5.自走砲(自走榴弾砲、戦車駆逐車など)

M10 戦車駆逐車

 3インチ砲を搭載した軽装甲の戦車駆逐車。キットは大昔のタミヤ(実は1/32なのだが、それを恥ずかしげも無く再版する神経を疑う)とAFVクラブ、最近発売になったアカデミーのモノがある。タミヤのキットは今となっては論外だが、AFVクラブの方も「素晴らしい!」と手放しで喜べるようなキットにはなっていない。AFVクラブらしい細部表現は確かに評価できるのだが、「なにか違う」という部分が多すぎて不満が残る出来である。サスペンションの可動、砲の後座などのギミックに凝るよりは正確性を重んじて欲しかったところだ。アカデミーのキットは全体的にAFVクラブよりも優っていて、作るとすればこちらの方がいいだろう。バリエーションとしてのアキリーズもAFVクラブとアカデミーから発売になっている。他にレジンキットとしてアキュリットとクロムウエルからも発売されているが、今となっては「苦労を金で買う」ようなものなのであまりお勧めできない。考え方によっては「アキュリットが一番それらしい」のは確かなのだが・・・。

 M10はM4A2ベースのディーゼルエンジン、M10A1がM4A3ベースのガソリンエンジンでなので注意しよう。エンジンデッキとシャーシ後部の排気管の取りまわしなどが全く違う。

M36 戦車駆逐車

 M10A1をベースとして90mm砲搭載の新型砲塔に載せ換えた車両である。これもタミヤの古いキットしかなく、新しいのを待望していたがアカデミーから発売予定のアナウンスがあったので期待したい。今現在(2000年1月)にこの車両を作るのは大変な困難が伴うので、ニューキットを待つのが正しい道だろう。

 ベースとなるM10の出来のよさを考えると、アカデミーのニューキットには大変期待を寄せてもいいのではないだろうか? エンジンデッキも変更出来るような分割になっているし、「世界で初めての正確なM36のキット」が出てくる可能性は非常に高いと思われる。

M7 自走榴弾砲

 アメリカ軍機甲野戦砲兵大隊の主力自走砲。M3ベースのM7前期型、M4A1ベースの後期型、M4A3ベースのM7B1、主砲の仰角を上げたM7B2に分類できる。キットはイタレリからM7後期型が発売されていたが(トミーブランド、タミヤブランドで発売、イタレリオリジナル版ってもしかして日本には入らなかったかも)、10年以上再版されておらず、入手が大変困難である。キットの出来は素晴らしく、決定版と言ってよい。イタレリ全盛期に発売されただけあって、今の目で見ても全く問題がない。2001年に再販されたが、あっという間に品切れになってしまったようだ。もし見かけることがあれば、米軍ファンは再版になったら1人3個買いは義務としたい(笑)

M12 自走カノン砲

 M3の車体を利用し、155mmカノン砲を搭載した自走砲。キットはADV/Azimutのレジンキットとアカデミーからインジェクションキットが発売されている。ADV/Azimutのキットは大変によい出来だが、車体が少し長いようだ。といっても完成品を見ても別に違和感はないのだが・・・。各部の再現も適切でレジンキットとしては極上の部類に入るだろう。アカデミーのキットも「大変優れたキット」であり、細部のディティールアップをしてやれ必要充分な完成度である。

 アカデミーのキット用のディティールアップパーツも各社から発売になっている。大砲周りについてはADV/Azimutから(しかし入手はまず絶望的)、MODEL VALLEYから操縦席回りとエンジンルーム用(両方かうと大変高価!)、バーリンデンからはアップデートキットが発売になっている。個人的には価格とのバランスからバーリンデンのパーツをお薦めしたい。基本的なディティールアップにはこれで充分だろう。

