砲塔はあまり出来が芳しくはないが、イタレリのM36B1の物を流用してやろう。こいつがなかなかの難物で全体形状というか寸法が多少おかしく(昔のタミヤのとほぼ同じ)、そのあたりの修正も必要だし、インテリアもこれまた大昔のタミヤなみの淋しさなので、いささか問題含みではあるが、他に方法はないとも言える。このあたりはアカデミーがバリエーション展開してくれるのを待つという手もないではないし、それが一番いいのではないかと思う。

 レジンキットを使うにしろ改造するにしろ、VVSSに関しては前期型にしなくてはならないことを申し添えておこう。M10/M36系列においては、ほぼ全ての車両が前期型VVSSを使用しているようである。例外的に、戦後フランス軍が使用したM36B2は後期型VVSSを取り付けていた。このタイプを作る場合はレジンキットのM10の車体がそのまま使えるので、その分は楽が出来るかも知れない。

 AFVクラブからもキット化のアナウンスがあり、どう考えてもそちらの方が出来がよさそうですよね! M18戦車駆逐車に続いて、またもバッティングです。AFVクラブと勝負しなきゃいかんのだからアカデミーもツライところでしょうなぁ・・・。


3.M12 155mm自走砲

 ADV/AZIMUTTのレジンキットしかなかったのに、これまたアカデミーが製品化予定とか・・・。嬉しいような悲しいような気分ではありますが、押し入れのコヤシにしておくのも勿体ないので組みはじめてしまいましたが・・・。

 実車は100両しか製作されず、しかも作ったはいいけど使い道がなくてノルマンディー上陸までお蔵入りしていたという悲しい歴史を持つ車両です。作戦にあたって74両が改修作業を受け、2個野戦砲兵大隊に編成されて、軍直轄砲兵として活用されています。

 ADV/AZIMUTTのキットは、レジンの基本車体と砲部分、イタレリの足回りとエッチングが入っててキットだけでちゃんと完成させられるようになってます。出来自体はかなり素晴らしく、結構さくさく行けるキットです。(今組んでます)
 修正すべき点はほとんどなく、完全に省略されてる車体下部側面から飛び出てる排気管を再現してやる程度で充分でしょう。他にもチマチマ手を入れるべきところはありますが、アメリカ戦車デフォルトディティールアップ(ライトガードのプラグ受けとか)くらいでいいんじゃないかと思われます。ま、エンジングリルがエッチングでスッコ抜けになるので、エンジンを入れてやると言うのもいいかもしれません。取り付け状態などは詳しい資料がないので不明ですが、同じエンジンを搭載したM4/M4A1あたりを参考にしてやればいいのではないかと思います。

 火砲部分も素晴らしい成形状態で、ほぼストレートで文句無しです。問題となるのは駐鋤を可動にするかどうかってあたりでしょうか? 分割とかを見るとうまく加工すればなんとかなりそうな雰囲気ではありますが、レジンに穴開けて真鍮線を通すだけでは強度的に問題が出そうだし、パカパカ動かしてて壊れちゃったら目も当てられないし、考えどころではあります。ま、ディオラマに登場させるなら固定でいいんでしょうけど、単品派としてはなんとなく「スケール感を壊さずに可動させてみたい」と思っちゃうんですよねぇ・・・。


4.M32 戦車回収車

 これはイタレリからそのものズバリのキットが出ているので、それを組めば万事解決! かと思えばさにあらず。実はあのキットのままのタイプってのは実車が存在してないハズなんですね。M32系列はM32B1とかM32B2とかの形式名がついてて、それぞれがベースとなったシャーマンの形式と対応してて、鋳造車体のはM32B1になります。でも、その鋳造車体は前期型を使用しており、後期型ではないんですね。以前だとちゃんとしたタイプにするのは結構大変でしたが、現在は簡単です。ドラゴンのM4A1の車体にイタレリの回収車関係の部品をくっつけるだけです、どうです、楽なもんでしょ?
(あ、最近はドラゴンのキットが入手難なんだっけ!)

