タイトル

 寒い日が続きます。お日様がでているかどうかで、気温がずいぶん違います。日だまりを見つけて、遊んだり、お弁当を食べたりしている子どもたち。

 4、5歳児の保育室は外の通りに面しています。ですから、屋外の通行人から丸見えのところでお弁当を広げているのを見ると、ちょっとひんしゅくものかしら? と戸惑います。

 でも、子どもにとっては、温かいお弁当を食べるのには最適な場所のようなのです。

 子どもの常識とおとなの常識はずいぶん違います。

 子どもの文化とおとなの文化、子どもの価値観とおとなの価値観は違うことだらけです。

 だから、ほとんどの場合「まあ、いいか」とやり過ごしている私です。


 さて、お母さんたちにお話しにうかがいますと、話した後に、ざっくばらんな相談を受けることがよくあります。
「子どもが鼻くそを食べちゃうんです。ダメと言ってもきかないばかりか、今度は私につけにくるんです。どうして、汚いことをするんでしょう」ときかれたことがあります。
 そうです。子どもはほとんどもれなく、鼻くそを食べます。

 2歳から幼児まで見ていると、指で鼻をほじくっていたかと思うと、次には指を口の中に……。

 私だって、ちょっと見ていられず、目をそらします。

 でも、どうも「きたない」という感覚はないのではないかしら?

 自分の身体から出たものだし、適度の塩分があっておいしいのかもしれない。

 ダメとか汚いとか言われるので、過剰に反応してしまい、くっつけにくるんじゃないでしょうか? 小さい子どもや認知症になった老人は、自分の便に対しても汚いという感覚がないようです。

 そう考えると、いつの頃から汚いと感じるようになるのか、はたまた、本当に汚いのかと考えてしまいます。でも、やっぱり食べてみようとは思えませんね。文化の違い「まあ、いいか」で流しましょう。

 

「家に帰ると、ぼんやりしているんです」
 帰ったらやるべきことをしない、というのです。
「やるべきことって、なんですか?」と聞くと、

「手を洗って、うがいをすることです。それも、ぬれないように洋服の腕をめくって、両手で手の甲や指の間をちゃんと洗うことができないんです」と言います。
「それで、あなたは近くにいて、言い続けるのですか?」
「はい」
「うるさい! いちいち言わなくてもいいです。毎回言い続けられたら子どももぼーっとします」と返してしまいました。


 だいたい、現代はおとなの清潔感がいきすぎているように思うのです。除菌除菌、衣類も清潔、家の中もきれい、それはそれでいいのかもしれませんが、神経質になりすぎていませんか? 

 だいたい、帰ったら手洗いうがいは習慣です。生活習慣は言われてやれるようになるのではなく、真似て身につくものではないかしら?
「いただきますは!」と、強要されて言えるようになるのではなく、家族が食事の時に「いただきます」と言うから、言うようになる。

 うがい手洗いもこのたぐいではないでしょうか。

 これから、様々なことがあります。手を洗えない状況だって、多々起こりうる。徹底して身につけさせて、融通が利かなくなって本人がパニックになるより、いい加減がいいです。


 だいたい、子どもは「顔洗った?」と聞くと、指でちょんちょんと顔に水つけて「あらった」ってシャーシャーとしています。監視してまで、やらせることではないのではないかしら。
 子どもはもれなく雪を見れば食べます。
 幼い子は砂や砂利も食べたりします。
 水たまりの水やお風呂の水も飲みます。
 けど、それでお腹を壊した例はほとんどないと思います。

 喉を詰まらせるような危険なものもありますから、ほっておいていいとはいいませんけれど、「まあ、いいか」もありだと思いますよ。
 きちんとした方ほど子育てが苦しいのは、この子どもとおとなの違いがひとつの原因ではないでしょうか。

 人間も動物のひとつ。太古の時代から生まれ方は変わっていません。

 しかし、生活の仕方や住まい方は、遙かに文化的というか、清潔になっています。ギャップが大きい分、動物的な子どものやり方を認められずに、強引におとなに近づけようとします。おとなも子どもも窮屈になります。小さいうちはおおめにみないと身が持ちません。いい加減な子育てを!

                                     (2月9日 記)

 

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