10月も中旬、幼稚園を決めなければならない時期になりました。
 来年の4月のことなのに、なんでこんな前に決めなければならないんでしょうね。
 3年保育を考えている方なんて、早生まれの子だったらまだ2歳…今から来年の4月までの6か月の間に、こどもはずいぶん成長するでしょうし、迷ってしまいますよね。
 それに昔は、近くの幼稚園にいくものと決まっていて、よほど教育熱心な家庭でないかぎりそうしていたので、迷うこともなかったのでしょう。でも、今はあっちからこっちから幼稚園バスがやってきます。おまけに、見てみると、各園にはそれぞれ<特徴>があって、ずいぶん違いがあるので困ってしまいます。幼稚園選びはたぶん、こどもが生まれてから、自分が判断して決めなければならない、初めてのことなのではないでしょうか?

<なぜ、幼稚園にいかなければいけないの?>
 まず、こんなことから考えてみませんか?
 赤ちゃんのときは、おかあさん(おとうさん)さえいればよかった。保護し危険から守ってくれる人が何より必要でした。だんだん、大きくなってくると、守ってくれるばかりでなく、自分をたっぷり愛し、成長を喜んでくれる人が大事でした。
 でも、自我が出てくると、それじゃあ物足りなくなってきます。家(おとうさん、おかあさん)という安全基地・ペース基地をもったうえで、もっと冒険してみたいんです。
 そして、よその子のことが気になりはじめます。スーパーにいっても、ファミリーレストランにいっても、道を歩いていても、同年代の子が目立ちます。ちょっかい出してみたくなります。
 そればかりでなく、おかあさんがいないと、こども同士のけんかをしても泣かないでがんばれたりします。おかあさんの嫌いなあそびもたくさんしたくなります。おかあさんの目のないところで、違う自分を発揮したいんです。おかあさんには「もう、親だけでは子育てしきれない」と、つくづく感じる頃だと思います。
 そう、こどもはこどもの中で育つ、こどもはこどもとの関係の中でしか得られない成長の部分があるということです。(そのことは小さくても言えますが、集団の中でということを考えると、やはり4歳の頃かしらと思います。地域や家庭状況によっても違うでしょうけれど)
 こどもがこどもを必要としていると感じるなら、幼稚園入園を考えたらいかがでしょう。

<3年保育にするかどうか>
 ここ10年、3歳から入るこどもが多くなりました。それまでは、ほとんどの園が4歳からの2年間でした。少子化にともなって、園の経営上の都合で<3歳児保育>が始まったところも多かったと思います。それから、『3歳までは親子で』と言われてきたけれど、母親たちがもう待てなくなったこともあるでしょう。待てなくなった理由はいくつか考えられます。
(1)核家族で、昼間はマンションやアパートの中で親子ふたり。24時間縛られている感じで自分の時間をもちたい。もう、限界!
(2)こどもは家の中だけでは育てられないことをつくづく感じる。こどもはやっぱりこどもを求めていると感じる
(3)体力があまっている。母はもう追いつけない
(4)公園などで親つきであそばせていると、親同士の気遣いのために、こどもを思う存分あそばせられない。(逆に、わが子が物をとられたり、けんかしたりする姿を見てられない)
(5)知恵もついてきたし、口も達者になってきたけれど、何をどう教えていけばいいのかわからない。プロという人たちにまかせたい
(6)ひとりっこでわがまま。こどもたちの間でもまれる必要がある
 だいたいこんなことでしょうか? 
 とは言っても、まだ手放したくない、こんな小さいのにかわいそう、子育てが楽しくて、まだ私がじっくりつきあいたいという方もあるでしょう。

「3年保育にいれたほうがいいですか」という、質問をよく受けます。
 特に3歳は感性が豊かなときですし、自我が強いときですから、大勢で一律に集団として動かす保育だったら、私は好ましいとは思いません。
 人間としてのスタートともいえる3歳、自己主張が強く自分中心に地球が回っている3歳、親と自分が別人格だと気づくとまるでひとりで生きてるような気になって、ほめてもらわないと傷つくプライドの高い3歳。そんな3歳の特性をそのまま受け止めていくことで健康なその後の育ちがあると思っています。個々のこどもを大事にすることで、個と個の感情の行き来がはじまり、他人にも感情があることに気づく時期だとも考えています。

