Last update : 2001.02/19
戦艦「大和」主砲斉射!
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問題の提起。
八代準氏が「船の科学」に連載された「艦艇の初期設計」を
読んでいたところ、面白い式が載ってました。
艦艇が砲をぶっ放したときの傾斜の
大きさを求める式です。
(いや、僕は面白いと思うんですが...面白いってば... ほら面白い面白い。) というわけで、こいつで「大和」の主砲斉射時の傾斜を 計算してみたいと思います。
使用する計算式。
いきなりですが式が降りてきます。
(一応、式の導出は追いかけてあります。
それをhtmlで書くのが非常にしんどいのと、
読む人もなかろうということで省略します。
見たいという物好きな方はメールでも下さい。)
例えばフネが右に砲を撃ったとすると、船体はその反動で左に傾きます。 その角度θは 以下の式で表わされます。
ここで、 θ : 発砲後の横傾斜(度) Δ : 排水量 T : 船体の横動揺周期 g : 重力加速度 GM : メタセンタ高さ w : 弾丸および装薬の重量 v : 弾丸の初速 h : 吃水の半分+水線から砲口までの高さ です。 hですが、本来は「船体の横抵抗中心から砲口までの高さ」なのですが、 めんどくさい(というか船体横抵抗中心の位置なんぞわからん) ので、「吃水の半分+水線上から砲口までの高さ」としてるみたいです。
計算。
でもって本題、「大和」が9門の主砲を一斉に射撃した場合の
横傾斜の計算、です。
射撃方向はめんどくさいので真横水平とします。
データの方は、手元にある「昭和造船史 第1巻」「軍艦基本計画資料」 「日本海軍全艦艇史 資料篇」から引いて 来ることにしましょうか。 Δ = 68200(t) T = 15.2(sec) g = 9.807(m/sec2) GM = 2.489(m) v = 780(m/sec) あたりは問題ないでしょう。 wは、弾丸重量が1460(kg)、装薬重量が360(kg)で、 これが9発分ということで、 w = 9×(1460+360) = 16380(kg) としました。 hですが、水線から砲口までの高さを図面から定規で測って縮尺をかけ、 3つの砲塔の値を平均したものに 吃水の半分(10.4mの半分で5.2m) を足しまして、 h = 18.467(m) としてます。 例によってかなりいい加減な数値が混じってる気もしますが、 これらの値を式に叩っ込みます。
1.7度ですか。 思ったほど無茶苦茶に傾くわけじゃないですね。 「主砲のバカヤロー」は、 最上甲板の上だけで済みそうです。 追記: 「大和」は、9門の主砲を同時に 撃つようにはできてなかったと聞いています。 いわゆる発砲遅延装置を用いてごく僅かの間隔をおいて射撃するなら、 上記の計算で良いと思います。交互射撃を行うならまた話は別なんですが、 まぁそれはそれで。
主要参考文献
「艦艇の初期設計(4)」 八代準 著/船舶技術協会/「船の科学」第8巻2号掲載
本文章は上記図書を参考に藤原梟介の責任において記述してあります。「日本海軍全艦艇史 資料篇」 福井静夫 編集/KKベストセラーズ 「昭和造船史」(1巻) 日本造船学会 編/原書房 「軍艦基本計画資料」 福田啓二 著/今日の話題社 どこかしらに間違いがあることを確信しておりますので、 参考になさる際には上記文献をあたられることをお勧めします。 論理的な批判・批評は喜んでお受けいたします(つーか嬉しいんですが)ので、 ご遠慮なくどうぞ。 |