また、台風が日本列島を総ナメ。このところの気象状況の変化には、戸惑いますね。

 先日、4,5歳児の青りんご(赤りんごとは80メートル離れています)に行きました。

 青りんごの前で、ゆうじくんがうろうろしています。赤りんごに行きたそうです。けど、一人では心細いのでしょう。
「私も行くからいっしょに行こう」と声をかけて見ました。すると、すっと手を握ってきました。

 たぶん私は初めてゆうじくんと手を繋ぎます。ちょっとドキドキです。だって、ふと気がついて手を離されるかもしれません。

 でも、ずっと繋いで赤りんごに着きました。

 折角着いたのに、玄関から入りません。中を見ているだけです。
 そして「もう、かえる」とひと言。
 実は、9月からグループを変えました。ですから、まだちょっと心細い。でも自分は青りんごの人だということは承知しているので「かえる」と言ったのでしょう。
 何だったのかと思いながら「だれかとあそびたかったの?」と聞いてみましたら「はるきち(くん)とごうしょう(くん)」と言いました。

「はるきちいなかった?」「うん」「どこにいったのかしらねぇ」と、話していたら保育者が「あー、はるきちはザリガニ釣りに行ったよ」と教えてくれました。
 青りんごまで戻りましたが「探しに行きたい?」と聞くと「いきたい。ぼくしっているよ」と走り始めて、いつもザリガニ釣りをしている池のある場所に着きました。
「いない」足が止まります。
「呼んでみよう!」と誘い、ふたりで「はるきちー!」と呼びますが、シーン。返事はありません。でも、前に進みました。「はるきちー!」と呼びながら。
「あ、こえがする」
 確かに子どもの声です。そちらの方に向かって行きました。
 残念、幼稚園でした。
 こうなると、会わずには帰れない気になっています。
 あ! 数人の子どもの群れが池の縁にいます。
 走って行って、「はるきちー!」と呼びました。はるきちくんが気づいて振り向きました。そして、両手を広げて走ってきます。

「ゆうじー!」

 ゆうじくんは恥ずかしくて、私の足の陰に隠れるように身を寄せましたけど、はるきちくんは私の足も一緒に抱きつきました。

 なんだか、映画のシーンを見ているようでした。

 こんなに大好きな関係で、真っ直ぐ表現できるなんてすごいです。
 その後、りんごの木に帰って子どもたちが丸くなってミーティングするときにこの話をしました。みんなにも「だーい好き!って言う人がいるの?」と聞くと、なんとかなり多くの子の手が上がりました。
 ふと、朝沈んだ顔をしていたあきちゃんが思い出されました。
「怒っているの?」と聞いたら「そうじゃない」と言っていましたので「悲しいことがあったのかしらね」と言って、それ以上追及はしていませんでした。
 そこで「あきちゃんも好きな人がいるの?」と聞くと涙がポロリと出てきました。

「うん」

「それはだあれ?」と聞くと、

「じゅんりちゃん」。
 じゅんりちゃんもザリガニ釣りに行っていました。
 そんな話をしていたとき、ちょうど帰ってきました!
 じゅんりちゃんはあきちゃんの隣に座りました。やっと、あきちゃんの表情が晴れました。
 この人たちは4歳児です。たった一年、いえ、半年もたっていない子もいます。

 でも、親の居ない場所で、こんなふうに心の支えになっている関係をつくっていると思ったら、胸が熱くなりました。
 まっすぐな子どもたちは、まっすぐ結びついていくのですね。
 この関係は一生ものではないかもしれません。
 子どもは友だちを変えながら育っていくことも多いですからね。
 でも、このまっすぐは素敵です。見習いたいです。(10月1日 記)


 

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