 ですから<指示や命令に従えて集団をみださない子がいい子>という評価を受けるような幼稚園に入ることは、賛成しかねます。(もっとも、そういういい子になって、周囲にご迷惑をかけずに、誰かの指示に従って人生を送ってほしい方は別ですけれど…)だから、3歳児でいれたいなら、ちょっと考えて選んでほしいな。
 4歳になれば、言葉でのコミュニケーションも上手になってきますし、先生の存在も大事ではありますが、こども同士の関係にこどもの目は向いていますから、3歳よりは抵抗力があります。5歳ともなれば、おとなの目をかすめる生きる力(したたかさ)も出てきます。迷うようだったら、まだ、いれなくてもいいんじゃないでしょうか。こどもをよく見て、ご自分の気持ちもよく見て判断してください。

 こどもは人見知りで、まだ、おかあさんから離れられない、そして、ご自身もまだ放したくないなら、文句なしでいれなくていいですよね。だって、幼稚園はこどもがこどもを必要とするから行くんですからね。

 こどもは人見知りで、まだ、おかあさんから離れられない、でも、私は自分の時間がどうしてもほしい。
 この場合はご両親が「まぁ、いいか」と思える園があればいれてもいいのではないでしょうか。おかあさんが元気なことが大事です。時間の長さではありません。

 こどもはワンパクでこどもを必要としていて、幼稚園にいきたいという、けれど、母はまだ自分の目の届くところで、安心して見ていたい。
 この場合は、幼稚園ではなく、親子で定期的に集まってあそんでいる自主保育グループが近くにあるかどうか、役所や保健所に問い合わせてみたらいかがでしょう。なかったら、つくっちゃえば?

<どこがいいの、幼稚園?>

「自由保育」といっている園は、こどもが自由にあそびを選んで、あそぶ時間が長く、一日のうち、30〜40分程度一緒の時間を設けているところが多いと思います。
「一斉保育」というところは、一日のプログラムがかなりきちんと決まっていて、先生から出された課題をやります。自由あそびという時間も多少あります。
 保育の形態で、どちらがいいとは一口には言えません。
「自由…」といっても放任に近いところもあれば、「一斉…」といっても嬉々としてこどもたちが取り組んでいるときもあります。
 園の方針や園長先生の話も参考になりますが、一番はこどものあそんでいる光景を自分の目で見にいってみることです。そして、園の雰囲気がいいなと思える、そこで、自分のこどもがあそんでいる姿が想像できるなら、それが、あなたにとってのいい園だと思います。理屈より<勘>が、確かなバロメーターのような気がします。

「先生の目が行き届くでしょうか」という質問もよく受けますが、正直いって、ひとりの保育者が大勢のこどもを見ているのですから、十分に目が行き届くということはありません。なにしろ、家では一対一ですからね、こどもの様子も気持ちも見えるでしょうけれど、幼稚園ではそうはいきません。目が行き届かないことが心配なら、幼稚園なんか行かさないことです。
 自分の手もとから放して、自分の目の無いところに行かせるというのは、それだけ、そこにメリットを感じなければできないことだし、それなりの覚悟か必要だと思います。

 こどもと親の選ぶ幼稚園が違う場合、何といっても、まだこどもが自分で判断できる年齢ではありません。
 こどものセンスって、ちょっとわかんないときがありますよね。キラキラ遊具に魅せられてしまったりね。月謝を出すことに後悔がないように親が選びましょう。親が好きな園ならば、先生との信頼関係もとりやすく、必ずこどもも好きになりますよ。

 近くの友だちがいくところがいいのかどうか。
 こどもの友だち関係って案外変わっていきます。主導権をとれることが好きな時期もあれば、それでは物足りなくなって、おにいさん的なこどもが好きになったり…。ですから今の友だちで選んだら、入園後ちっともあそばないということも、よくありますから要注意!

 夫婦の考えが違う場合 お互いに自分の育ちが背景にありますから、違うのが当たり前かもしれません。よく、自分のこども時代を思い出して話し合うこと。どうにもこうにも折り合えないときは、ふたりでそれぞれお薦めの園を見にいくこと。それでもだめなら、じゃんけんかな? だいたいは母の勝利が多いですねぇ。やっぱり、毎日のこどもの姿見てるし、入れ込み方が違うのかしらね。

 以上、思いつくままに書いてみました。参考になればうれしいです。もっと、聞きたい方はメールでどうぞ!

(イラスト/ラタポン)

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