1.小型軍用車両、トラック(〜3トン クラス)

2 1/2t トラック

 有名なGMCトラックである。縁の下の力持ち的な車両であるにもかかわらず、キットは豊富で作り比べが楽しめるのが嬉しい状況である。

1.エレール CCKW-353 オープンキャブ・鉄製カーゴボディ

 CCKW-353のオープンキャブをモデル化しており、発売以来15年以上経つが、各社キットの中では群を抜く精密感をもつ。ただ、「意余って力足らず」な部分も散見されかなり組みにくい。問題点としてはタイヤの小さすぎ、ボンネットが短くて合わない、一部パーツに精密感がない、などが上げられる。このあたりは最新のタミヤのキットからパーツを補完してやれば充分な完成度を持たせる事が出来る。このキットのみ幌がパーツ化されているので、各社キットに流用してやるのも面白いだろう。ただ、各社各様の解釈(寸法的な問題)もあるので、一発で合うというワケでもないのがツライところではあるが。

2.イタレリ

2-1 CCKW-353 オープンキャブ・鉄製カーゴボディ

イタレリとしては最初に発売されたキット。全体的にきゃしゃな印象もあるが、キットとしては悪くない。足回りに多少の組みにくさがあり、3軸・6輪をきちんと接地させるのはなかなか大変である。このキットはガンリンクマウントがパーツ化されているのがエレールとの差別化になっている。
(エレールのにはついていない)
 現在はこのタイプ自体は絶版となっている。

2-2 CCKW-353 700ガロン ウォータータンクトラック

 バリエーションとしてこのタイプが出ている。特装タイプとしては唯一のインジェクションキットである。このキットはクローズドキャビンでキット化されており、バリエーションを増やすという部分での意気込みが感じられる。ただ、これもキャビン回りが多少スマートすぎ、GMC独特の力強さに多少欠けるようにも思えるが、その分多少クラシカルで優美な印象は強まり、好感の持てる出来にはなっている。残念なことにこのキットも絶版である。
再販予定がアナウンスされている。これを機会にぜひ押さえておきたい。キャビン自体の汎用性も高いので3台は買いであろう

2-3 CCKW-353 クローズドキャブ・鉄製カーゴボディ

 上記2つのキットを組み合わせたようなバリエーション。基本は2-1と同様で、それに2-2のキャビンが付属しているといった内容である。ガンリンクマウントに対応させるためにキャビンの屋根に大穴が開いており、マウントを使用しない場合に工作上の難点があるか? という気がしなくもない。現在入手可能なのはこのタイプのみ。

3.トミー CCKW-353 クローズドキャブ・鉄製カーゴボディ

 GMCトラックとしては最初に発売になったキット。オリジナルはMAX模型の設計ではないかと推測される。
(MAXの廃業に伴う金型の移転ではないだろうか?)
 タイプとしてはクローズドキャブの鉄製カーゴボディとなっている。このキットもガンリンクマウントが付属しており武装タイプにも組む事が出来た。ポリキャップで接続するホイル、ポリ製のタイヤ、一体化されたシャーシーフレームなど、組みやすさを優先する設計となってはいるが、理想とは異なり、やはり多少組みにくい。このキットはタイヤが一回り大きかったり、キャビンが骨太だったりと組みあがると力強いイメージとなる。

4.タミヤ CCKW-353 オープンキャブ・木製カーゴボディ

 最新のキットで最近のタミヤらしく組みやすさ優先となっている。特筆すべきは足回りの部品構成で他社のモノ(というよりは伝統的なソフトスキン)とは違って、ドライブシャフト・ディファレンシャルなどのドライブトレインが完全に一体化されており、簡単に3軸・6輪を接地させる事ができる。この組みやすさはたいした物で、今まで多軸トラックを製作する上での問題点は完全にクリアされている。
 また、カーゴボディがはじめて木製タイプでモデル化されており、価値があると思う。このキットとイタレリの現行品を組み合わせるだけで、木製カーゴ+オープンキャブ、木製カーゴ+クローズドキャブ、鉄製カーゴ+オープンキャブ、鉄製カーゴ+クローズドキャブと4種類(ウインチ、ガンリンクマウントの組み合わせを入れると膨大な)のタイプを製作することが出来る。

