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 5歳児と一泊でペガススの家(西丹沢・皆瀬川上流)に行ってきました。2週間前に日帰りで行った同じ所です。
 39人全員参加です。おとなは8人。
 前日に聞きました、
「カニを捕まえたら、食べようと思っている人」
「そんなのかわいそうだから、捕まえても食べないと思う人」と。
 なんと、すべての子が「食べる」に手を上げました。人間、一度口にしておいしいと思うと、もう、カニは食べるものとインプットされてしまうのでしょうか?
 川の水は少なめでしたが、幼児にとっては安心な水量でした。
 川で泳いだり、堰からジャンプしたりする子もいますが、下を向いて拾いものをしている子が多いです。そうです、オタマジャクシ、カニ、石、カエルを見つけているのです。シカの骨を見つけた子もいます。
112 ぶら下げて上がってきたバケツの中を見ると、カニと小さなカエルが入っていました。

 5人くらいでバケツを囲んで眺めます。ひとりの子がカエルをつかみました。まだ小指の先ほどの大きさです。つまんだカエルをバケツに戻すと、動きません。みんな凝視します。
「しんじゃったのかなぁ」
「つよく、つかんだ?」
「そんなに、つよくしなかった」
 あれこれ話していると、
「うごいた!」
「なんだ、しんだふりしていたんだ」
 ホッとしたら、またつまむんです。
 つついたり、裏返したりもします。その度に、
「あら、また動かない」。
 カエルの死んだふりは、どんどん長時間になって行きました。
 その間に子どもたちはお腹に線があるとか、手がどうなっているのかとか観察しています。バケツをのぞいている時間が長くなってきました。
 私はおとなですから仕事だってあるんです。そこで、立ち上がろうとしたら、腕を引っ張られて座らされました。「そろそろ、うごくぞ!」って。
 子どもってすごいです。こんなにずーっとカエルを見続けられるのですから。あそぶって、こういうことなんだろうなと思いました。

 そして、今日のカエル観察の結論は「カエルは死んだふりがうまい」ということでした。
 前回行ったときより、カニは確かに大きくなってたくさんいました。
「水を二回替えて、お腹の中のものを出してから、揚げてあげるね」と伝えると、律儀に言うとおりにやってきます。
 でもでも、いざとなると気持ちが揺れます。たくさん捕れたカニを見ながら「ひとつだけにする」。
 小麦粉をまぶし、油の中に入れるとジュッと音がし、香ばしい匂いが……。新聞紙にあげ、塩をパラパラとふりかけて差し出すとうれしそうです。食べると「おいしい!」。そして、「やっぱり、あと二ひきもする」。
 小さいカニばかりでどうしましょうと眺めていると、なんとチビガニは集まる習性があるらしく、お気の毒ではありますが、カニのかき揚げとなりました。
 いっそのこといっぺんに来てくれれば、私にとってはありがたいのですが、ここは子どもの気持ち優先。次々やってくる子どもたちの意向に添って、揚げ続けました。
 夕飯のカレーを食べて、ホタルを見に散歩。こんなにちゃんと見られるのは珍しいです。それだけでなく、シカの鳴き声も。例年と何かが違うのでしょう。
 川に入り、五右衛門風呂に入り、食べて、あとは寝るだけ。

 こどもの遊び方にストップをかけないというか、かけられないせいで、部屋の中は寝袋と布団の洪水。棚からすべてを投げ落として戦いごっこをやったり、棚の上から飛び降りたり……。たぶん、普通の人は耐えられないだろう光景です。そこをかたづけて寝ようとするのは、やはり女子。そのまま、波に埋もれるように寝る輩たち。
 静けさの中で目をぱっちり開けている子、寝られずに辛くなっている子は、保育者がトントンします。いつもの生活と違うリズム、お母さんがいない寝床……でもね、やっぱり人間疲れていれば寝るんです。ママのおっぱいが必需品といっていた子も、すやすや。私たち保育者もいつもと違う生活、夜中にも子どもの気配、ときどき泣き声、というわけでなかなか寝られないものですが、どうにかこうにか、うとうと。
 出かける朝、送りにきていたひとりのお父さんが「あいこさん、疲れませんか?」と声をかけてくれました。上にも二人卒業した子がいるので、私の寄る年波を気遣って言って下さったのでしょう。すかさず「疲れるのよ!」と返事をした私。「疲れるのに、どうして行こうとするのかしら?」と自問自答。

 翌日は長野県伊那市で保育士研修会によばれていました。新宿から高速バスで3時間。ここで疲れがとれました。当然、行ったばかりのペガススキャンプの話をしましたが、聞いて下さっている方のどこの園でもお泊まりはしていませんでした。
「ずーっと前はしていましたけどね」とのこと。
「その代わり、近くの川で、親の手も借りて一日遊んだりしています」
 確かにこの地域は、わざわざ自然を求めていく必要はありません。でも、昔は当然のようにやっていたそうです。
 どうやら、近年は‘お泊まり’はしなくなっているのでしょうか?
 私も幼稚園勤務時代には、泊まるのがすごーく大変でしたから、絶対こんなことはやりたくない。だいたい小学校5、6年生でやることなのに、どうして幼児がしなくちゃいけないの? だれが、始めたのかしらと、恨みがましくさえ思っていたのです。
 ところが、りんごの木の4、5歳児を始めたときの子どもたちが「いっしょにとまりたい!」と、熱望するので始まってしまったのです。
 今はさらに冬に、雪遊びのお泊まりさえしています。
 改めて自問自答。
「どうして泊まりで出かけるの? かなりのリスクもあるよね? やめたい?」
 むー。でも、楽しそうだよ、子どもたち。薪のご飯はホッとする。自然の中での子どもたちを見るのは好き。
 恒例になりつつあることには警戒しなければいけません。
 ちゃんと立ち止まって、心と頭で向き合うことにしましょう。(7月29日 記) 

 

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