タイトル

 緑の美しい季節になりました。はやばやとの台風には驚かされましたね。
 新学期を迎えた子どもや親たちも、徐々に新しい生活に慣れてきたでしょうか?

 小学校ではすでに参観日や家庭訪問などがされていたり、運動会の練習も始まったり、動きが速く感じます。
 先日、一年生の親の集まりがありました。PTAなどでいらっしゃれない人もありましたが、思い思いの話があふれ出ていました。一見すんなりと馴染んでいる子もいれば、疲れてじんましんがいっせいに吹き出した子もいます。
 宿題を「先生が持って帰りなさいと言っただけだから、持って帰ってきて持って行けばいいんだ」と解釈してやっていかなかったら「持って帰ってやってくるんだって!」と、翌日持って帰ってきた子。
「学校はこりごりだよ。すわって、しゃべっちゃいけなくて」と、ため息をついていて、毎朝向かっている子。
 ちゃんとしているようなのだけれど、今までのあの子とは思えない。頑張りすぎて無理しているんじゃないか心配という親も数人いました。

 私は「頑張っているときに頑張りすぎないでいいんだよと言われたって、今は頑張っちゃうのよ。頑張っているときには頑張ったらいい。もし、本人の力量以上に頑張りすぎたら、そのうち体調が悪くなったり、何らかの症状が出てくる。そしたら、頑張って疲れたね、とホッとさせてあげたらいいじゃないですか」と話しました。
 そして、親たちの学校や担任の対しての感想は、なかなか鋭いものがありました。
「初日に、大切に育ててくれたお子さんをお預かりしますと先生が挨拶して、感激したのよ」と、ひとりの親が言うと、

「え! それ、みんな言っているよ」。
 先生「右向け右!」というと、子どもが従うことに優越感を感じてる?
 どうしてそんなにきちんとさせたいのか、「ていねいに」「ちゃんと」の連発。
「ペタ ピン グー」っていうの。何かと思ったら、手は机の上にペタ、背中はピン、机と身体の間はグーの距離、ということだったの」

 さらに「机の上、スイスイできている?」というのは、手で机の上をスイスイすべらせる、つまりきれいになっている? ということだそうだ。
 保護者に対してはにこやかな顔を見せるけど、子どもに向かうとがらっとかわる。
 やはり、管理的なやり方に、子どもより親のほうが抵抗を感じているように思います。

 担任の人柄がわからない、考え方がわからないという不安から、いっそう懐疑的に見てしまうのではないかと思いました。

 

 保育園、幼稚園の保育者から寄せられる話も、まだきちんとできない子どもにきちんとを強要。まだ食べられないのにさっさと食べるように口に押し込む。ダメという言葉が日々頻繁に使われるなどの声が入って来ます。

 こちらは、親は実際を見ていないのと、子ども自身が伝える能力がないので、親からの声より、保育者として気持ちがおさまらない方々からの声です。
 いつの頃から、さっさと、きちんと、ちゃんと、と子どもをせかすようになったのでしょう。

 

 りんごの木では、新しい活動を始めました。<子育てカフェ>や子どもの<一時保育><子連れオーケーのヨガ教室>などがあります。(ホームページをご覧下さい
 その<一時保育>の初日のことです。

 卒業生の親で保育経験者に担当をお願いしました。二人の子どもがいました。ひとりは顔見知りでしたが、この日は別人のように泣いていました。保育者が心に添いながら、話しかけます。すると、ちゃんと反応が返ってきます。靴を履いてお散歩に行きます。1歳半の二人に二人の保育者。贅沢なことではありますが、初めてのことに保育者は必死です。子どもも親と初めて離れて必死です。なんともすてきな光景でした。

 かわいくて「明日も来てね」と言いたくなってしまいました。


 ふと、子どもの頃のことを思い出しました。私が小学生の時には、地域に子どもの群れがありました。9歳年上の姉は赤ちゃんが好きで、よく近所の子をおんぶしていました。子どものいない裏のおじさんやおばさんの所にも遊びに行ったものです。たいていおやつがつきました。
 おとなになってからも、前に住んでいる方が三人目を出産するときに、姉は上の子を預かって世話をしていました。すでに社会人になっているその子どもたちとの関係は続いています。
 子どもをかわいいと思い、子どもといることでこちらが幸せな気持ちになる。
 子どもにあげるものより、もらうもののほうがすっと多かった。その原点を忘れかけていたように思います。
 おとな同士が信用しあって、子どもを預け合う。小学生にさえ預けられたのです。

 今は、契約をし、お金のやりとりがあって子どもを預ける。何かがあったときのことを考え、責任をハッキリしておく。

 かわいくていっしょにいたくなる子どもに代わって、ペットのイヌやネコがもてはやされているのかもしれないと思いました。
「子どもといることで幸せな気持ちになれる」

 そんな気持ちをおとなたちに思い出してほしいです。

 そんな気持ちを保育者は心の基盤にしてほしいです。(5月18日 記)

 

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