ぬぬ

 12日に和歌山県の橋本に伺いました。昨年も伺ったのですが、今回はコロナの心配もあり、羽田から飛行機で関西国際空港に行き、車で迎えに来ていただき、一時間ぐらいです。皆さんご存じの高野山に近いところで、和歌山と大阪と奈良のさかい辺です。主催は「紀の国森社中」という子どものことの様々な活動をしている社団法人です。
 会場でもあり宿泊場所でもあった宿は、木々の茂る森の中、そして温泉!
 なんて久しぶりでしょう。ベッドに横になると外の山の緑が目に入ります。やっぱり自然の中にいるって、こんなにほっとできることなんだと思いました。

 温泉も最高! 私の好きなやや熱つめです。残念ながら東京に住んでいるのでGo Toキャンペーンの割引にはなりませんでしたけど、30%もなんですね。びっくりです。
 さて翌朝、朝風呂の行ったときのことです。風呂場には若い女性がいました。「おはようございます!」と声をかけましたが反応なし。私より年配の杖を持った方がもうひとり。「おはようございます」と言うと「おはようございます」と返ってきました。やっぱりおばさん以上が人なつっこい? 今の若いもんは・・です。

 私が脱ぎ終わると、年配の方もスッポンポンに。ところが「タオルはどこですか?」と言うじゃないですか!「あー、お部屋から持ってくるんですよ」がっかりした表情、そりゃあそうです。すべて脱いでしまったんですから。脱いだものを再び着ようとロッカーを開けようとしたとき、さっきの若いもんが「タオル持ってきてもらいましょうか?」と気の利いたことを言うじゃありませんか。入り口にあった電話でフロントへ。私なんて考えつかなかった。あー、若い人は返事は出来なくても、ちゃんと困ったときに瞬時に考えられるんです。お見それしました!
 杖をついて浴室に入ってきました。もう、ひやひやしながら見ていました。足にだけチャッとお湯をかけて浴槽に入ろうとするので、「ちょっと熱いので、もう少しかけてから入った方がいいですよ」と、手桶に湯を入れて膝くらいにかけてあげました。次に背中からかけたかったけれど、向き合っていたのでお腹当たりにかけたら、ギョッとして怖かった表情!「あ、ごめんなさい」余計なことをしました。その人にはその人のやり方があり、不自由ではあるけれど自分なりのつもりがあったのです。自分より弱者に対して、横暴なやり方をしてしまうお節介な私でした。瞬時に母の年老いた頃のことを思い出しました。私のよかれと思うお節介に「自分でやるから」「あいこはせっかちで」と言われていました。相手が弱いからと強引な思いやりの押し売り、ほんとに恥ずかしかったです。これって、きっと子どもに対してもやっていそうかも。その人は腰から下だけ湯に浸かっていました。折角の温泉なんだから肩まで、なんて思う必要はなく、それで十分だったのでしょう。ひとり残していくのも、ちょっと心配でいっしょに出ました。余計なことをしたことを再度お詫びして風呂場を後にしました。
 さて、朝ご飯に行かなくちゃ!

 会場に行ったら、なんと先ほどの方が、すでにテーブルに着いていました。ハヤッ! お一人のようです。
 離れたテーブルに案内されて座りましたら「ひとりじゃつまんないから」と、横のテーブルに食事を運びはじめました。杖着いていません! 
 ひとり暮らしのようです。でも、こうやってどこへでも行きたくなっちゃうの。お金と相談しながらね。10万円もらったでしょう? お友だちはあれを貯金するって言うのよ、歳とって貯金したってしょうがないでしょう? だから、私は使うの。家にはテレビも新聞もないの、だって、コロナコロナばっかりでしょう? 編み物が好きだから、ずっと編んでいるの。編み物が身体に合っているらしくて、肩なんて凝らないの。杖をついているけど、股関節が悪いの、だけど切ったりなんだりしたくないの。乳がんもあるんだけど、死んだら治るのよ。

「いったい、おいくつですか?」と聞くと、どっかに書いてあるけど、確か昭和12年。え! じゃあ、83歳ですよと私が教えてあげました。すごい人でしょう? なんかいいですよね〜
 残念ながらこの後私は講演が控えていたために、これ以上話す時間がありませんでした。もっともっと話していたら生き方を教えてもらえたような気がします。「いい生き方をなさっていますね」と言ってお先に席を立ちました。その人は味噌汁もご飯もおかわりしていました。
 こんなふうに普通の人がみんな、歳をとりながら自分の暮らし方、生き方をつくっているんですよね。歳が近いこともあったのでしょう、ちょっと感動でした。
 そのあと、午前午後二時間ずつという、あきれるほどの長い話をして帰りました。自分が移動するって、こんな思いがけない出来事があるってこと、主催者の方々とのおしゃべりも楽しかったです。ちょっと気持ちに隙間ができたような気がします。

 ほんとは子どもの話を書くつもりだったのですが、この年配の方のことをどうしても書きたくなっちゃったので、またね。( 9月14日 記)

 

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