 ポイントもなにもないんですが、Aアーム取り付け基部がイタレリに合わせてあるので、ここをプラ板をかますなどしてドラゴンの車体に合うように改造するだけですね。あとは両方ともキットのまま、そのまま作れば大丈夫です。好みによって、いろいろディティールアップすればより楽しめることでしょう。


5.M31 戦車回収車(M3改造)

 この車両はM3中戦車がベースなので、シャーマン系列ではないんですが、ここで取り上げないと面倒なことになるから(笑)

結構人気があるらしく、ずいぶん以前のミリタリーモデラー(アメリカの模型雑誌)とかタミヤニュースに改造記事が掲載されたことがあり、今でも手元にあるなら参考にはなります。この車両を作るには、M3リーとグラントの両方が必要になり、その上場合によってはドラゴンのM4A1も必要になるという悪夢のような事態が発生します。まぁ、このあたりはどこまでこだわるかで違って来ますけど。

 それとADV/AZIMUTTから改造キットが出てますから、それも準備しておきましょう
(って、これも入手難だよなぁ、HISTREX AGENTあたりは在庫あるかも?)

 こいつもM32同様ベース車体によって形式名が変わりますが、それは別として(あとでちゃんと書きますから)、ベースキットに何を使うかってのが結構問題です。砲塔がクレーン(ジブ)のベースに使われてて、そいつはリーと同形状なんでタミヤのリーをストレートでやればいいかと言えば、これがそうはいかないんですね。リーは正式にはM3A3と呼ばれ、GMのディーゼルエンジンを採用したタイプをモデル化してますが、これをベースとしたT31は数が少ないんですね。一番数が多いのはM3(空冷星型エンジン)をベースにしたタイプですから、どうせ作るならこいつにしたいところです。となると、タミヤのグラントを使えばいいという話しになりますが、砲塔はリーから引っ張ってこないとなりません。ゆえに、タミヤのM3シリーズは両方必要になるという訳です。
(そりゃリーをベースにすればいいんですけどね、無駄も出ないし)

 あるいは、ドラゴンのM4A1の車体下部+チェサピークの3ピースディファレンシャルカバーを使って、車体上部をタミヤから持ってくるという方法もあります。これをやると車体下部の寸法がより正確になるというメリットはありますが、タミヤのを使ってもそう目立つワケでもないし、こだわりたい人だけこだわって下さい(笑)

 で、タミヤのキットにADV/AZIMUTTの改造キットを組み付けていくだけで、一応は作れますが、少々手を入れるとすればM3の足回りをいじってやりましょう。キットのままだと転輪の穴が違うとかボギーの形状がそれっぽくないとかいろいろ問題がありますから。ボギーはクロムウエルの改造キット(ドラゴン用になってるんで、ドラゴンのM4A1を使うと取り付けが楽ってのも上に書いた選択に意味があるということです)を使用します。この場合、取付部が合わないので、タミヤのキットの受け側のモールドを全部削りとってクロムウエルのベースをくっつけてやります。この時に、リベットを残そうとすると手間が余分にかかりますから、思い切って無くなるに任せておいて、後で再生してやった方が楽でしょう。その時、転輪もドラゴンの使いますから、穴の数が違うという問題もクリア出来ますね。あとはエデュアルドのエッチングなどを使ってチマチマと手を入れてやればいいでしょう。

 フランスのDESからも改造キットが発売になっており、こちらには砲塔部品も付属している模様です。日本国内では全く見かけないので、どうしても欲しい場合は海外通販で手に入れるしかありませんね・・・。


6.シャーマンDD

 イギリス軍がノルマンディ上陸に備えて作った車両で、水陸両用戦車ですね。助かる事にそのものズバリのキットがレジキャストから出てますので、そいつを使いましょう。フローティングスクリーン収納状態と展開状態の両方のキットが出てましたので、その辺はお好みで。
(でも展開しちゃうとなにがなにやら分からないんですよね、覗きこまないと)

 手を入れるところとしては、まずは砲塔があります。なんとこのキットの砲塔は固定式になってて、回転させられないんですよ! 簡単に言えば砲塔リング部分がついてないんです。これではあまりと言えばあんまりなんで、その辺はなんとかしてやりましょう。タミヤの砲塔を流用してディティールを追加するって方法がいいんじゃないかと思います。キット片手にやればそう難しくもないでしょう。僕はあまったオードナンスの前期型砲塔からリング部分を流用するという金持ちビルドでクリアしましたが・・・。