5.ADV/Azimut 各種改造キット

 フランスのレジンキットメーカー、ADV/Azimutからは各種改造キットが発売されている。

5-1 CCKW-352 ショートホイールベース改造キット
砲兵隊で105mm榴弾砲牽引に使用されたタイプを製作出来る改造キット。最近やっと入手したが、そこそこ出来のよいキットである。No7簡易クレーンセットも付属しているようで、なかなか楽しいキットである。キットベースとしてはエレール、イタレリが指定されているので、選択によってはオープンキャブ、クローズドキャブのどちらも組めるだろう。
(当然タミヤをベースにしてもまったく問題はない)
5-2 ル・ロイ コンプレッサー搭載タイプ
 工兵隊で使用された大型コンプレッサーを搭載したタイプを製作するための改造キット。最近購入した。成型状態はかなり良好だが、古いキットのせいか、一部のパーツ(フロアーパネル)を自作するように指示されているのはちょっと難点か? 平面パーツゆえの変形を恐れてそのような指示を出しているのは、ある意味では卓見であろうか?(変形してるレジンパーツが入ってるよりはなんぼかマシだろうし・・・)
5-3 ST5/6 シェルター/ワークショップ・バン改造キット
補修大隊などで使用された大型バンボディの改造キット。各種工作機械、工具などもパーツ化されており、かなり楽しい内容のキットとなっている。バンボディがパネルごとに分割されているので、変形に気をつけて組み上げる必要があるだろう。インテリアも再現されているので屋根を接着しなければ楽しいものになるかと思われる。
5-4 HO17-A ラジオシェルター改造キット
 荷台に乗せて使用される無線通信シェルターの改造キット。これもインテリアが再現されており、楽しい内容となっているが、難点は屋根を自作せねばならず、製作に困難が感じられなくもない。うまく自作すれば取り外し可能になるだろうが・・・。
 カーゴ部分に載せればいいのでベースキットは選ばないはずだが、各社の解釈によっては載せられない場合があるかもしれない。
5-5 ダンピングベット 改造キット
 工兵隊で使用されたダンプトラックに改造するためのキット。うまく組み上げると可動にすることも可能で、楽しい内容である。ベースキットはイタレリ・エレールが指定されているが、タミヤのモノでも大丈夫だと思われる。レジンパーツの整形状態はかなり良好で、製作のストレスはほとんど無い。
5-5 40mmボフォース対空機関砲搭載型
 自由フランス軍で使用された車両で、どちらかというとマイナーな車両でありながらきちんとキット化されている。ベースキットにはイタレリが指定されている。ボフォース砲自体は単体発売のものと同じパーツが入っていて、他に荷台部分、弾薬箱など各パーツとも過不足ない再現がされており、好キットといえるだろう。

 

