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柴田愛子 ill 高島尚子
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埼玉県の大宮に話しに行くことになっていました。
このごろはパソコンで電車の乗り継ぎや所用時間を調べていくので、無駄がありません。この日も前日に調べました。山手線大崎駅から埼京線、渋谷から埼京線、上野から・・と、いくつかの行き方が出てきて、メモっておきました。
当日、わが家の最寄りの駅、池上線の「雪が谷大塚」に時間通りに行き、ホームで電車を待っていました。来たのはいいのですが、ちょっとドアの位置がずれました。柵のようなものがあり、柵の間にドアが来ると開くのですが、ずれてしまったために開きません。運転手さんは気づかずに「ゆきがやおおつかー、おおりのかたは・・」とアナウンスして、運転席のドアを開けて出てきてから、びっくり! もどってバックさせたかったようですが、動きません。大あわてです。
運転室から出て鍵をかけて、なにやらとんでいきました。誰かを連れて戻ってきて、運転室の鍵を開けて中に入り、やっと電車はバックしました。所定の位置に止まりドアが開いて、私が乗り込んだときは3分過ぎていました。そのあと、着く駅駅で人が多く乗ったためでしょうか、終点五反田に着いたときは5分遅れでした。
さーて、走った走った!
しかし、予定の大崎についたときには、乗るはずの電車はいませんでした。次の電車はなんと、20分後! どうしよう遅れちゃう! どうすればいいの?
パソコンに出てきた大崎と渋谷、上野は方向が全然違います。いったい大宮はどっちなのか、見当がつかないのです。
とにかく車掌さんに聞こう!
ところが、ホームにはだれもいません。
階段を駆け上がり、改札口まで走ります。
「今から、大宮まで、どう行ったら早いですか?」と聞き、指示どおりに。結局15分も遅刻してしまいました。
目的地の地理を頭に浮かべての情報をもたず、ただ、パソコン様の言う通りにしたために、自分ではどうにも動けなかったのです。情けないことです。
こんなふうに、一見無駄がなく、便利になり、安心していられそうだけれど、実は逆に不便で、不安を引き起こすようなことがたくさんあるのではないでしょうか。
子育てもそうかもしれません。
何ヶ月で何ができるようになる、何歳でどんなことができるようになる、こんなときはこんなふうにしましょうと、情報が簡単に手に入ります。おかげで、初めての子どもを育てるときも、先の目安を持つことができます。けれど、その通りにいくことは少ない。だのに、こういう場合はどうするの? と、聞く人がみつからない。どうしてそうならないのか不安になり、その原因をつきとめたくなる。けど、だいたい子どもの育ちなんて個人差が大きく、教えたから歯が生えてくるわけでもなく、言い聞かせたからといって歩くようになるわけでもない。
昔のように情報が少ないと、おおまかな発達がわかっているくらいで「あら、歯が生えたわ!」「あら、歩いたわ!」と、単純にそのことを喜んでいられたんではないでしょうか。
子どもだって、先々を見通されて「やっと、できたわね」「ちょっと早いわね」「ずいぶん遅いわね、早くできるようになりなさい」と言われながらおおきくなるより、「できたね」「じょうずだね」「おおきくなったね」と、親ばかしてくれる方が心地よいに決まっています。
狭い情報は融通がきかなく、苦しくなるだけです。 多方面から幅のある情報を集めて、その中から自分と子どもにあった子育てを見つけていく事もいいでしょうが、情報はあまり耳にしないで、わが子はわが子の成長の物差しで一目一目を伸ばしていく方が、子育てを楽しめるような気がします。視野を広げ、親子でいろんな体験をしていくことで、いい加減な子育てもできていくのだろうとも思います。
今度は、大宮がどの辺にあるのか、どんな電車が通っているのかを調べて、だいたいの所要時間を考えて行くことにしましょう。
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