ぬぬ

 雨、風、暑さ、地震……なんか、ウイルスだけでなく、しごかれていますよね。

 

 その日は風が強く、ときどきジャーッと雨が降っていました、
“はたけ”とよんでいる空き地で過ごす日です。4、5歳児混合で20人程度。
 小さな小屋が二軒あり、その中に子どもたちは入り込んでいます。
 ゆいちゃんが来ましたが、表情がかたいです。小屋の中には入ろうとしていません。
「今日は風が強いね。ここに座っていましょうか」と、ベンチに誘いました。カッパを着て濡れないようにして、二人で座っていました。風は木々を揺らし、音を出しますから、怖いと大半の子が感じるようです。風に自分を持って行かれそうな気もするのでしょう。
 ずいぶん昔、風の強い日に3歳の子を公園に連れて行ったとき、ようちゃんが木々に向かって言いました。「どうして おこっているの?」って。

 この言葉は未だに忘れられません。ようちゃんはすでに社会人で結婚しています。子どもの感じ方に魅せられた光景のひとつでした。
 さて、二人で座っていましたが、私が立ち上がって歩き始めると、ゆいちゃんがついてきます。いつもは見なれない私でも、頼りにしてくれたようです。ふと、見ると風の中、しっかり座り込んで鍋の中で手を動かしているよっちゃんがいました。さっき、近くでとってきたオシロイバナを手でもんで、色を出しているのです。
 私の感覚がかつての時代に戻っていきます。アサガオやオシロイバナなど自然物をとってきて色遊びしたのはいつ? つい25年前までは保育に活きていたあそびです。いつのまにかポスターカラーやインク、チョークなどが日常保育に使われるようになっていることに気づかされます。自然物が貧しい環境で保育をしているからでしょうか? それを見ながらゆいちゃんに表情が出てきました。
 
 雨が小やみになったところで、近くの神社に、雨が止むようにお願いに行くことになりました。徒歩7、8分という所でしょうか。その辺は古い町ですから、車社会以前の農道のままで、くねくねしています。草が生い茂った境内に入っていきます。
 二人足が止まってしまった子がいます。
「こういうところ、わたしはにがてなの、ちくちくするから」
 私は長靴でしたから、
「じゃあ、私の踏んだ跡をついてくればいいよ」
 これは大正解。帰りはへいっちゃらになっていましたけどね。
 社の鈴を鳴らします。パチパチと手を叩き「どうか、あめがやみますように」と頭を下げます。
「どこに、かみさまいるの?」
「なかに、いるんじゃない?」
「いま、るすなんじゃない?」
 そこで、抱き上げて格子の中をのぞかせてみました。奥には祭壇のようなものがあり、ギザギザした白い紙がついたものが両脇に立っています。
「あそこ? あれかみさま?」
「ちがうよ、あれはただのおきもの」
 こんな会話がされています。私は答えようもなく、静かに笑って聴いていました。
 神社は昔から子どもの遊び場には最適。階段、両脇に滑れそうな斜面、参道。参道の脇には畑があり、ナス、トマト、キュウリ、トウモロコシが、カボチャもありました。そして、カラス。
 誰かがおもしろいことを見つけると、時間差で次々とやっていく。すぐやってみる子、慎重でじっと見てからやる子と個人差がかなりありますから、時間差も大きくなります。でも、そこは、ほら、4、5歳児ですから様子を見ていたり、待っていたりができて、私がなんやかやいう必要はありません。
 神社からもどると、もう、お腹がぺこぺこ。
 それからは雨が降りませんでした! 風も弱くなりました。完全に信じてしまいますよね、神様。
 昔から私は「晴れおんな」と言われてきました。ほんとなんです。山に行くときも柴田といっしょだと晴れると言われて、もてたものです。けどね、天気の神さまが数多い人を天から見下ろして、雨を操作するなんてあるものですか! そう思いつつもなぜか聞いてしまう「あなた 雨女?」。
 そうそう、血液型もね。これは、確率の問題ではなく、あそびですね。あそびも文化のひとつでしょうか?
 あー、なんとも落ち着けた日でした。しかし、帰ると久しぶりに膝が痛みました。あー情けない、寄る年波!!(7月12日 記)

 

 7月23日NHKラジオ「ママ深夜便」にでます。お悩みなど募集しています。
  https://www.nhk.or.jp/shinyabin/mama.html  

                                   

 

●今年度のバックナンバーはここをクリックしてください。