大人は純粋な子供に惹かれ子はやぶから棒な大人に惹かれる

☆今更ながら「菊次郎の夏」を見てきました。

 前からずっと見たかったんだけど、なかなか見れなくて今までずれ込んでいました。
私が小さい頃こんな経験が出来てれば、今とは違う生活をしてたかも知れないです ほんとに。

〜あらすじ〜

 「正男」と呼ばれるおとなしい小学生を中心に話が進んでいきます。「正男」には両親が居ません
正確には父親は亡くなり、母親は子を残して再婚すると言う環境です。その代わり、叔母と一緒に
住んでるのですが、その叔母も仕事に忙しく正男の相手をしてあげられません。遊ぶ友達も旅行に行き
誰も遊んでくれない中で正男は偶然自分の母親の住所と昔の写真を手に入れます。

 やはり年頃の子供です。居ても立っても居られずお金も余り持たず、東京から愛知県まで向かいます
が、いきなりカツあげを喰らい困ってる所を正男の近所の夫婦が助けてあげます。
正男は旅の目的をその夫婦に話すけど制止されるけど結局、男の方が愛知まで連れて行くと
言う話に落ち着き行動に出るのですが、何ぶんこの男、ちんけなヤクザらしく最初は全然行動
する気は無く止めに競輪に繰り出し旅費として持っていた金を次ぎ込みます。その間正男は黙って
傍に居る事しか出来ません。その内男が正男に数字を聞き出します。まぁビギナーズラックとは
これを言うのでしょうね、見事に万馬券(競輪だから万輪券かな?)を当て一気に大金持ちに……。
 更に、男は疲れを知らないかの様に遊びまくり、正男に1万円をあげたり競輪の服を買ってやったり
色々としてその内競輪の番号を正男に考えさせるようになるけど、所詮はラックすぐさま負け越します

 それから数日後、男が焼き鳥を食って店の外に出てみると正男が居ない事に気が付き、人に聞くと
スーツ姿の禿のオッサンに連れて行かれたと聞き、公園を探してるとトイレの方で正男が「裸になれば
お母さんの所につれてってあげる」と嘯き裸にさせられかけてる所を見つけます。勿論助け出すのですが
助け出した後、男は同じ場所に行き禿のおっさんに「パンツを脱がした後なにするんだ?」と聞くとすかさず
「ピ〜えるんです(はあと)」と男に抱きつきに行くのですが見事にノックアウトされ、現金まで奪われると言う
悲惨と言えば悲惨だけど自業自得と言うのが当てはまるような気がします。

 この一件で正男の母親に会いたいと言う気持ちに揺り動かされていき、やっと母親に会いに行く事に
なります。タクシーをひらい、運ちゃんがトイレに言ってる間にタクシーを奪い、燃料がなくなりそこで
一夜を過ごすことになります。ここからヒッチハイクが始まるのですが、どうもこの男普通の考えにたどり
着かずにせこい事を思いつきます。子供にヒッチハイクをさせたけど駄目、止めには男自身が目が見えない
役をやり子供が頼み込む方法を実行するのですが、一度目は演技が下手で途中でばれてしまい、2度目には
道に出てきた瞬間「もしかしてこれは……」と落ちを考える間も無く見事に跳ねられます…しかもひき逃げ付(笑)

 なんだかんだとどこぞの旅館までなんとか辿り着き、ここで泊まる事になるのですが、ここでも素直に事が
進みません。二人でプールで泳ぐ事になるのですがその時男の背中に刺青がある事が分かります。
で、正男はプールで泳いでるのですが男は入りません。そこで正男が「おじさん泳げないの?」と言った事で
「泳げるぞ」と言いプールに入るのですが…浮き輪付で更に浮き輪つけた状態で溺れて救助隊に助けてもらう
のですが、更にその後プールサイドでこけて失神してました……プールサイドで走って…歩いてたわ。
その夜正男は夢を見ます。前日公園で有った恐ろしい事、母親の事等など。

 次の日難癖文句を付けて旅館をでて近くの道の駅みたいな所まで送って貰って、正男は男の命によりトラックの
運ちゃんに声を掛けるのですが全て駄目で、結局男が頼みに(と言うのは言葉上。実際は命令調)行く事に
なるんだけど、案の定断られます。そこに偶々発進し掛けてた車を見つけそれが成功し、出る前に
先程断られたのがよっぽど悔しかったのか男はトラックのガラスを割ってから出かけます。

 やはりと言うか何と言うか速攻捕まります。で、お決まりの如く喧嘩に成るのですが凶器を持ち出し
あっけなく勝負がつき逃げ通せます。 結局その車にバス停まで送って貰いバスを待つ事にするのですが
一日経ってもバスは着ません。そこに一人のおっちゃんが現れます。トイレするといって外に出たおっちゃんの
手荷物のおにぎりと、男の持ってた果物を黙って交換し、終わった頃に迎えの車が来てオッサンはどっかに
行ってしまいます。で、手持ちのおにぎりは個。正男に「おじちゃんも食べたいけどやっぱり先に
ぼうずがお腹一杯に成らないとな」と言って渡した数は個(笑)
「おじちゃんちょっとトイレ行って来るわ」とその1個を持ちバス停小屋の外に出て急いで食べようと
するのですが、落としてしまいます。拾おうとするのですがお約束に従って溝にはまって動けなくなります