 あとはキットなりに作っていけば、特に問題はありません。とはいえ、このキット(に限らずレジキャストのキャタピラ全般に言える話し)のキャタピラって熱を加えてる間だけ柔らかいというとんでもない代物なので、ホイルに巻き付けることが出来ません。ここはドラゴンのカフタイプを使用するのがいいでしょう。ついでに、キットのVVSS自体も後期型になってますから、ドラゴンのM4A1(あるいは最近再版されたファイヤフライ)に付属している前期型ボギーかレジキャストから発売されていた(現在入手はほぼ絶望)を使用してやりましょう。

 キットにはエッチングパーツも付属してるんで、あとはキットのままで大丈夫です。ただ、場合によっては車体側のフローティングスクリーン展開シャフト基部(厚さ0.1mmくらいのが一体モールド!)が折れてたりしますんで、そのあたりの修正をどうするかという問題が残ります。エッチングパーツに補修用として付加されてますが、それではまかないきれなかったりしますから・・・。
(僕が購入したキットがまさにそれ! まさかそのためだけにもう1個かうのはなぁ・・・)


7.シャーマン・クラブ

 地雷処理装置としては一番有名で見栄えがするタイプでしょう。これもレジキャストからキットが出てます。以前は車体コミのフルキットですが、ドラゴンからM4A4が発売されて以降は地雷処理ユニットのみの改造キットにリニューアルされました。僕はフルキットの方しか持ってませんけど。キット自体はエッチングパーツなども含まれたマルチマテリアルキットで、部品段階で見ると大変精密な感じがしますが、モノがレジンだけに微妙な変形や収縮が組み立てる上での困難をもたらすように思われます。ユニット自体が平行・直角に組めないと「なんか変よね」って感じになると思いますんで。その問題はフルキットの場合は倍加するのではないか? という気もします。本体もレジン、ユニットもレジンでは微妙な誤差がモロに効いてくると思われますし。これを解決するには車体側の精度を高めるという方法しかないと思われます。

 個人的にはMPモデルのM4A4車体セットを使い、クラブユニットのみレジキャストから流用する方がいいんじゃないかと思ってます。最近はユニットのみの別売りになってますし(入手困難なんだよねー、これも)
 ただ、MPの車体にしても簡易インジェクションで精度的にはちょっと問題がありますが、変形しまくりのレジンよりはずーっとマシだろうし、そのあたりは自分が入手したレジキャストのキットの変形具合を考慮して、どの方法を取るかを決めればいいんじゃないかと?

 クラブユニットのみのタイプは入手してないので、フルキットの方になりますが、これ、凄い精密というかパーツ数が多いです。一番問題になりそうなのがチェーンのパーツでして、整形してる内にバラバラになっちゃいそうです・・・。それ以外は問題なさそうですが、これも組み始めるとドツボに填まっちゃいそうですね。そうそう、こいつもシャーマンDDと同じで砲塔はイモづけするようになってますんで、そのあたりも考えるとやはりMPの車体+お好みの砲塔(タミヤの前期型かチェサピークの初期型)を使ってやった方がいいように思います。


8.シャーマン ARV

 これもレジキャストからちゃんと発売されてます。砲塔を除去しただけともいえるMk Iは改造パーツ、ダミーの砲塔がついたMk IIはフルキットでの発売です。Mk IIの方は購入してないので、コメントできません、申し訳ない・・・。
(なんとなくピンとこないし、ちょっと高いので購入に躊躇してたら見かけなくなりました)

 改造パーツは成形状態もよく、そこそこ使える印象です。レジンだけではなくエッチングパーツも付属しており、この改造キットのみでARVへの改造はほぼまかなえるという事になってます。ただ、こいつもレジキャスト通例の「全然分からん説明書」がついてますので、改造にあたっては資料が欠かせません。とはいえ、こんなマイナーな戦車回収車の資料は豊富にないってのが問題でして・・・。
ずいぶん以前のPANZERに数枚のよい写真が載ってましたんで、それを頼りにするしかないかなぁーって感じです。その写真だけだとジブクレーンの使用状況がよく分からないので、回収作業中の状態にはちょっと組めないなって感じです。

 ベースキットにはドラゴンのM4A4が指定されていますが、こいつがちょっと問題含みのキットなんで、それはやめておいたほうがいいかもしれません。ドラゴンのって車体下部後端の長すぎ以外にも「組み上げると雰囲気がなにか違う」という根本的な問題がありますから。ここはMPの車体キットを使い、ボギーをドラゴンM4A4から持ってくるというのが正しい選択肢でしょう。


