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柴田愛子 ill Takasima.N
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多少の緊張と、どんな子がいるのだろうかという楽しみな気持ちで、新学期を迎えます。
初めてわが子を入園させる親御さんは、きっと、不安や心配の方が大きいのではないでしょうか。
先週木曜日、「明日も来てね」と保育者が言うと、「えー?」と、ため息混じりの子が多くて笑ってしまいました。そうですよね、子どもは「幼稚園が始まる」とは聞いていましたが、まさか、毎日お母さんに置いていかれるなんて、思ってもみなかったでしょう。週末ともなると「もう、いい」「つかれちゃった」って気分にもなるでしょう。新しい生活が日常になるためには、もう少しの時間がかかります。
ところで、毎朝、無事に行っていますか? うまく離れられますか?
朝の離れるとき、園に入っていくときが、親も子もいちばん力むときかもしれません。
ななちゃんは、いままで毎日笑顔で過ごしていました。今日も「おはよう!」ってニコニコやってきました。玄関で、お母さんと部屋の中を眺めています。数分がたちました。まだ、一歩の敷居がまたげません。でも、視線は部屋の中に向けられています。その数分が、おとなにとってはもどかしい。
「今日は、目がかゆいのね。ぬれティッシュで拭いてあげよう」と、お母さんが目を拭きました。とたんに目は涙で濡れ始めました。もうだめです、止まりません。身体はすっかりお母さんの方を向き、かじりついてしまいました。
さっきのニコニコに、おとなたちはそんなバカな、大丈夫だったのにと思います。でも、ほんとは違うんです。毎日ニコニコしていたのは、楽しくてうれしくて来ていたからではないのです。まだ、そんな子はいないでしょう。子どもながらに精一杯前向きにがんばっているんです。だから、ささやかなことでチョンとつつかれれば、後ろ向きになってしまうのです。
りょうちゃんは3歳、初めての集団ということで、お母さんはとっても心配しています。子どもが少し慣れるまでということで、保育室の中に入って、いっしょに座って周りを見ていました。だいぶ表情も柔らかくなり、保育者に「もういいみたいですね」と声をかけられました。心配の量はお母さんの方が大きかったようです。
「大丈夫? お母さん行くからね。お迎え来るからね」と、手を握りました。
ワーンと泣き出しました。
そりゃあ、そうでしょう。だんだん気持ちが子どもに向いてきたころに、お母さんに引き戻されてしまったのです。でも、保育者に抱えられて引き離されました。10分も泣きませんでした。気持ちは子どもに向いていたのです。
親子の別れ方、難しいですよね。まだ、子どもにとって安心できる、自分から飛び込んでいきたい場所にはなっていません。でも、そうなるには、今を越えていくより仕方ないのです。
子どもの不安は、子どもが解決していくより仕方ないのです。
ですから、あまり宙ぶらりんや、ぐずぐずが長引かないほうがよいかと思います。
うまくやっているお母さんがいます。
「じゅう抱っこしたら、バイバイしようね」と、一方的ですが言い切ってしまいます。ぎゅうと抱っこして、いち、にい・・・徐々に子どもも覚悟します。うまくいくと、「じゅう!」でバイバイ。うまくいかないときも「おねがいします」と保育者に預けて飛んで返ります。泣く子を置いていくときは、振り向かないことが大切!
「あくしゅ! 1、2、3!」という人もいます。
「時計の針が5のとこまでね」という人もいます。
ちょっとした覚悟の時間、そして、ぱっと離れる、がコツかも。
「なにしてあそぶ? あの子おもしろそうなことやっているよ、あなたもどお?」などと、言葉でいろいろ言い聞かすのは、あまり効果がないように思います。
もちろん、親のタイプ、子のタイプにもよりますから、いろいろ試みてください。
保育者も一日、一日、子どもの様子を見ながら一喜一憂している頃です。どの人もドキドキ、でもその先には、絶対「たのしい!」という笑顔が生まれてきます。頑張りましょう!
(前回は「母の最後」を書かせていただきました。多く方から冥福を祈って頂き、慰めや励ましの言葉をいただきました。いつも読んでくださっている、まだお目にかかったこともない方からもいただき、大変驚き、感激しました。ありがとうございました。)
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