M8 自走榴弾砲

 M5軽戦車の車体を使用した自走砲。基本的には偵察大隊の突撃砲小隊に配備された車両で、生産数もそれほど多くなく戦後すぐに使われなくなった。キットはタミヤの佳品がある。ベースとなったM5A1もよいキットだったので、登場以来20年ほど経つが、いまだに現役で充分通用する。とはいえ不満点もないではないが、今は各種対応パーツがあるのでそれでフォローしてやろう。基本的に自分で修正しなくてはならない部分は少なく、アイドラーホイール基部、車体側面のリベット&ネジ(全部がリベットではないので実車写真をよく見よう!)、ファイナルドライブのボルトくらいである。あとは市販パーツから穴無しの各ホイール(スプロケットはイタレリのシャーマンから流用可能である)、キャタピラにはAFVクラブの物、エッチングはエデュアルドと言ったところを持ってくれば充分だろう。他にもYANKSから車体内部部品が出ていたが今は絶版である。最近、バーリンデンからもアップデートキットが発売になってので、これを利用するのがいいと思う。
(ほとんど見えなくなるが・・・)

 ただ、タミヤのM5A1には「車体長が短い」という致命的な欠点があり、そのせいでエンジンデッキ全体の寸法もおかしくなってしまっている。これを修正するのは大変であるが、正確さを重んじるならば挑戦してもいいのではないだろうか? 目立たないといえば目立たないのだが・・・。

M18 戦車駆逐車

 戦車駆逐部隊が理想とした高速・重武装(実用になった時にはそうも言いきれなかったが)戦車駆逐車で、アメリカ軍では初めてトーションバーサスペンションを装備した。キットはアキュリットのレジン、AFVクラブとアカデミーのインジェクションキットがある。しかし、これがインジェクションになるとは思わなかったし、しかも2社競作になるとは予想だにしなかった・・・。ほんと、連合軍車両ファンにとってはいい時代になったなぁ。アキュリッとのレジンキットは未所有のため詳しくは触れられないが、 STEEL MASTERS の作例を見るとかなりよく出来たキットのようだ。以前からこれを所有している人は別として、今となってはインジェクションがあるのでワザワザこれから購入する必要もないのではないだろうか? 「俺は死ぬほどレジン(あるいはアキュリット)のキットが好き」というなら別だが・・・。まぁ、レジンにはレジンの味わいがあるので、一概に「購入の必要なし」とも言えないし、ましてや自分で持ってないとなればね。

 インジェクションキットの方はアカデミーが先発し、AFVクラブが後を追う形になったが、製品化の発表は後者のが先だったようだ。キットの出来としてはAFVクラブに一日の長がある。それは後から出たためというよりはメーカーの特質によるものではあるが。ただ、アカデミーのキットもそう悪い出来ではなく、M18ヘルキャットらしさはよく捉えている。とはいえ車体後面の面構成が間違っており修正が困難という、致命的な欠点があるので、あまりお勧めは出来ない。両社のキットともキャタピラの出来が芳しくなく、ここは別売りのキャタピラに置き換えてやるのが望ましい。これもフリイルが先発し、モデルカステンのインジェクションが後追いという形になってしまい、先に高いフリイルのを買った人間としては泣けてくる(苦笑) フリイルのセットにはスプロケットとアイドラーが付属しており、インジェクションでは再現が難しいドラム部の穴などもきちんと表現してあるので、それは利点ではある。キットの方でも再現しようとしているのだが、いかんせ合わせ目を消したりとかで手間がかかるので、うれしい部品化と言えなくもない。

 金に糸目をつけないのであれば、AFVクラブのキット+フリイルのアイドラー&スプロケット、モデルカステンのキャタピラの組み合わせがもっとも見目のいい完成品を手に入れられるだろう。他にもアカデミー用にバーリンデン、AFVクラブ用にHobby Fanからアップデートキットが発売になっている。各種パーツの充実ぶりがすごいが、それほど人気があったとも思えないので不思議な感じもしないでもない(笑)

 

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