9.シャーマン BARV

 これもイギリス軍独特の車両で、上陸作戦時に海岸での回収作業に使うため”だけ”に製作されたという、いかにもお金持ちな発想ですな。50台ちょっと作られたということですが、その1両ごとに仕様が微妙に違うという話しで、模型で作ろうとすると結構気楽加茂知れません。厳密に極めようとするには資料が少なすぎますからね。

 キットはイギリス軍ならお任せ!のレジキャストからフルキットが発売されてます。全くなんの問題もなくサクサク組めるいいキットです。このキットには嬉しい事に前期型VVSSが入ってますから、特に流用する必要もないのは助かります。とはいえ転輪とボギー本体が一体成形だったりするので、このあたりをイタレリから持ってきた方が見目もいいし、組み立ても楽ですけどね。あと、キャタピラがこれまた熱を加えてる間だけ柔らかいタイプなんで、使い物になりません。キット付属のタイプはT49という3本歯のヤツですが、この形式にしようとすると、アキュリットのトラックパクスかVPの補助キャタピラセットしか他の選択肢はありません。VPの方は1セットに1台分入ってないので、数セット必要になって現実的ではないので、ここはアキュリットのを使うしかないでしょう。ただ、これも表面パターンの形状とかに不満がありますから、完璧とは言えません。物凄い手間をかける気があるならインジェクションのT48タイプ(ドラゴンかカステン)の表面モールドを削りとってちまちまとプラ板で手を加えれば作れないワケではないんですけどね。まぁ、無難な選択としてはドラゴンのカフタイプ を使うってのが一番でしょう。僕はアキュリットのトラックパクスを入手しましたが・・・。
(あ、レジキャストのを1枚ずつバラバラにして組み直すって手もあるな! 僕は絶対やりたくないけど)

 もう一つ、組みにくい点として、車体上部につくステップ(エッチング部品)がよく合わないというのがあります。車体上部の角度に合わせて曲がってるんですけど、取り付け足の長さが足りないとか係留ロープ取り付け金具とぶつかっちゃうとか、結構面倒な調整が必要になります。僕は足に関しては真鍮帯金をハンダづけして延長し、取り付け金具の方をズラしてやることで解決しましたが。まぁ、レジンキットってのは、こういう細かい点で配慮が足りないとか、収縮や変形が原因で合わなくなるとかは当たり前ですから、怒ってもしょうがないんですけどね。


10.ファイヤフライ

 各型式ガイドの方に書かなかったのでこちらで解説します。そのものズバリのキットはドラゴンからMk Vc、Mk Icハイブリッドが出てるんですが、両方ともちょっと好みでないんですよね。Vcの方が先に出たこともあり、ずいぶん荒っぽいというか考証が甘い感じがします。車体下部後端の長すぎとか操縦手席回りの張り出し形状とか「こりゃウソだよ」って感じの再現で、ちょっと使えないですね。それでもストレートに作ってもファイヤフライ以外には見えないですけど・・・。Icの方はずいぶんマシになってますし、最近リニューアル版も出た(未入手)ので、そちらは「まぁ、使える」出来ではあります。ただ、車体前半の鋳造表現がいかにも荒すぎて、これも好みと合わないんですよ。それに砲塔のテクスチャー表現と違いがありすぎて、違和感があります。以上のような理由で、「やっぱこりゃ改造だよね」という方法をとる訳ですが・・・・。

 というわけで、MK VcはMPモデルの車体とチェサピークの砲塔(その他パーツも入ってます)の組み合わせ、ハイブリッドにはチェサピークの車体改造セットがお薦めです。チェサピークのパーツは入手困難なのが一番の問題でしょう。まぁ、国内ではほとんど見かけませんが海外のショップからはちゃんと購入出来ますので、どうしても欲しい人は海外通販に挑戦しましょうね。
(思ってるよりは全然簡単ですし)

 他にアベールのファイヤフライ用エッチングパーツを使えば、もう完璧なのが出来ます。このエッチング、至れり尽せりで全部使うのは困難ですが、ポイントを押さえるだけでかなり見栄えがよくなるのでお薦めです。


