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柴田 愛子
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桜の街路樹に実がなっています。つまり、素朴なサクランボ。(写真はグミです。念のため)
小指の爪くらいのかわいい実です。
赤くてかわいいのは、すっぱいです。
黒いくらいのほうがおいしくいただけます。
りんごの木の小さい組の近くになるのは、ホントにおいしいです。毎年楽しみに行きます。今日も3歳児が出かけて食べてきたのでしょう。口の周りが、くわんくわんに赤黒くなっています。
子どもたちが食べていると、物珍しげにおとなが通ります。
「食べられるんですか?」と聞かれると、
「食べられるんですよ。結構甘いんです。食べてみませんか?」と、ついついお勧めしてしまいます。
大きい組の近くにもなっています。少し小さくて硬めです。ひとつ食べてみたら、まずい! でも、子どもたちの口の周りは赤黒くなっています。
「これ、まずいねー、食べたの?」と聞くと、
「そのきはまずいんだよ。こっちのきのはおいしいよ」ということで、試してみたら、なあるほど。木によって味が違うんですね。
さて、まずいサクランボはどうなったかというと、地面に捨てられることなく、ジュースやさんごっこになりました。ボウルに水を入れ、その中でサクランボをつぶすと、それは綺麗なブドウ・ジュースができます。
「それ、すごくおいしそうね。ちょっと飲んでみない?」と、のぞいたら、
「あ、だめ! このボウル、あわぶくやったヤツだから!」と、止められました。
『あわぶく』とは、ボウルに石けんとわずかな水を入れ泡立てるあそびで、もう7年くらい伝承され続けているものです。今も子どもたちは、毎日チャッチャッとかき回し、生クリームのようなきめの細かい、艶のある、逆さにしても落ちないあわぶく作りに燃えています。
そのボウルは石けんが着いているので、やめた方がよいということでした。なんと、ちゃんとしている子どもたちでしょう。
「じゃあ、きれいなコップに水、入れてくる!」
私はワクワクしていました。もしかしたら、ホントにおいしいサクランボ・ジュースになるんじゃないかと思いましたから。
サクランボ色が映えるように、白いコップにしました。
つぶすときも手じゃ汚いから、アイスクリームを食べるちょっと平たいスプーンにしました。
水も入れて、新鮮で甘い方のサクランボを取りに行きました。
確かに美しいジュースのようでした。
でも、何の味もしません。
見ていた子どもが「ちょっと、のませて」と言うので、ひとくちずつ回しました。
「これ、ただのみずじゃん!」
ホントにそうでした。がっかり。
ちょっと考えてみればわかることでした。何のジュースだって、果実を大量に搾るか、砂糖をたすかしてるんですから、こんな小さなサクランボを3つぐらい入れて水の中でつぶしたって、ジュースになるわけありませんでした。
でも、がっかりしちゃいました。
一人の子どもも、色にごまかされておいしく思ってくれなかったことも、ちょっとがっかりでした。
子どもたちはジュースやさんで盛り上がっていました。
その隣には、あわぶくのアイスクリームやさん。コップからあふれ出しそうにあわが盛られています。白だけでなく、ピンクや黄色もあります。
「いかがですか?」と声をかけられたので、買うことにしました。
「アイスください」
「なんにしますか? バニラですか、イチゴですか?」
「あ、バニラがいいです」
そんなやりとりをしながら、ふと、作っている子を見ると、今まで登場したことのないあわぶくをやっている子がいます。
ボウルに石けんと水を入れてかき回すところまでは同じなのですが、その中に泥を入れてるんです。
今までのあわぶくは、絵の具で色を付けていましたから、パステルカラーで綺麗だったのですが、これはちょっと美しい感じではありません。
でも、ちょっと、しゃぶしゃぶのごまだれに似ていました。ベージュ色のクリームの中に、泥のつぶつぶが交ざっている感じです。
「あ、それ、ごま入りですか?」と聞きましたら、ムッとした顔で、
「チョコチップです!」と言われてしまいました。
子どもはいろんなことしてあそびます。いろんなこと思いつきます。どうも、私はピントずれ? (6月5日記)
写真=りんごの木の庭にて(3歳児クラス。本文とは関係ありません)。
庭のグミの実が赤くなっています。サクランボとおなじように食べられます。しぶい味の上に種が大半で、もうひとつですが、季節感はあります。好きな子は、いくつもとって口に入れています。
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