3.装甲車、装甲車両(ハーフトラックなど)

ダイムラー・スカウトカー

 タミヤが25年前に発売したおかげで大変に有名になった車両である。キットは、そのタミヤのインジェクションとフランスのPhebusからレジンキットが発売されている。前者はさすがに古株であり、現在の眼で見るとかなりツライ出来ではあるが、お手軽に作れるのはメリットである。後者のキットはインテリア完全再現、全ハッチ開閉選択式という凝った作りではあるが、それゆえに製作はかなり困難なのではないだろうか? こちらのキットは未所有だが、メーカーからの直接購入は可能である。

ハンバー・スカウトカー

 ダイムラーのスカウトカーだけでは必要数量がまかなえなくなったので、ハンバーに同仕様で製作させた車両である。駆動系の違い、全体のプロポーションの違いが大きく、とても同じ仕様によるとは思えないあたりが実にイギリス的である。キットはアキュリットアーマーからレジンキットが発売されている。車体がほぼ一体で成形されており、それに足回りや小部品を取りつけると言う構成で、部品状態で見る限りでは組みやすそうに思える。

リンクス・スカウトカー

 CMPのシャーシーを利用してカナダで製造されたスカウトカー。雰囲気はダイムラーのにそっくりだが、実車は一回り大きい。キットはADV/Azimutから発売されているが、これがもう「レジンのゴミ」レベルの悲しいキットで絶対に手を出してはいけない。バウマンも輸入しなかったが、それも故なきことではないなぁ、と納得させられた。海外のショップからわざわざ購入したが、箱を開けたとたんに絶句したのはいうまでもない・・・。

モーリス LRC

 独特の平べったいプロポーションゆえか、実際より大きく見える不思議な軽装甲車。キットはクロムウエルとアキュリットアーマーから発売されており(なんでこれをバッティングさせるかなぁ?)、前者はインテリアまで再現されたフルレジンキット、後者はレジン、メタルなどのマルチマテリアルと両者の個性が剥き出しの対決である。両方とも最近の発売だから入手はやさしい。好みで選んでやればよいだろう。

カナディアン・オッター軽装甲車

 これもCMPのシャーシーを利用した軽装甲車。背が高い独特のプロポーションを持つユニークな車両。かつてMAXが発売を予定していたが、それ以前に会社自体が解散してしまった。現状ではアメリカのコマンダーからフルレジンキットが発売されており、それが唯一のモノである。出来はいかにもコマンダーらしく成形などはかなり荒っぽいが雰囲気はよく捕らえている。国内での入手は困難だがアメリカのメールオーダーショップで扱ってるところは多いので、そちらから取り寄せればよいだろう。

 オランダのScal-Lineからも最近発売になった。簡素な出来ではあるが、成形状態などはコマンダーとは比較にならないくらい美しい。車体の裏側などは完全に省略されているが、その分組みやすいキットになっている。その省略ぶりは現代のキットとは思えないほどではあるが、全体の組みやすさを優先したと考えれば、それもありかな? と妙に納得させられてしまう・・・。

ダイムラー 装甲車

 独特の駆動系(スカウトカーとほぼ同一)を持つユニークな装甲車。基本的には装甲車連隊で使用され、イギリス軍主力装甲車と言えるだろう。キットはソブリンからMk I、アキュリットアーマーからMk I 、Mk II が発売されている。北西ヨーロッパで使用されたのはMk I の方なので間違いなきよう。両方ともレジンキットで、ソブリンの方が簡潔な部品構成で組みやすいのではないかと思われる。アキュリットの方は同社の比較的初期の製品なので、ロットによって当り外れが大きく、ハズレをつかむと組むのがとてつもなく大変になるので、買うまで箱の中身は見せないようなショップで購入してはいけない。

ハンバー 装甲車

 戦前のガイ装甲車の発展形と言ってもよく、いかにもイギリス的なデザインの4輪装甲車。車体規模や武装はダイムラーとほぼ同一であるが、こちらは歩兵師団に配属された偵察連隊(装甲車化)で使用されている。キットはオードナンス(元はCAアトキンス)とアキュリットから発売されている。オードナンスのは大戦後半に活躍したMk IV(アメリカ製37mm砲装備)、アキュリットからは各形式がそれぞれ別キットとして発売されている。オードナンスのキットは部品点数も少なく、レジンキットとしての割きりがそこここに見られるが、決して出来は悪くない。アキュリットの方はいつもながらのマルチマテリアルキットで、最近やっと購入した。成型状態もよく実に素晴らしいキットであった。一部のゲートがパーツに食いこんでいるので切り出しには最新の注意が必要とされるだろう。

AEC 装甲車

 まるで棺桶のような形状の車体にバレンタイン歩兵戦車の砲塔を載せたと言う独特な形状でかなり面白い車両。大戦後半に使用されたのはMk IIII(75mm砲搭載)で砲塔がチャーチルMk IIIのような溶接砲塔に変更されている。こんな車両を出しているのはアキュリットアーマーだけで、出来もそこそこによろしい。レジンのムクの車体を支えるには心もとないサスペンション周りの補強が組みたて時には重要になろう。ここはタミヤジープにならって、見えない部分にピンを立てて、それが重量を支えるようにしてやるのがよいだろう。

