8日目 8月31日(月) 狂ったように快晴

午後から建造中の船の見学に行く。
この工場の主な建造ドックは、全長510m、幅80m。走って一周したら、冬虫夏草ドリンク(注)を飲んでても5分はかかる。

建造風景

写真中央のドックでタンカーを建造中。
左手前のクレーンの足元あたりにごちゃごちゃと車がいるので
余裕のある人は大きさを想像してみませう。


ここでは26万重量トン(原油が二十何万トンか積める)という「普通サイズの」タンカーを建造しており、この船が全長330m、幅60m、吃水20m。ドックのほとりに立ってみると、船体は鋼鉄の壁にしか見えない。前を向くと、その壁は遠近法に従って小さくなって行き、消失点は陽炎の彼方に消えているのである。

ドック

ここはドックの底。海面下8mの世界。
後ろの怪しげな建造物が、タンカーのしっぽになる部分である。
クレーン車が泣かせます。


「なんでも、この船の甲板の上にはテニスコートが80面取れるらしいで。」
「80面もテニスコートがあっても、困るのぅ。」
「鉄板の上でテニスしとって、こけたら痛いのぉ。」

(注)冬虫夏草ドリンク
中国4千年の歴史が世界に誇る謎の飲み物。
藤原は高校時代、これを飲んで1500mの記録を30秒縮めた事がある。


9日目 9月1日(火)くもりのち晴

昨日までは現場実習であったが、今日から設計部の涼しい部屋で実習である。
我々はメガフロートPHASE-U(空港機能検証モデル)のドルフィン型係留装置の1/50スケールモデルを作ることになった。昨日までを思えば、体力的に気楽な作業ではある。
現場は当たり前のように冷房なしだったが、設計は当たり前のように冷房あり。現業部門と設計部門の間の溝(?)を、肌で感じてしまう。
聞いた話。
「何で大学出は楽な仕事で給料がええんかいのぉ。」
「決まっとろぅが。4年も余計に金払っとるからじゃ。」


10日目 9月2日(水)晴

今日は一日中模型作り。画用紙だからいいけど、本物は鋼板で造るんだよね。

今日は残業なしデー(いつはあるのが当然)だったので、定時(1700時のこと)のあと、大学OBとの懇親会というものがあった。即ち、飲み会である。
3軒目のお店(スナックとかパブとかそういうとこ)で、先輩が「大迷惑な歌」を歌い出した。
・・・・・・。
もともと、造船業は転勤が多いのだが、この会社も例外ではない。
「俺は横浜工場と鹿児島工場以外は全部制覇したよ。」とか、
「家を建てるとね〜、こいつは辞めん、てことで転勤の辞令が来るんだよ〜。」みたいな話になった。
うう、寒ぶ。


11日目 9月3日(木)晴

今日は模型制作の成果発表であった。

それはそれとして、工場の朝は早い。我々の場合、毎日、0600時起床、0700時寮を出発、 0755時IHI体操(笑)、0800時始業、である。
実に健康的である。
で、午前中4時間働き、午後も4時間ある。更に社員の皆様には残業というものもある。
我々は一足先に帰り、気分良く風呂に入って、たらふく飯食って、おいしくビ〜ルを飲んで、私の場合は0820時に酔った勢いで寝てしまう。
本当に、健康的である。
設計部に実習が移ってから、今度は1日1キロずつ太り始めた。


12日目 9月4日(金) 快晴

今日は工場実習最終日ということで、実習の後始末みたいな一日であった。
工場実習では、なんとも驚いたことに日当が出るのである。
その額は、1日千円、10日で1万円という恐るべき金額であった。時給に直すと、125円である。
「125円じゃ、ジュース1本買ったら5円しかあまらんのぅ。」
「煙草は1時間に10本までじゃ。」

2週間居着いた寮の部屋に帰って掃除を始めると、煙草の空き箱が7箱あり、積み上げた空缶の高さは私の身長を越えていた。

ヨコハマに帰れば、研究発表が待っている。



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