ぬぬ

 いつのまにやら7月に入ってしまいました。雨が降れば、土砂降り。あちらこちらで被害が出るほどの降りようで、天気もコロナもと、心配の多いことです。
 りんごの木の子どもたちも、雨の中、公園に出かけます。畑でも過ごしています。家をもう一軒借りる余裕もなく、子どもと保育者にすごいなぁ、ありがたいなぁと感謝しています。

 そんな日、駅の構内にあるお店で人に会う約束があり、長靴を履いて行きました。市営地下鉄の駅はビルのようになっていて、お店も入っていますし、空間が広いです。そこを、保育園の子どもの手を引いて散歩する姿がありました。保育園は庭がなくても、近くに公園があれば、設置が許可されます。でも、公園は雨となると、やっぱり思いつくのは同じこと。狭い家の中で子ども密度多く過ごすわけにもいかず、子どもの心身も開放を望んでいるので苦肉の策です。けれど、ありがたいことに、子どもはどこでも、人目など気にせずに楽しそうに歩いています。
 2日の金曜日、りんごの木の5歳児は、土砂降りの中を大きな公園に出かけました。雨をしのげる所は使われていない公園の地下駐車場。いま流行っているザリガニ釣りも気になる。そこで、池か駐車場か、子どもが自分の意志で選択したようです。
 子どもに選択させずにおとなが引っ張っていくと、子どもはついてきます。いいも悪いも、行きたいも行きたくないも考えることはなく、引っ張られていきます。ところが、「どっちにする?」と聞かれたとたん、自分の気持ちに向き合います。それぞれのいいとこ、いやなとこを思い浮かべて比較し、自分の結論を出します。この結論が意志だと思います。意志を持って行動すると、自ら楽しむ方に目が向きます。だって、少しでも楽しそうな方を選択するに決まっていますから、もっと楽しもうとするのです。

 この日、池に行った連中は雨の中餌をつけた棒を垂らし、ザリガニは吊り放題。入れ食い状態で70匹も吊ったそうです。
 地下駐車場は雨にはあたらないですみます。灯りがないから暗いのですが、だんだん目が慣れてきてドンジャンケンをしてあそんだそうです。保育者から話を聞いて、たいしたものだと感心しました。
 
 子どもに、自分で考えて結論を出し行動してほしいと、日々願って保育をしています。今、よく言われる主体的保育です。りんごはずーっと前からしてきましたけれどね。

 しかし、いちいち向き合って自分の意志で進むというのは、面倒なことでもあります。おとながサッサと決めて、引き連れて進めた方が楽に決まっています。でも、そうやっていくと、おとなの気持ち優先の保育になってしまい、完全に子どもを従えることになってしまう。子どもはどんどん感じる心が萎えて、考えられなくなっていきかねません。

 案外、決めるというのは大変なことでもあります。どっちもこっちもと迷うし、葛藤も抱えます。言い方を変えると、自分の気持ちに立ち止まらなければならないのです。

 でも、子どもは頭でこねくり回さずに感覚で判断していくようですから "聞かないで、勝手に決めていい"という子は滅多にいません。
 なんか、自分らしく生きるというのは大変なことです。私たちおとなは、何十年もそうやって自分らしさを積み重ねているんでしょうね。


 最近、私、ちょっと決断力が鈍っている気がするんです。どうしてかなぁと考えていたんですけど、ひとつには情報量が多い気がします。昔は判断するとき家族、本、知人、先生くらいからの情報でした。ところが今、パソコンを触るとものすごい量の、いろんな人のいろんな意見がどんどん目に入ってきます。いろんな意見を面白くて、読めば読むほど、私が遠のいていく感じ。私はどうしたいんだっけ? と、自分の気持ちを取り戻すのに時間がかかってしまう。
 うかうかすると、誰かがいいって言うならそれでいいか、みんながそう言うならそれでいいか、なんて思っちゃうことさえあります。特に疲れているときにはね。
 書いている途中ですが、まさに今、日曜日の8:30 Eテレの「日曜美術館」を見ていました。現代アートの三島喜美代さん88歳の方でした。自分の作品を「情報の化石」と呼び、新聞紙、漫画本などを「壊れやすい印刷物」と、焼き物で作って展示しています。直島(香川県直島町)には大きなゴミかごに空き缶などが投げ込まれている作品が映りました。それはゴミを再生して創ったそうです。興味のある方は検索して下さい。この方の素敵なひと言がありました。

「命がけであそぶ」
 たどり着いた感じです。情報は幅を広げる。けど、幅を広げすぎると自分が浅くなる。自分を深めていくときに情報は役に立つけれど、順不同になってはいけないってことでしょう。自分がぶれないように心して、情報をながめることにしましょう。
 それにしても、今の子どもや若い人たちは、情報過多の中で選択するのが上手になっていくのかしら? たぶん、最終的には感性や気もちで選ぶことになるでしょうから、心を豊にしていってほしいなと思います。

                                         (7月4日 記)

 

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