タイトル

 今年の夏は、追い立てられるような日々を過ごしています。
 保育者向けの講演会、りんごの木の夏季セミナー、原稿書き、そして、20日に卒業生のキャンプを無事終えたところです。
 ということで、つれづれもすっかりご無沙汰していました。


 今年の卒業生ペガスス・キャンプは、150名の子どもたちと懐かしいときを過ごしました。
 一年に一回、七夕のように会う子どももいますし、10年ぶり、7年ぶりという子どももいます。さすがに10年ぶりとなると「だれだっけ?」と聞いてしまいます。好青年になっていて感激もひとしおです。ところが、数日共に過ごしているとすっかり幼いときの表情が思い出されて「ちっともかわらないねぇ」となってしまうのですから、不思議です。
 宮崎から姉妹で、滋賀から兄妹で、名古屋から、栃木から、群馬から、千葉からと遠方から来てくれた人もいます。
 日帰りで赤ちゃんを連れて、家族で来てくれた人もいました。
 りんごの木を長くやってきたんだなぁとつくづく実感するときです。
 
  7月に幼児を連れて行ったときにはカニはあまりとれなかったのですが、今回はわんさかとれました。50匹近いと思えるカニをもった二人の子が「唐揚げにしたい」と言って来ました。熱した油に入れると音と共に香ばしい臭いがして・・・・。大皿に二杯! おいしいこと、おいしいこと! 一度味を占めると食べるためのカニ捕りになり、どん欲になっていきます。いつも誰かしらのカニを揚げてお相伴にあずかっていました。
 魚も捕れました。カジカの小さいものや、ハヤ、ヤマメ、鯉までとれて、これまた唐揚げにしました。二回目の子は「骨まで食べられるくらいに揚げて欲しい」といい、二度揚げまでしたりして。鯉は大鍋で丸揚げ!
 幼児や一年生は、生きていたものをそのまま油に入れて食べるということに、怖さも感じるのでしょう、生きたまま持って帰るという子もいます。
 たくさん小さなカジカを捕ってきた小学高学年男子二人が「唐揚げにする」と持って来ました。

 水分をとって、小麦粉をまぶし、油に入れます。

 小麦粉にまぶしながら彼は小さい声で「ごめんね」と魚に向かってつぶやきました。

 胸がつぶれそうになりました。こんな感性を持っていることに驚くと同時に、まさに「魂をいただいて、私たちの命がある」ことを感じているのですよね。私はこんな気持ち忘れていました。自然につぶやいた彼のことばは、すてきでした。


 今回は薪割りもはやりました。斧を振り上げ、薪がぽーんと真っ二つに割れたときは思わず拍手をしてしまいます。汗びっしょりかきながら続けている子をみると、誰しもやりたくなってしまう魅力があります。つぎつぎ挑戦しはじめます。
 川の縁でしゃがみ込んでいる子が数人います。この子たちは石を石にこすりつけて削り、ナイフを作っているのです。かなり鋭利な刃になります。
 となりでは葉っぱを石の上に載せ、細かく砕いて汁を作っています。この汁でゴーグルを磨くと曇らないできれいになるそうです。私のもぴかぴかにしてくれました。
 堰の上から飛び込んだり、ふざけあって落としあったり、男の子たちはこれを飽きずにキャーキャー言いながら続けます。会えなかったブランクは一気に縮むようです。
 身体が冷えるとお風呂に入り、遊び疲れると部屋の中でトランプや本。大きい子どもたちはおしゃべりに花を咲かせます。
 自然と仲間がいる空間はいいです。かつて「りんごの木」だったということだけで年齢差も関係なく、親しげになっていきます。
 大きい子どもたちに学校生活のこと、進路のこと、親との関係など、いろんな話を聞かせてもらいました。いろんなことを抱えてもいます。幼児の頃を振り返りながら、すでに自分史ができているなぁと思いました。そして、今を懸命に生きています。私自身の中学、高校時代の感性を思い出させられました。


 私はいっしょに川では遊びませんでしたし、犬の散歩も行きませんでした。スタッフや大きい子どもたちがいっしょに楽しんでくれていました。

 ご飯も作りませんでした。卒業生の母たちが、それはおいしいご飯を三度三度食べさせてくれて太って帰ってきたみたいです。

 私はなんにもしませんでした。

 子どもたちを眺め、子どもたちと話し、元気をもらってきたのですから、ありがたいことです。

(8月24日 記)

ベガスス

 

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