 この後車をとめる為にとがったガラスとかを置いて待ってみたり(それを踏んだ車は崖に落ちて行きました)
色々と苦労してる内になんとか目的地に辿り着けるのですが……。そこには母親が居るのですがそこでは
別の生活をしてるのです。場所を移し泣いてばっかりの正男に対し男は「他人の空似って事もあるから
おじちゃんが今から聞いて来てやるから待ってろ」と言い家の方に行きますが、どうする事も出来ず途方に
くれて座り込んだ先にバイクが止めてありそこに天使の形をしたキーホルダーが目に付いた瞬間、何かを
思い付いたみたいで、その持ち主に頼み込み(脅し?)それを持って正男の所へ持っていきます。

 「ぼんずのお母さんな、引越ししたんだって、それでもし小さな男の子が私を訪ねてきたらこれを渡してくれ
って頼まれたんだよ」と言って渡します。黙って受け取る正男。さらに「これはな"天使の鈴"って言ってな、これを
振って鈴をならすと天使が来て困った時助けてくれるんだよ」って。

 その晩、どこぞのお祭りに来た二人は色々楽しむのですが、素直に楽しめば良いものを無茶苦茶な
やり方で屋台を無茶苦茶にしていきます。 その内ヤクザに目をつけられるのですが……
正男を残して裏側へ向かう一行。結果はぼこぼこにされ帰って来るのですが。「喧嘩に負けた」とは言えない
男は「階段から落ちた」と苦しい言い訳をしながら正男の所へ帰ってきます。正男はそこを飛び出し既に閉まった
薬局に行き無理に開けて貰い薬を買ってきます。

 行きしなは母親の写真を見ることが多かったのですが、帰りは鈴を振る事が多くなり、暇があれば
鈴を振る事を続けるようになりました。そんなある時鈴に天使が降りてきたのです。正男には見えたのか
どうかは分かりませんが降りて来たのです。それから暫くして行きしに送ってくれた気の良い兄ちゃんに
また出会えます。で、東京まで送ってもらえる事になったのですが、2,3日キャンプでもしようと
言う話になり川沿いでキャンプをする事に成ったのですが、そこに"天使の鈴"をくれた兄ちゃん二人組み
がやって来ます。彼らもする事が無いみたいで一緒にキャンプをする事になり、つれない魚の代わりに
魚の役になったりとか、いろんな遊びをして…と途中男は老人ホームに行くと言い出しバイクに乗って
行くのですが、そこには自分から人との交際を嫌ってる観じがする男の母親が居ました。結局男は母親を
呼ぶ事は無く遠目で見るだけにして引き返してきたりと、各個人が色んな思いを潜めつつ時間は過ぎていきます

 東京に帰る時となり一緒に遊んだお兄ちゃん達とも別れて東京に向かい何事も無く帰ってきます。
運んでくれた兄ちゃんはまた旅に出ると言って別れ、最後に正男と男が別れる事になるのですが、ここまで
男の名前は判らないままでした。最後に正男は「おじさんの名前は何て言うの?」って言う質問に、男は

「菊次郎だよ バカヤロー」。


〜感想〜

○ 音楽に泣けた? それとも、話に泣けた?

 なぜか泣けました。自分でも判りませんがなぜか不覚にも涙が出ました。
しかし、自分の母親が同じ事だったらどうだろう? やっぱり同じ事したかもって気がします。
そして、同じ様に別の生活をしてる母親を見つけたら自分ならどうしてるだろう?
強くなれるかな?それとも……やっぱり判りません。
 菊次郎が映画の中で「この子も俺と一緒なのかぁ」と言ってるシーンがあり、途中で自分の母親
を見に行くシーンもありました。その後の荒れ様を見ればいつまで経っても忘れる事の出来ない
物なんだろうなって感じがしました。個人的にはこの後の正男には菊次郎みたいに強く生きて欲しい
と願うのですが、これを見た人はどう思ったのか気になる所です。

● キャラクターが自然体です

 映画の作りが教科書通りと言うかマニュアルっぽくなく、斬新な感じで一方的に情報を与える
では無く、見てる側にも考えさせられるようなシーンも有り退屈しません。実際2時間前後有るのですが
時間は殆ど気にならないです。いたる所に遊び心が有り、懐かしくそして楽しくそして…。
 俳優も普段見るそのままの姿で、違和感も無くあくまで自然体であり見ててホッと出来ます。
ギャグもいたる所に含まれていてそれにカメラワークとあい重なって笑えます。ただ、前半と後半の
ギャグの意味合いが変わってくるのですが……

☆ 人情じみた地味な映画も良い物です。

 爆風だ、銃だ、派手だとか最近の映画はそー言う系統が多いですが、こーいう人情じみた
映画は良い物です。映画館を出る時何故か優しい気持ちと言うのか柔らかい気分で出てこれます
なんか忘れかけた何かを思い出させてくれるような……そんな感じです。