T17E1 スタッグハウンド 装甲車

 アメリカ製の大型4輪装甲車で、生産全数量が英連邦軍に供与された。バランスの関係でそう大きくは見えないが、実際にはかなり大型の装甲車である。キットはADV/Azimutとアキュリットアーマーから発売されおり、両社ともにバリエーション展開をしていて楽しめる。レジンキットで高価だから、とても全部を揃えるなどというのは不可能だから、お好みで選べばよいだろう。組みやすさではADV/Azimut、細部再現や全体の雰囲気ではアキュリットアーマーが勝っている。

AEC ドチェスター装甲指揮車

 ロンメルのマンモス、と言った方が通りがいい、まるで塗り壁のような大型の指揮・通信用装甲車。キットはエアプレスからバキュームキット(イタレリのベッドフォードQLガンポーティーを流用して組む)とクロムウエルからフルレジンキットが発売されている。大戦後半の北西ヨーロッパではあまり使われていないようだが、存在感がある車両なので一つ持っているのもよいかな、とは思っている。

M5/M9 ハーフトラック系列

 そのものズバリのキットも改造パーツも発売されていない。タミヤのM3ハーフトラックをベースにすれば作れないことはない。目立つ相違点としてはフェンダーの違いと車体最後部の処理の違いがある。フェンダーについては古いモノグラムのキットがなぜかM5/M9系列の形状に近い形で再現しているのでそれを流用してやるのがいいだろう。車体最後部がM3ハーフトラックとは違いラウンドしているのを再現するのはかなり大変だろう。やるとすればバキュームフォームなどを使って、コーナー部分を再現するか、あるいは側面〜後面を一体にして抜いてやるしかないだろう。プラ板張り合わせを削り出して、などという手法では難しいのではないかと思われる。M5/M9系はインテリアが相違しているが、アメリカのM2/M3ハーフトラックとは違い、車体長などは同じであることにも注意して欲しい。

 このタイプ自体が改造キットとして発売される可能性は低いので、欲しければ自作せざるをえないだろう・・・。

ユニバーサル・キャリアー系列

 イギリス軍にはなくてはならない、装軌式の小型車両。兵員輸送から連絡、通信、装備の運搬、火砲の牽引と汎用車両として有効に使用された。キットはタミヤの20年選手のモノしかないが、数年前にリニューアルしてフィギュアが変更されたと同じに「北西ヨーロッパ仕様」となった。さすがに年代モノだけあって、苦しい部分が散見されるが、中でもキャタピラだけは「なんとかしなければならない」レベルである。ここはモデルカステンの連結式キャタピラに変更してやる必要がある。ただ、それもピッチが細かく組み立てが大変なのが難点ではあるが、そこだけ変更してやれば見られるキットになるのは事実であるので、頑張ろうとしか言えない。

 さまざまな用途に使用された汎用車両だけのことはあり、改造キットもそれなりに発売されている。

★モーターキャリアー

 分解した迫撃砲を車体後部に搭載した車両。キットはレジキャストから改造キットがリリースされている。かなり精密なキットで迫撃砲(英軍の3インチ迫撃砲のキットはこれだけ)の出来もよい。運転席前面装甲板が一体パーツとなっており、タミヤのととりかえるようになっているが、レジンの収縮があるので、かなり合いが悪いのが難点といえるだろう。

★ワスプ火炎放射車両

 大型の燃料タンクを車体内部に据え付けて、ガンナー席前部に火炎放射器を搭載した車両。キットはSMAから改造キットが発売されている。出来はいかにも同社らしいもので、レジン製のタンク、メタル製のパイプ、火炎放射器という構成でパーツ状態で見る限りはそこそこに作れそうな印象がある。

 ベルギーのレジキャストからはMk IICが発売されている。キットの成形状態は良好で、タミヤのキットとレジン製改造パーツの合いはそれほど悪くはないので組みたて自体が難しいということはないと思うが、説明書が分かりにくいので製作にはかなり苦労するのではないだろうか?

★マシンガンキャリアー

 エンジンデッキ上部にヴィッカース重機関銃を装備した車両。独立重機関銃中隊などで使用された。

 レジキャストのキットがすでに国内一部模型店に入荷している。キットの出来は大変すばらしく、ヴィッカース機銃などはまさに絶品である。ただ、キャタピラの出来は芳しくないので、モデルカステンの製品を使ってやるのが望ましい。タミヤのキットと組み合わせる車体前面などのパーツの合いがあまりよくないので、組み立てには細心の注意が要求される。

 これら別車両を組む改造キット以外に、上陸作戦時に使う「ディープ・ウォーター・フォーディング デバイス」(延長された吸・排気管と装甲板延長キット)がレジキャストから発売されている。考えてみれば単なる板切れが数枚セットされているだけ、とも言えるが資料の少なさゆえ自作は困難だから、このキットを利用するのが賢いやり方とは言えるだろう。

 レジキャストからAOP(砲兵隊前進観測車)、ワスプMk Iも発売される予定となっている。2001年中には入手出来るようになるのではないかと思われる。

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