6.他の改造キット

 各メーカーからインジェクションキットがいろいろ発売されているため、他のメーカーからも改造キットが出ているので、それも紹介しておこう。
6-1 ガソリンタンカー 改造キット(SMA)
 有名なバリエーションでもある、ガソリンタンカー用の改造キットがSMAから発売されている。キットはレジン製のタンク、フレーム、メタル/エッチングの小部品といった構成である。レジンの成形状態もよくお薦めのキットである。難点としてはタンク部分がレジンのムクであるため重量がかさみ、ベースキットに補強が必要になることがあげられる。ベースキットはイタレリのウォータータンカーが指定されているが、かなり華奢なキットのためフレーム等に事後変形が起らないかと心配である。
6-2 CCKW352 改造キット(REAL MODELS)
 最近活発に活動しているチェコのリアルモデルズからもショートホイールベース用改造キットが発売された。ベースキットにはタミヤが指定されている。改造パーツ自体もタミヤをベースとしており、かなりお手軽な作りではある。注型状態なども特段によくはないが、ベースキットにタミヤが指定されているので組むのは比較的簡単だろう。なお、CCKW352はスペアタイヤは2個が標準なので、1つ余分に必要になるのを忘れずに。
6-3 CCKW352 改造キット(Alby)
 フランスのAlbyからも改造キットが発売になっているが、未所有のため詳細は不明である。このメーカーの改造キットは綺麗な注型と高精度を誇るのでかなり組みやすいキットになっているのではないかと思われるが・・・。
6-4 AFKWX-353(クローズド・キャブ)
 キャブオーバータイプのAFKWX-353の改造キットがリアルモデルズから発売になっている。成形状態はこのメーカーにしては比較的良好でキャビンの合いも悪くないし、荷台もそれなりによく再現されている。このキットには致命的な欠点があって、ディファレンシャルがスプリットタイプになっている。実車はバンジョーデフのみが装着されており、ここを修正するには旧トミーのキットから流用する以外に方法がないというのが痛いところだ。
6-5 AFKWX-353(オープン・キャブ)
 基本的にはクローズドキャブのキットと同一。キャビン部分の原型にタミヤのキットを使ったらしく、ディティールの切れがよくなっている。フェンダー、キャビン回りの造形は秀逸で、この車輛の特徴をよく捉えていると思う。
6-6 GMC ACKWX352(REAL MODEL)
 古い形式のボンネットタイプ用の改造キットも発売になっているが未入手のため詳細は不明。
6-7 その他の改造キット、アクセサリー
 エデュアルドからエッチング、KMCからタイヤ(チェーン付きとなしの2種類)、オードナンスからチェーン付きのタイヤが出ている。エデュアルドのエッチングはエレール用となっているが、各社キットに使用可能であり、それほど無駄も出ない(最近タミヤ用も発売された)。タイヤについてはKMCのは少し直径が大きく、問題がある。オードナンスのパーツはベースにタミヤのタイヤを使っているらしく、キットに装着した時に違和感が少ない。 チェーン付きのタイヤを再現したいなら、オードナンスのパーツがお薦めである。他に、バーリンデンからタミヤ用アップデートキット(ディティールアップパーツ)が発売される。このキットには木製カーゴ用のガンリングマウントが付いているで、これを使うことによって、目先の変わったスタイルを再現できるだろう。タミヤからも純正のアップグレードパーツが発売された。バーリンデンの方にはエンジンやエッチングパーツも付属しており、高い分だけ「使いで」があるように思う。

7.GMC以外の2 1/2tonトラック

7-1.スチュードベーカー US6改造キット(SMA)
 2 1/2tトラックにはGMCの他にもインターンナショナル・ハーベスター社とスチュードベーカー社で製作されており、そのスチュードベーカー社製のものに改造するためのキット。実車では生産された大部分がレンドリースでソ連軍に渡されたらしい。キット内容は未所有のため不明。
7-2.スチュードベーカー US6改造キット(REAL MODEL)
 オープンキャブ
 クローズドキャブ
 こちらも改造キットだが、クローズドキャブとオープンキャブの両方が発売となっている。こちらも未入手のため詳細は不明。
7-3.スチュードベーカー US6 クローズドキャブ(CMK)
 チェコのCMKからはフルキットが発売されている。未入手のため評価不能だが、このメーカーの製品は比較的注型も安定しているし変形も少ないので、それなりに組めるキットになっているのではないだろうか?
7-4.スチュードベーカー US6 ガソリンタンカー(CMK)
 バリエーションとしてガソリンタンカーも発売されている。最近、国内の模型店でもよく見かけるので、供給は安定しているのかもしれない。
7-5.インターナショナル M-5H-6(REAL MODEL)
 世界初のキット化で海兵隊などで多用されたトラックである。これも改造キットだが、イタレリ/ズベズタのZis-151(例の戦後型カチューシャのキット)をベースにするようだ。これも未入手のため詳細は不明である。

GMC 2 1/2t 水陸両用トラック DUKW

GMC 2 1/2tトラックのコンポーネンツを流用して製作された水陸両用のトラックで、戦争後半の上陸作戦を多用するようになった米軍にとって必要不可欠の車両。
 キットはADV/Azimutからレジン製のフルキットが発売されている。大型の船体が一体成形されているのはいいのだが、多少の変形ですら組み立てには多大の困難が伴う。それを解決できれば、大型で見栄えのする素晴らしいキットではあるが、発売時期がちょっと古いため(10年近く前)、ディティールに甘さなどもあり、製作にあたっては詳しい資料が欠かせないだろう。台湾のSKYBOWとイタレリがキットかする予定らしく、このユニークな水陸両用トラックが簡単に作れるようになるのは大変喜ばしい。しかし、いきなりバッティングというのも・・・。

 

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