11.セクストン 自走25ポンド砲

 この車両も「英軍車両ならお任せ!」のレジキャストからフルキットが発売されてます。在庫が残ってる模型店もありますが、出来れば古いバージョンはやめておいたほうがいいでしょう。というのは「とんでもない変形」があったりして組めないんですよ、古いのは。昨年、再度輸入されましたんで、そちらをゲットした方が確実です。箱のサイズが大きくてそっけないのが古いバージョンです。新しい方は小ぶりでカラフルなボックスに入ってますんで要チェックです。万一。組めない古いバージョンを手に入れてしまった場合は、悲しいけど捨てるしかありませんね・・・。あるいはほとんどをスクラッチする覚悟をするか、どっちかでしょう。

 キット自体(組めるバージョン)は精密でよく出来たキットと言えます。インテリアの再現もそこそこで、ほとんどストレートで大丈夫です。車体後部のラックはエッチングとプラ棒で組むようになってますが、エッチングパーツの方の穴が大き過ぎてちょいと問題ありです。それ以外でも合いがよいとは言えないキットですので、苦労はしますよ。それでも、この車両はこのキットしかないですから、頑張って作りましょう。VVSSはキットに付属してますが、後期型なので前期型にしなくてはなりません。ただ、これは古いバージョンだけかもしれず、新しいバージョンはちゃんと前期型VVSSが付属してるかもしれません。

 資料の少ない車両ですので、サクっと作る(のはちょいと困難ですが)のが正しい行き方でしょう。IPMSカナダの20年くらい前の会誌に特集があるようですので、参考にしてみてはいかがでしょうか?(って、そりゃ無茶ていうもんだろうよ)


12.ラム巡航戦車系列

 シャーマンのバリエーションとはいいにくいけど、ここで取り上げないと他に書くとこないものですから・・・。訓練にしか使用されなかった車両ですが、一部は改造されて実戦に登場してますし形態的にも面白いんで結構好きだったりします。これに使えるキットは基本的にレジン製改造パーツになりますが、全部入手難だってのが頭が痛いところですね。

 とりあえず紹介だけはしておきますけど・・・。

Kit&Coというメーカーからは全車体バリエーションが出てました。機銃砲塔と車体側面脱出ハッチの組み合わせで全部で5種類、初期から再後期までフォローしてます。もしかするとどっかのショップの片隅に転がってるかもしれないので、探し見るのもいいかもしれません。バーリンデンからも車体改造キットが出てましたが、入手はほぼ絶望でしょう。まぁ、このキットは車体形状が「なにか違う」印象でしたから、手に入らなくても気になりませんが(笑)
 ラムカンガルーは最近レジキャストで発売されました。もう最高!と言っていいほどの素晴らしいキットです。細部表現などは信じられないほどよく出来てるし気泡や変形もほぼ皆無です。日本にはいつ入ってくるか全く分かりませんが、海外のショップから引っ張れますから、欲しい人はそっちから手に入れましょう。


13.カリオペ・ロケットランチャー

 その昔はバーリンデンの改造キットしかなかったのに、いつの間にやらイタレリからインジェクションが出たという、なかなか恵まれたバリエーション。そうそう、モノグラムのもありましたね、あれも雰囲気のあるいいキットでした(でも1/32なんですねぇ)。

 イタレリのとバーリンデンのを比べると、どう見てもVPのが出来がよく、「使うならこれだね」って感じです。とはいえランチャーの支柱がレジンで、60本ものロケットランチャーチューブ(レジンのむく!)を支えるのには不安があります。僕は裏側をモーターツールで削り倒して真鍮角棒を埋め込みましたが・・・。このあたりはイタレリのインジェクションでも同じような不安がないでもないので、なんらかの補強は絶対に必要でしょう。工作の容易さと強度の両立を図るならチューブの前半をイタレリ、後半をVPというのがいいかもしれません。いや、これで手間が軽減するとはとても言えない工法ではありますが、VPのも前半と後半が別パーツになってる(後半のディティールはイタレリより数段上!)ので、レジンを切断するという面倒なことをしなくても済みますから、多少は楽が出来るってことですね。このランチャーチューブの後半に撃発用のケーブルがつくんですけど、資料が少なく(写真があってもよく見えないから分からない)とりまわしがイマイチ不明です。どーもアンテナポストのところから引き込んでるようにも見えるんですが・・・。


14.T1E3・地雷処理装置

 車体全部に取りつけるでっかい鉄製車輪のごとき地雷処理装置で、これもバーリンデンから改造キットが出ています。いつものバーリンデンらしく大変シャープな出来で気泡も少なく、組みやすそうな印象があります。とはいえ、肝心のリング部分にレジン注型につき物のばらつきがあり、よく見ると1枚ごとに厚みが微妙に違ってます。このあたりを修正しようというのは無理な話ですから、きっぱり諦める方が精神衛生上好ましいでしょう、プラ板で自作するって手もありますけど、そこまではねぇ?

