柴田愛子 ill Takasima.N   

 今日は子どもの話ではありません。世間のおばさんたちの話です。

 久しぶりに路線バスに乗って出かけました。
 私はバスが大好きです。いちばん前か、いちばん後ろが好きです。いちばん前は景色がよく見えるから、いちばん後ろは一段高くなっていて景色も隣を走る車もよく見えます。さらに、バス中眺められるところが気に入ってるんです。
 この日は、いちばん前に座ってみたら、景色が見えにくいので途中で移動、でもいちばん後ろはふさがっていたので、仕方なく後方窓側に座りました。快適に乗っていったら「やめてよー」という女性の声が響きました。痴漢? と思ったら違いました。70歳近いその女性は、傘の先でクーラーの風が吹いてくるところの向きを変えながら「冷房なんてやめてよねー。寒いじゃない」と言いました。この日は、いい天気で気温が26度くらいあったかもしれません。バスの中はクーラーがついていました。
 運転手さんが「お客さんの要望で、クーラーを止めます」と、アナウンスしました。

 だんだん人が多くなってきて、5、6人立っています。
 だんだん暑くなってきました。汗がでるほどではありませんが、紙であおぎ始めた人もいます。すると「暑いじゃない。なんで一人のために、みんなが我慢しなくちゃいけないのよ。わがままよ」と、後ろの方に座っている60代くらいの女性が、聞こえるように言いました。「そんな人は、のんなきゃいいじゃない」とまで、言いました。
 私はこのくらいの暑さでは、クーラーはなくてもいい気がしました。まだ、クーラーをつけなければ耐えられない程ではない。その前に、窓を開けるという発想があってもいいと思い、窓を開けました。空気が悪いとか、風がイヤとかあるのかもと思いましたが、開けました。すると、他の人も開け始めました。
 でも、運転手さんのアナウンスが聞こえてきました、「お客様の要望で、クーラーをつけます」と。
 運転手さんは、自分の判断で決めてはいけないんでしょうかね。サービス業なんでしょうかね。大勢の命を乗せて移動してくれている人なのに、なんか、いちばん主役になっている人が決められないなんて、気の毒にも思いました。

 いろいろ考えながら、ふと、窓の外を見ました。
 50代くらいの普通のおばさんが、自転車に乗って歩道を走ってきました。なんと、そこに止めてあるよその人の自転車のかごに、ゴミをごそっと入れてたのです。止まらず走りながら。
 ほんとにいやなものを見てしまったと、気分が悪くなりそうでした。
 だって、変な人じゃなかったのです。普通にちゃんとした人だったのです。

 前に座っているおばさん二人の話が耳に入ってきました。何の話の続きかはわかりませんが「今の若い人は、わがままよね」って。
「まったく、どの人もこの人もわがままだー! おばさんもおじさんも、みんな自分勝手でしょうがないじゃないかー」と、叫びたい一日になりました。
 若い人も、中年も、年寄りも、わがまま者が多くなっているのかもしれません。(5月9日記)


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