 シャーマンの車体に取り付けるワケですが、このキット自体にかなりの重さがありますから強度の確保が一番の問題になるかと思います。取りつけベース部品をディファレンシャルハウジングにベタ付けしただけでは重みでモゲちゃいそうですから、裏側からボルトを通すとかホゾ&ダボをつけるとかなんらかの方法を講じないとダメだと思ってます。そこさえ解決すれば「いかにも強そう!」な特殊車両が手に入るってことになるんですが・・・。

 ベースになる車体は米軍で使用しているタイプならどれでもいいんじゃないかと思いますが、砲身長の関係で75mm砲タイプじゃないとマズいかな? という気もします。実車写真ではM4A1に取りつけられてるのが残ってますけど、M4でもM4A3でも問題ないんじゃないかと思います。


15.シャーマン・ドーザー

 普通のブルドーザーではオペレーターに危険があるというので、戦車に取りつけるドーザーブレードが必要だ! ってことで開発されたアタッチメントです。キットはバーリンデンとレジキャストから改造セットが出ています。レジキャストのは未所有なので詳しいことは分かりませんが、初期の製品のため、出来には大変不安があります・・・。

 バーリンデンのキットの方はいつもながらのシャープな出来で、全く安心であります。一部パーツを自作するように指示されてるのが難点ですが、そう難しいところでもないので、それほどの苦労なく組めるのではないかと思っています。ドーザーを上下させるシリンダーを真鍮パイプなどから自作すればブレードを可動させることも可能な分割になってますので、それをやるのも面白いかなぁ? とは思ってますが、ブレードがレジンのムクだったり、取りつけ部の強度を考えると難しいだろうなぁって感じです。

 ベース車体はこれまたどれでもいいんじゃないかと思いますが、キットになってるタイプはVVSS専用ですので、そのあたりだけ注意しましょう。以前金子辰也氏がHVSSに取りつけるために追加工してましたけど、それほど大変でもないので、そっちも面白いかな? とは思います。厳密にいえば各部が違うような気もしますけど、詳しい資料がないのでそのあたりは全く不明でありますm(__)m


16.グラントCDL

 運河防衛ライトってのが正式名称で、イギリス軍の第79装甲師団に配備されてライン渡河作戦あたりで使用されたらしいです。なんか作った割には役に立たなかったかったらしいですが・・・。

 これはCDL部分だけの改造キットがADV/Azimut、レジキャスト、バーリンデンから発売されていますが、現在入手可能なのはバーリンデンのモノだけだと思われます。レジキャストのは、同社の初期製品のため出来に不安がありますが、箱のうたい文句を見る限りではエッチングやらなにやらがいろいろついててバリエーションも組めるようになっているそうです。ADV/Azimutのも未所有ですが、中身を見た限りでは「んー、あまりよくない感じ」な出来でした。バーリンデンのキットはいつもながらのシャープな出来と気泡もない完璧な注型で、お勧めのキットではあります。一部部品化されてないところ(砲塔側面のラック)もありますが、簡単に自作できるところでもあるし、そう問題にはならないのではないかと思われます。

 ベース車体にはタミヤのM3グラントが指定されておりますが、このキット自体が古いものゆえ、そのあたりの改善に手間がかかる方が問題でしょう。砲塔はムクの部品に小パーツをつけるだけで、簡単に出来ますからね。

 車体については、少なくとも転輪の変更(キットは6穴、ほんとは5穴)とキャタピラの交換(あのエンドコネクターのつき方ではキャタピラは繋がってない!)だけはやった方がいいと思います。あとできればサスペンション自体もクロムウエルの改造キットを使った方が正確になります。もっと言うと車体の幅とか3ピースディファレンシャルの形状とか、間違ってるところが多いんですけど、そこまで手を入れるとスクラッチと変わらなくなっちゃうので、あっさり諦める方が得策だと思われます。さすがに25年前のキットというわけで、タミヤでもドラゴンでもイタレリでもICMでもどこでもいいから、正確なM3中戦車が欲しいところですね!


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